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【消えた作品】  作者: 風花
第3章【森のお猿にご注意を】
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第24話【猿との遭遇】

「スピカさん……レーゲン……何処に居るんだろう……」

「スピカちゃん、どこかな?」


 慌てて村へ戻った5人、ハーピー達は村へついた途端何処かへと行ってしまった為、涼太達はスピカとレーゲンを探すことにした。


 既に、子ども達によって騒ぎを聞き付けたハーピー達がざわつき始めている。


「お、涼太!ナナ!ハーピーが騒いでるけど何かあったのか?」


 ハーピー達の騒ぎを聞き付けたのかレーゲンがこちらへと走ってくると、息一つ入れずに質問を飛ばしてきた

「それが……僕達もよくわからなくて。皆が慌てて逃げたから僕達もここに戻ってきたんだ。」

「急にぐらぐらって揺れたんだよ」

「揺れたって……何だそれ」


 不思議そうな表情のレーゲンを余所に、ふと遠くを見れば心配した表情のスピカがこちらへと走ってくる姿が見えた。


「2人共、無事か!」

「スピカちゃん!」

「スピカさん」


 二人の姿を見て、無事を確認したスピカの表情はふわりと柔らかくなる。


「……無事そうならいい。これからは勝手に何処にでも行くな」

「はーい」


 スピカは自分とナナに対して過保護だと涼太は感じていた。自分が強くなれば認められるのだろうか、そんなことをふと思ってしまう。勿論、スピカより強くなれるとは思えないが。






「旅人達、そこにいたのか」


 4人が揃った所へ若長が空から降りてきた。緊張した表情をしており、その右足には大きな槍が握られている。槍を握ったまま器用に着陸した。


「子ども達の話だと、猿が出た。花畑は、猿の縄張りに近い」

「猿……ってまさか鞄を盗んだあいつか!?」


 レーゲンの表情は驚いたような表情に変わる。思いがけない形でアイアイの手掛かりを再び手に入れたからだろうか。


「私達は、猿を狩る準備をする。族長が話をしているが、恐らく私達は、村から離れることは出来ない」

「つまり、防衛のために村に残るから、私達で何とかしろと言いたいのか。ふん、元々そのつもりだ」


 ここまで話を聞いた涼太はふと、花畑とは先ほどの場所なのではと思った。道は覚えている、もしそうなら皆を安全に案内できる筈だ。


「花畑の方に、アイアイの群れがあるんだよね? だったら僕が案内するよ。さっき皆に教えてもらったんだ」

「私もわかるよ!」


 涼太の言葉に、ナナも得意気に同調する。


「見ない間、村を離れていたのか……まぁいい。案内を頼む」


 スピカは少し飽きれ気味だったがそれ以上は何も言及しようとしなかった。

 涼太とナナはこくんと頷くと「こっちだよ」と2人を導くように前を歩き出そうとする中、若長がふと話しかけてきた。


「猿は、賢い。道具を使う。どうか、気をつけて」


 若長はこちらの答えを聞かずに、混乱するハーピーを静めるためにハーピーの会話の輪へと入ってしまった。


「……ありがとう」


 届くかはわからなかったが、涼太はそう呟いた。






 1度通っただけの道であったが、ほんの少し前に通った道なので迷うことなく花畑を目指すことが出来る。最後の藪を抜ければ簡単に先ほどの花畑へたどり着いた。

 いつ見ても綺麗な花畑だが、先程とは何かが決定的に違う気がした。


「すっげー場所……」

「……熱帯の花だな。なるほど」


 レーゲンがその光景に見とれている間に、スピカは花畑へと入りさっと周囲の警戒を行う。涼太もその間に先ほどとの違いを探したが見つけられ無い。


 何か、決定的に違うのだと何となくわかるのに言葉が出てこない。迷い、悩み、そして……



「ギャァァァァ!」




 それは一切気配を漂わせる事無く草むらから突然現れ、雄叫びを上げると一番鈍そうな涼太へと飛びかかってきた。


 一人少し離れていたのかスピカの反応も、近くにいたナナとレーゲンの反応も間に合わないほど素早い。それの小さくも鋭い爪は今すぐにも涼太を切り裂こうとして……




 だが、その爪が涼太に届くことは無かった。間一髪、涼太の超能力、テレキネシスが発動したのだ。


「ギィィィィ!」

「な……何?」


 涼太が超能力で捕らえたもの……それはアイアイだった。アイアイは体の自由が利かず、悪魔のような恐ろしい声をあげた。


「涼太君!大丈夫?」

「おい、大丈夫か!?」

「涼太!」


 3人が心配したように寄ってきたので、涼太は超能力で捕らえたアイアイを指差した。余りにも驚いたので声を出そうにもなかなか出ない。


「ギャァァァ!」

「アイアイ……やはり近くに群れがあるのか」

「……ど、どうしよう」


 ようやく出た声は震えていた。そんな自分を情けなく感じつつも、この生き物に命を狙われていたのだと思うと体の震えが止まらない。


「つーかさ、こんなに近くだったのに音一つ立たなかったな……こえー……」

「匂いも、花の匂いが強くて全くわからなかったよ」

「アイアイには本来、このような能力は無い。花畑に紛れる習性も、気配を消す能力も、ハーピー族という捕食者がいるこの環境で得た能力と言うことか。恐ろしい生き物だな」

「まじかよ……」


 スピカはそう言うと涼太の超能力で捕らえられている猿を強く睨み付けた。猿はスピカの睨みにも一切怯まず、牙を見せつけている。


「さて……こいつをどうするか。素直に逃げてくれればこちらとしては後を追うだけでいいのだが……」

「ギャァァァ!」

「この様子では無理だろうな」


 そこまで言いかけて、ふとスピカの表情が変わった。その表情は何かを思い付いたと言わんばかりで……ニヤリと笑うスピカはどうにも不気味だ。


「……アイアイをテレキネシスで振り回せば殺さずにアイアイに恐怖を与えることが出来るな」

「テレキネシス……って超能力の事か?」

「出来るな、涼太」


 有無を言わさないスピカの気配に、涼太はこくんと頷くとアイアイを振り回すように頭の中でイメージした。


 アイアイの体は宙にふわりと浮き上がるとそのまま宙で激しく振り回されるように自由自在に動かされた。アイアイの恐怖と混乱の叫び声が聞こえてくる。先程までこちらの命を狙っていた相手だが、ここまでくると可哀想に思えてきた。


「な、なぁ……流石にもう辞めようぜ?」


 振り回してたったの数秒後だったが、レーゲンの引いたような声が聞こえてきたので涼太はアイアイを解放した。激しく動かされた為かアイアイは混乱したように頭を振っている。


「さて、どうなる?」

「……キッ……ギャア!ギャア!」


 しばらくして、ようやく正気に戻ったアイアイは慌てて茂みを掻き分けるとそのまま逃げ出した。


「上手く行ったな、追うぞ」

「おー!」


 スピカとナナはノリノリでアイアイを追いかけたが、涼太とレーゲンの心の中には、アイアイの叫び声がしっかりと刻まれた。


(超能力って、本当に恐ろしい力なんだな……)


 涼太は、己の超能力の恐ろしさを改めて実感したのであった。

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