主人公爆誕
長い歴史の中にいつの世界にも、
どの時代をとっても誰からでも、
愛される存在というものがある。
一概には言えないが
《地位、名誉、財、美、知性》
それらひとつでも備えていれば、
最強の人生が待ち受けること間違いないだろう。
だがこの世に光と闇があるように、
天と地の対なる存在というものは
物語には必ずしもがな、
用意されているものなのであり
その例外はあまりないと言えよう。
とあるところに誰からも、
愛されない一人の姫が居た。
まるでおとぎ話に出てきそうな
お姫さまとは無縁の
孤独を好む引きこもり姫こと
主人公の彼女の名前は遊葵
見た目は悪くなく、
どちらかと言うと美人の部類に
入ると思うのだが。
どうにも根暗なのだ。
昔から病弱で
床に伏せる日々ばかりだった為か
いかんせん人嫌いで敵わない。
リアルでの交流を持とうともせず、
異世界ネットワークという
デジタルな世界へ逃げ込んでしまう始末で。
いつからか側近のメイド以外の
誰とも話をしなくなり、
両親すら関わろうとはしなかった。
そんなこんなで国民に
清く正しく美しく
綺麗に忘れ去られていた
(まるでスローガンのよう)
姫は齢16歳にして
前世でのお勤めを全うした。
美人薄命とは全く本当によくいったものである。
亡くなって一ヶ月たった今でも
姫のお葬式は国をあげて続いている。
何でも何もしてあげられなかった
国王と王妃からの
姫への最後のプレゼントらしい。
なんともいえない気持ちになった国民は、
決して楽しい人生ではなかった
姫を不憫に思い、ひたすら願った。
顔も覚えられていなかった
不幸な姫様!
綺麗なのに根暗で残念な姫様!
かわいそうに、
これだけの徳を積んだのだから
次の世でこそ彼女には幸あれと!
(積んでいないけど)
そんな人々の願いが通じたのか、
はたまた通じなかったのか。
またまた娘の墓前に向かって
夜通し泣き続ける国王と王妃を
見兼ねた神様のお導きなのか。
いきなりどこからともなく
一羽の不死鳥が墓前に降り立ったのだ。
《身体は死すとも魂までも、
この娘の息吹亡くすに惜しい
我と共に新たな道を歩いてみせよう》
羽を広げそう説く不死鳥の背には
神々しく輝く
自分達の娘の姿。
一瞬の出来事であり、
不死鳥はそれだけ述べると
すぐに羽ばたいて
どこかに飛んでいってしまった。
現実なのか夢を見ているのか、
区別がつかない国王と王妃だったが
これであの子が次の世界で
幸せにやっていけるのならと
思わずにはいられなかったのだ。
「次こそは幸せになっておくれ、遊葵」
「長生きしてね、絶対によ。」
最期に見た父と母の姿は
不死鳥に深いお辞儀と
感謝の言葉を述べた場面。
ほろりほろりと泣く姿に
感動したなー。
うんだからそこまでは
とっても明確に覚えている。
ええかなりとってもくっきりめっきり
覚えている!
「なんじゃあこりりゃああああああっ!!」
波乱の幕開けは松田優作ばりの
赤ん坊の叫びで始まり、始まり…。