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【消えた作品】  作者: 風花
第3章【森のお猿にご注意を】
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第25話【vsキングアイアイ①】

 逃げ出したアイアイを追い、森の奥まで入り込んだ4人。アイアイは辛うじて人間が通れそうな獣道を通っているものの人間の体では非常に通りにくく、またナナの体は涼太達ほどは道に阻まれなかったものの、それでも猿より身軽に動く事は出来ない。


 突然、アイアイが道から逸れるように茂みへと姿を消した。4人も四苦八苦しながら後を追うように進むんだが、猿の姿はもうそこにはなかった。


「ちっ……面倒な」

「あいつ、あんな目にあってまだあれだけ素早く動けるのか……」


 スピカの舌打ちも、レーゲンの感心する声も、今は意味がない。どうするべきか涼太は考える。


「ナナ、匂いで追えないかな?」

「うーん……わかった!こっち!」


 ナナは地面に花を近づけ、周囲を見た後、1つの方向に向かって嬉しそうに吠え始めた。


「ありがとう!ナナ!」

「どういたしまして!」


 ナナは役に立てた事が嬉しいのか、千切れんばかりに尻尾を振っている。


「何度も何度も……すまないな、ナナ」


 そんな中、スピカが少し申し訳なさそうなのはなるべくナナを犬扱いしたくないからなのだろうか?涼太がその仕草を不思議に思う頃にはスピカの表情はいつもの凛とした表情に戻っていた。


「先へ急ぐぞ」

「うん!」


 4人はナナの案内で森を進んでいく。猿が通った道を後から通ることとなったのだが、その道は余りにも人間には厳しすぎる。時折、ナナが周囲の匂いを確かめては道を選び確実に猿の元へたどり着けるように移動する。


 勿論、この猿が必ず群れに戻る保証は全く無い。スピカ曰く、アイアイは群れを作る生き物らしいがそのアイアイも環境によって習性を変化させているらしい。ただ、今の涼太には仲間を疑う事など考えられなかった。





 緊張に押さえつけられるような気分を味わいながらも、涼太は仲間と共に進んでいく。そんな中、ふとナナが立ち止まり、辺りを警戒するように匂いを嗅ぎ、キョロキョロし始めた。


「ナナ、どうしたの?」

「強い匂いがする……お猿の匂い!」


 背中の毛を逆立て、まるで犬のような低い声でナナが唸り始めた。こんな声も出るのかと思わず感心してしまう。


「強い匂いか……恐らく、近くに群れがあるのだろう。……なる程、アイアイはこの環境でも群れを作るのだな」

「ならそこに鞄もあるんだな!」


 その言葉にスピカは即座に突っ込みを入れる。


「そうでもない、貴様はそもそもアイアイの群れがこの森にいくつ有ると思っているんだ」

「……そんなに沢山有るものなのか? いやほら、猿ってチュラに居なかったしさ」


 はぁ、とスピカはため息をついた後レーゲンに対し、しっしと手で払うジェスチャーを行った。まるで話にならないと言わんばかりだ。


「警戒していくぞ」


 スピカの言葉に3人は頷き、再びナナを先頭に歩き出す。気がつくと辺りはしんと静まり返り、森の音は聞こえなくなっていた。先程とは違う妙な緊張感が辺りを包み込んでいく。


 ふと、ナナが再び立ち止まった。いや、ナナだけではたい。スピカも、そして涼太自身も威圧的な気配を感じ取り、足が止まっていた。


「……え、何?どうしちゃった訳?」


 ただひとり、レーゲンだけは威圧を受けずにけろっとしている。これは生身か、そうでないかの違いなのだろうか。


「居るな、向こうに」

「うん、匂いも強いしいると思う」


 ここまでくると、獣のような強い匂いが涼太達にもわかるほどだ。


「ボスのキングアイアイは私の魔法で仕留める。2人は援護を頼む」

「はーい!」


 ふと、嫌な予感がした。それが何を意味しているのかは全くわからなかったが胸騒ぎがする。


「……わかった、スピカさん気をつけて」


 きっと気のせいだろう。涼太はそう思い、スピカの後について先へと進んだ。






 茂みを抜ければ、森の開けた場所へ出た。

辺りは木がなぎ倒され、どこから持ち込んだのか大きな岩が転がっている。


 そして、その一番奥に、普通のアイアイの5倍以上はありそうな大きなアイアイがまるで玉座にでも座るかのようにぶんぞりかえり、辺りを他のアイアイ達が守るように囲んでいた。


「なるほど、キングアイアイも、こちらを迎える準備は整えていたということか」

「あ、俺の鞄!」


 レーゲンが指差した場所には、どこからか集めてきたらしき人間の道具が山積みとなっており、その場所にもアイアイがまるで宝を守るように配置されていた。


「一瞬で片をつける!エルナト!」


 スピカは辺りの様子を確認する間もなく、キングアイアイに狙いを定め魔法を放った。


 その魔法の気配にアイアイ達は(キングアイアイ)の身を案じ騒ぎ始めたが王は動じる事無く、じっとエルナトを見つめ……突然、動いた。





 しかし、それは魔法を避けたのではない。





「な……」

「ゲゲッ」


 キングアイアイは、傷一つ負う事無く、侵入者達に王の風格を見せつけるように笑う。その尾には美しく輝く大きな水晶が握られていた。


「キィー!キィキィ!」


 辺りのアイアイ達も(キングアイアイ)の行動に大いに湧いた。


「……私が……私が仕留める……」

「……スピカさん?」


 上手く聞き取れなかったが様子がおかしい。何かの強迫観念にかられるようにスピカは呟くと、再び魔法を放とうとする。


「あー!待てって!」


 その姿を見ていられなかったのか、レーゲンがスピカの前に飛び出した。流石のスピカでもそのまま魔法を打つことはできない。


「邪魔をするな」

「お前に何があって、何に対して焦ってるのかは知らねーけど……正直、お前とボス猿じゃあ相性が悪すぎる」

「……」


 脅すような恐ろしく低い声にも、レーゲンには通じず、むしろ正論をぶつけられ、スピカは押し黙ることしか出来ない。そのままレーゲンは話を続けた。


「それよりもさ、さっきのボス猿を見てて、俺良い作戦思い付いちゃったんだよなー。……なぁ、涼太借りて良いか?」

「……何をする気だ?」


 スピカはレーゲンを強く睨み付ける。


「ま、悪いようにはしねーよ。スピカはナナと一緒に周りの猿を頼むわ」

「おい、待て!」


 レーゲンはそう言うとスピカからの反論も無視してその場を離れ、涼太の方へと歩み寄ってくる。一体何をしようというのか、涼太には全く検討がつかない。


「涼太、超能力でボス猿の気を引いてくれ」

「え、わかった……けど……どうするの?」


 涼太の問いにレーゲンは答えず、そのままナナの方を見る。


「ナナ、スピカと一緒に周りの猿を頼むわ」

「はーい!頑張ろうね、スピカちゃん!」


 これで演者(キャスト)は揃った。レーゲンはニヤリと笑う。


「さ、演劇(ショー)の始まりだ」

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