第17話【地中の異変】
「しかし、さっきのは驚いたよな」
レーゲンが突然話を振ってきた。
「何がだ?」
「何がって、魔女の魔法すら無効にする水晶だよ。チュラには水晶って無かったし、噂程度にしか聞いてなかったんだけどよ。魔法に対しての効果は本当に抜群なんだな」
レーゲンは何かを思い付いたと言わんばかりに面白そうにしている。そんなレーゲンに対しスピカはむっとした。
「勘違いするな。水晶は容量以上の魔法を吸収すると壊れる。私が本気を出せば純粋な結晶でも破壊可能だ」
「それ本当か? 強がってたり……」
「ここで消されたいらしいな」
レーゲンが言い終わる前に、スピカが割り込んできた。その手には杖が力強く握られている
「じょ、冗談だっての!」
スピカから確かな殺意を感じ取ったレーゲンはスピカから慌てて距離をとった。それを見たスピカは杖を下ろした。
「そうか、私のも冗談だ」
そう言うスピカの目は、決して笑ってなど居ない
「いやいや、あれは絶対本気だろ……」
レーゲンはスピカに聞こえないようにそう呟いた。
(喉が渇いた……)
そんな光景を見ながら休憩していた涼太はふと、地底湖の水を見てそう思い、湖を覗きんだ。青白い光に包まれた地底湖の色は先程の道と比べてとても冷たい気がする。
「涼太、その水は飲まない方がいい」
涼太が湖の水を手ですくい、飲もうとするとスピカに制止された。
「へ、どうして?」
「毒が無いことを保証できないからだ。何でも知らないものは口にしない方が身のためだぞ」
「毒が?」
涼太は湖の水を覗き込む。とても綺麗な色をしていて、とても毒が混ざっているようには見えない。
「とてもそんな風には見えないけど……」
こんなに綺麗なのに飲めないなんて残念だ、そう思い水を覗き込むのを辞めた。
「……なぁ、何か音しねぇか?」
ふと、レーゲンが天井を見て呟いた。
「音?」
涼太も神経を尖らせてみると、確かに何か低い音のようなものが……いや、違う。地響きだ。この空間が地響きによって微かに揺らされている。
「何だ?」
スピカも気がついたらしく、ナナを守るように立っている。一方のナナは先程まで疲れて寝ていたのだが揺れによって今は起きていた。
やがて地響きは大きくなっていき、ボロボロと地底湖がある場所の壁が崩れていく。
「おいおい、また地震かよ!つーかここ崩れるんじゃね!?」
「ちっ……逃げるぞ!」
騒がしいレーゲンとは違い、あくまでも冷静にスピカはそう言うとナナを小脇に抱えた。「スピカちゃん?」と寝ぼけたようなナナの声が聞こえる。
「逃げるって何処に……」
レーゲンが言い終わる前にズシン、と何かが崩れる音が聞こえ……元来た道が大きな岩に閉ざされてしまった。
「!どうしよう……」
涼太もまさかの展開に唖然とした。恐怖のあまり体が動かない。
「……こうなったら先の道へ……っ」
移動しようにも既に揺れが酷く、今は立っているのがやっとだ。
ふと、涼太が上を見ると大きな岩が崩れて迫ってきていた。揺れと地響きが酷く、気がつくのに遅れてしまった。
「皆、上!」
涼太の言葉によって全員が上から迫る危機に気がついたらしい。スピカはとっさにナナを抱えている腕とは逆の腕で杖を構えた。
「ショット!」
スピカの魔法により落石が砕かれるも、落石は次から次へと落ちてくる。スピカの魔法だけじゃ間に合わないのは誰が見ても明らかだ。
「……よし」
涼太はそう呟くと岩を受け止め、弾くようイメージをして……岩を超能力で地底湖の方へと吹き飛ばした。
「ふっ、使いこなせるようになってきたな」
スピカは涼太を見てニヤリと笑った。そんな表情とは裏腹に余裕が無いのかナナを下ろし杖は両手で握られていた。
「……うん、行ける」
スピカの期待に応えたい、そう思ったら不思議と少しだけ超能力の冴えがよくなった気がする。
涼太は超能力で岩を次々と突き飛ばし、スピカも魔法を岩に撃ち込んで、破壊していく。魔法の玉と落石と超能力の応酬が続き……やがて揺れは収まり、それと同時に落石も収まった。
辺りは悲惨な事になっていた。あんなに綺麗だった地底湖は落石で荒れ果て、水晶も殆どが砕け散りその輝きを失っている。地震という、自然の力を涼太達は目の当たりにすることとなった。
「大丈夫か?ナナ」
攻防が終わると、スピカは自分よりナナの方が心配らしく跪いてナナと目線を会わせながら優しく聞いた。
「うん、大丈夫……スピカちゃんと涼太君の方こそ、大丈夫?」
「僕達は大丈夫だよ」
ナナを心配させたくない、涼太の思いはただそれだけだった。
「皆無事みたいだな。……ここはまた崩れる可能性が高い、先へ進むぞ」
「うん」
「はーい!」
スピカの言葉に、涼太とナナも続き、地底湖のエリアを後にした。
そんな中
「仲間になったばかりの俺の心配は無し、か……」
レーゲンはそう言うと、トボトボと3人の後をついていく。彼の残念そうな呟きは誰にも聞こえなかった。
きらきらとかがやくせかいに、すいしょうのおうさまがいます。
おうさまはとてもからだがおおきくて、うごくとみんなにめいわくをかけてしまいます。
だから、おうさまはいつもねてばかりいました。
でも、おうさまはいへんにきがつきます。へんなにおいがするのです。
「そとからきたひとのこ、われのもとへ」
すいしょうのおうさまはそういうとからだをかがやかせました




