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【消えた作品】  作者: 風花
第3章【森のお猿にご注意を】
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第18話【水晶の王】

「……ここで行き止まりか」


 地底湖から先へと進んだ涼太達、最初こそ先程の地震の影響を受けずに進めたのだが、道の途中はやはり落石によって固く封じられていた。


「さっきの揺れのせいだよなぁ……これ。なぁ、涼太さっきの変な魔法でこれ退かせないか?」

「変な魔法って超能力の事? やってみるよ」


 涼太はそう言うと力を少し込め、岩を退かすようにイメージする……が、手頃な岩を少し動かしたところでカラカラと今にも崩れそうな音がする。

 涼太はふと、動かしている岩の下に小さな足跡が隠れていた事に気がついた。アイアイはこの道を間違いなく通ったのだと涼太は確信し、岩をどかそうと力を込める。


「まて、涼太」


 その様子を見ていたスピカは慌てて涼太を制止した。


「へ?」


 涼太が超能力を弱めれば岩は重さを取り戻し、元の位置へ。崩れそうな音はもう止まっていた。


「この岩は絶妙に積み上がって壁を形成している。岩を下手に取れば私達の方へ岩がなだれ込んで来るだろう」

「でも、アイアイはこの道を通ってるのに……どうしたら……」


 アイアイは確実にこの道を通っている。レーゲンの鞄を取り戻すためにも避けることは出来ないはずだ。


「鞄を取り戻したいけどよ……一本道がここで行き止まりとか、どーするんだよ……」


 鞄を取り返すことが絶望的だという事に気がついたレーゲンの声も沈んでいる。このままでは可哀想だ。


(どうにか出来ないかな)


 涼太は必死に考えを巡らせる、涼太に出来ることと言えば超能力を使うことだが、この狭い洞窟の中で下手に振動を与えれば自分達が埋まってしまうとスピカが言っていた。

現に先程の地震で危うく埋まるところだったのだ。


(何も思い付かない……)


 どうしていいのかわからず、何度考えても行き詰まってしまう。その時だった



 まるで頭のなかに直接響くように



『ひとのこ、こちらへ』



 変な声が、聞こえた。


「へ?」


 涼太は間抜けな声を出すと周囲を見渡したが周囲にいるのはスピカとナナ、そして先程から何やら呟きながら岩の壁を蹴っているレーゲンだけだ。


「涼太君、どうしたの?」


 暇そうにしていたナナが涼太の異変に気がつき、驚いたようにじっと涼太を見つめる。


「ねぇナナ、今変な声が聞こえたよね?」

「何も聞こえたなかったよ?」


 ナナは不思議そうにそう答えた。


「……え?」


 今度は涼太が驚く番だった。もし、本当にナナが何も聞いていないのならあの謎の声は仲間の中で一番耳がいいはずのナナにすら聞こえず、涼太だけに聞こえたという事になる。


「本当? ナナ」

「うん」


 ナナが嘘をつくような子では無いことを涼太は理解していた。


「そっか」


 ならば気のせいだろうと、自分は疲れているのだろうと涼太は思い、声について考えないようにしたその時だった。



『ふたごすいしょうのかべを、そのちからでこわすのだ、ひとのこよ』



 再び、声が聞こえた。


(また、聞こえたけど……双子水晶の壁?)


 涼太は声に従うように周囲を見渡す。落石の壁、仲間達の姿、煌びやかな水晶達……ここにはない、涼太は元来た道を引き返していく。


 少し歩き、全く同じ形、大きさの赤い水晶が2つ並ぶ壁を見つけた。落石の壁からはそんなに遠くない場所だ。


「ここを壊すの?」


 涼太は謎の声に問いかけたが、声は答えない。半信半疑になりながらも涼太は壁を対象にして力を込めると、壁を砕くようにイメージした。


 壁はその見た目とは裏腹にあっという間に音を立てて崩れ去る。

壁の向こうには、道があった。


「涼太!無事か!?」


 慌てたようなスピカの声が聞こえる、壁を破壊した音で事態に気がついたらしい。

 3人はすぐに新たな道の前へと駆けつけた。


「新しい道か!?でかしたぞ涼太!」


 先程までの暗いレーゲンはどこへやら、鞄を取り返すチャンスに再び巡り会えたと言わんばかりに嬉しそうにしている。


「……気がつかなかったな。風の音音一つしなかった」


 スピカは何か考えるように砕けた壁を見つめる。


「まぁまぁ、先に進もうぜ」


 レーゲンはそう言うと先へと進もうとする。その後に涼太とナナも続き……スピカは最後の方になってついてきた。



「しかし……他にも埋まってた道があったんだな。まぁあれだけ揺れたらそうなるよな」


 レーゲンがそう言う一方、スピカの表情は固い、何かを考えているような、警戒しているような……そんな表情だ。


「どうしたの? スピカさん」

「涼太……奇妙だとは思わないか?」

「へ、何が?」

「これを見ろ」


 スピカが取り出したのは赤い水晶の破片だった。間違いない、涼太が先程破壊した双子水晶の破片だ。


「私達が最初にあの壁の前を通った時、この炎を宿した水晶などあの場所に存在しなかった。……何か知らないか?」


 謎の声の話をナナにするのは気が引けたが、スピカさんならもしかしたら信じてくれるかもしれない。涼太は胃を決して、謎の声の事を話すことにした。


「スピカさん、実は」


 スピカは、最初は不思議そうな顔をしていたが最後まで話を聞き、確信したように頷いた。


「なるほど……私達は何者かに招かれているようだな。それが何者なのかはわからないがこんな事をしている以上、そこらの存在ではなさそうだ」

「……敵じゃないと、思う」


 涼太はぼそりとそう呟く。何となくだが、涼太はあの声に優しさを感じていた。


「……そうか」


 スピカはそう言うと、それ以上はなにも言わなかった。


 4人で道を進んでいく。やがて道は最初と比べて岩より水晶の量が多くなり……やがて水晶でコーティングされたようなほぼ完全な水晶の道となっていった。


「こりゃ……随分と綺麗だな」

「うん!きれー!」


 レーゲンとナナは呑気そうだが、涼太とスピカは並々ならぬ状態に警戒を強めていく。


 やがて4人がたどり着いたのは、今まで訪れた中で一番大きな空間だった。先程の道同様、壁が水晶でコーティングされており、中央には巨大な水晶の山がそびえ立っている。


「あれは水晶柱か?あんな大きなもの、初めて見たな」


スピカは水晶の山……水晶柱を見て驚いたように呟く。


「あんなものがあるんだ。きっと何か外に出れる手がかりがあると思うぜ」


 レーゲンの言葉に、何か無いかと4人がより内部へと侵入すると突然、部屋の中央にあった水晶山が動き、何かの形へと変わっていった。




 4人はそこで絶句することとなる。




 水晶の山だと思っていたものの正体は




 体上半分が顔の部分も含め幾つも連なる半透明な水晶で覆われながらも、下半分はエメラルドのような光輝く体をもつ巨大な蛇状の生き物だった。



「な……!?」

「こいつが……」

「僕たちを呼んだのは……君?」


2人が絶句し、涼太が疑問をもつ中


「すごーい!綺麗な蛇だー!」


 ナナだけが、その姿を見てはしゃいでいた。

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