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【消えた作品】  作者: 風花
第2章【目覚めし能力】
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第11話【vs妖魔】

「ショット!」


 スピカの杖の先から放たれた素早く飛ぶ光の玉は襲いかかってくるカラスを1羽、1羽と確実に落としていく。


「がおー!」


ナナの鋭い爪が、牙が、カラスを次々と引き裂く。ナナの真っ白の体毛に覆われた体はカラスの血液で所々染まっていった。


 このままでは全滅してしまうと思ったのか、一部のカラス達は標的を一番弱そうな涼太に絞り、涼太の方へと降下していく。


(来た……大丈夫、大丈夫。)


 涼太は心を落ち着け、カラス達の動きをとらえるように見つめ……そして。


 心の中で、カラス達の動きを絡めとるその姿をイメージした。


次の瞬間、 涼太を狙っていたカラス達はその体を宙に拘束された。


「……で、出来た……本当に、出来た!」


 本当に超能力が使えた。その時の気分の高揚はこれからも忘れることが出来ないだろう。気分もそのままにすぐさま次をイメージする。


(次は……叩きつける!)


 拘束されていたカラス達は悲鳴を上げる間も無く、一斉に地面に叩きつけられる。地面に叩きつけられた衝撃でカラス達の体は潰れ、紫の血液が飛び散った。


「へ……紫!?」


 カラスは鳥なのだから赤い血液が普通のはずだ。目の前で絶命したカラスから漏れ出す紫の血液を涼太は呆然と見つめる。


「涼太君!危ない!」


 ガキン、と固い音とナナの声が聞こえる、涼太が意識をカラスから周囲の方へと向けると自分に向かって細身の剣を振り下ろそうとする妖魔の姿と、その剣を爪で必死に押さえるナナの姿があった。


「ちっ」


 弾かれた妖魔は舌打ちをするとそのまま素早く後ろへ飛び、ナナから距離を取った。


「ナナ、ありがとう」

「安心して!涼太君は私が守るよ!」

「2人共、無事か!?」


 カラスをある程度倒したスピカが2人の元に駆けつける。妖魔はその光景を見て目に見てわかるほど苛ついている。


「おい、さっきの魔法もどきは何だ」

「答えるわけ無いだろ」


 涼太の言葉に、妖魔の感情は逆撫でされた。そうだ、こいつらを弄んで惨殺してやろうか、と。妖魔の余裕があった筈の心は獲物をなぶり殺す獣の心へと変わっていく。


「もういい!」


 主である妖魔の声に合わせ、まだ息の有ったカラスが声を上げながら一斉に飛び立つ。カラス達の声はこれから主によって直々に裁かれる涼太達を嘲笑うかのようだ。


 カラスが居なくなった後、妖魔は細身の剣を素早く構えるとそのまま涼太へと向かう、涼太はあまりにもとっさの出来事に判断が遅れてしまった。


「貰った!」

「わあぁぁぁ!」


 涼太は間抜けな声を出しつつも妖魔が振るった剣筋を何とか避ける。


「ショット!」

「遅い!」


 その隙をついてスピカが妖魔に魔法を打つも妖魔は先程の戦いで魔法の軌道を既に見切っていたのか、すぐに回避してしまった。しかし、スピカにとっては魔法の命中の有無より涼太の方が心配だった、スピカはすぐに涼太の方を見た。


「涼太!無事か!?」

「何とか……あいつ、早い……」


 涼太は妖魔を見る、あれだけ何度も素早く動いた妖魔は一切息切れしていなかった。


「あれが妖魔だ。魔法寄り剣術寄りでまた異なるが、妖魔は素早く飛び回りながら戦うのを得意としている」

「そんな……どうしたら……」


 人間である涼太や魔女であるスピカの足では追い付くことが出来ない。どうしたものかと考えていると、ナナが声をかけてきた。


「……私なら追い付ける」

「ナナ、本当?」


 ナナは必死に考えているようだ、妖魔の方はこちらに策など有りはしないと言わんばかりにニヤニヤと笑っていた。


「うん、大丈夫!」

「ナナは早さは申し分ないが……妖魔も同じぐらいの早さで動ける、攻撃を防ぐので精一杯かも知れんな。」


 スピカが静かな声で話しかけてくる。ナナの声は自信に溢れていたが、ナナの事を詳しく知るスピカがそう言うのならナナでは力不足なのかもしれない。


(僕とスピカさんじゃ早さが足りない。ナナは素早いけど一人で戦うのは無理……)


 その時、ふとパズルのピースが組合わさるように涼太の考えが一つに纏まった。単純で拙い作戦だとわかってはいるがこれしか思い付かない。




「……ナナの素早さで隙を作らせて、僕の超能力で動きを止めて、スピカさんの魔法で攻撃したら……行けないかな?」




 涼太は妖魔に気がつかれぬよう、圧し殺した声で呟く。勿論、この作戦が危険な賭けなのは涼太が一番わかっていた。全員のタイミングが絶妙に噛み合わなければ崩壊してしまう。


「それは私も考えたが……お前、超能力を適切なタイミングで使えるのか?」


 それは涼太が一番気にしていたことだった。自分の超能力が使えるようになったのはつい最近、もしも発動できなければナナの命が危ないのだ。


「私は涼太君を信じるよ」

「ナナ?」

「だから、涼太君も自分を信じて」


 ナナの自信と決意に満ちた瞳を見て、涼太は自分は何を悩んでいたのだろうと思った。どのみちやらなければいけないのだ、涼太も覚悟を決めた。


「……わかった。スピカさん、魔法をおねがい」

「……。」


 スピカは言葉を返さなかったがその目は任せろ、と言っている様に見える。スピカが狙われないように少し離れた草むらに隠れた時、作戦が始まった。



「やっと終わったか。劣等種」


 妖魔は飽きてきていたのか、先程まで戦ってくれていたカラスの死体を細身の剣で何度も突き刺していた。その刀身はカラスの血で紫に染まっている。


「れっとーしゅじゃないよ! ナナだよ!」


 ナナは妖魔から目立つように一歩前へと進んだ。そのまま一気に駆け出していく。


「1人……ふん、血迷ったか」


 妖魔もナナ目掛けて駆け出す。妖魔は一瞬でナナの元へたどり着くと剣を振った。その素早い斬撃に合わせナナも爪を振るう、しかしその爪は妖魔を切り裂くものではなく妖魔の斬撃を払うものだ。


「守ってばかり、か。これだから劣等種は」

「っ……!」


 妖魔はさらに斬撃の素早さをあげていく。ナナも必死に応戦した。


(まだだ……まだ……)


 涼太はナナと妖魔の動きを見つめ、能力を使うタイミングを計っていた。下手に使うとこちらの仕掛けが妖魔に見破られてしまう。


 ナナと妖魔の攻防は激しさを増していく。このままではナナは持たないだろう。


(……今しかない!)


 涼太が妖魔を絡めとる姿をイメージするも超能力 はなかなか発動しなかった。どうして、どうして……焦る気持ちだけが募っていく。


(このままじゃナナが……)


ナナを助けたい、早く、早く……


「焦るな、涼太。」

「スピカ、さん……」


 気がつくと先程まで別の場所にかくれていた筈のスピカが隣に立っていた。


「ナナは土の女神だ、土の取り柄は頑丈さにある。……ナナを信じろ。」



(ナナを……信じる)



 そうだ、ナナは出来ると自信たっぷりだったではないか。自分が仲間を信じなくてどうやって作戦を成功させるのか。涼太は不安を振り払い、意識を集中させた。


「くそっ!何をした!? 離せ!」


 今度こそ妖魔を超能力で捕らえた。妖魔の方は凄まじい剣幕で目の前のナナを見つめていた。


「スピカさん!今だ!」

「任せろ、仕留める」


 涼太はスピカの周りに力の流れのようなものを感じた。流は渦を巻き、形を作っていく。


「喰らえ!牡牛座の角(エルナト)!」


 あの時、ドレイクを貫いたものよりも大きな魔法の槍が妖魔に迫った。




「「「いっけー!」」」




3人の気合いがこもった声が重なる。

そのまま、魔法の槍は生々しい音を立てて妖魔の腹部を貫いた。

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