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転生したら、五千歳でした。1

1.


「神様ぁ?」

「ふふんっ!そうよ、神様!偉いのよ!」


釣竿を片手に仁王立ちで咽び泣く女の子をそのまま見ているわけにもいかず、何となく彼女の雰囲気に飲まれてその肩を叩きながら感動を分かち合う事、数十分。

ようやく落ち着いた―まだ目と鼻の頭が赤い―女の子から僕は話を聞いていた。


僕――木森きもり 草樹そうき――は死んだ・・のだと思う。

原因不明の病気で六年間の入院生活の末、十六歳で命を落とした。

そうして魂となりそのまま昇天するはずだった僕は、その途中で神様を名乗る女の子に釣り上げられた・・ということらしい。


「え、でもなんで僕を?ここはどこなんですか?あ、僕は木森 草樹。享年十六歳でした。」


これまでの出来事で混乱から立ち直れない僕は目の前の神様に口から出るままに言葉をかける。自己紹介、大事。


「慌てる気持ちも分かるけど、落ち着いて。一つずつよ。」


そういうと目の前の神様は手に持った釣竿でトンっと地を軽く叩き、一拍おいて話し始めた。


「まずは自己紹介ありがとう。私はさっき言った通り神、正確には複数いる神の一柱。名前は特にないわ。

 そしてここは神に導かれた魂が一時的に滞在する、そうね停留所、といったところかしら。」

「停留所・・・(導かれたというか、釣り上げられたんだけどね)」


余計な突っ込みは心の内に留める僕に、ファーストコンタクトからは大分落ち着いたらしい神様は穏やかな声で続ける。


「そっ、停留所。次の生に転生をするまでのね。」

「転生!?」


入院中に読んでいた小説の中で見たことのある言葉を聞き、思わず声がでる。

転生というと生まれ変わるっていうあれだろうか、そうだとしたらとてもうれしい。

今度は健康な体で長生き出来たらいいな・・・あ、でも人間に生まれるとは限らないのか。さすがに虫とかは嫌だなぁ・・・。

転生という言葉に気持ちが昂った僕は一人で思考を暴走させていく。仕方ないね。そういうお年頃だったんだし。


「何百面相してるのよ!なんとなく何考えてるか分かるけど、落ち着きなさい。あなたの転生先は決まっているのよ。」


神様の一言で熱暴走気味だった僕の頭が一気に冷える。


「え、そ、そうなんですか?僕は何になるんですか?」


問う僕に神様はスッと真面目な顔になり、


「あなたにはとある世界の木に宿ってもらうわ。」


そう、言った。




「木、ですか?あの地面から生えてる、植物のあれですか?」


神様に告げられた想像だにしなかった転生先に思わず僕は聞き直す。


「その木よ。もちろんそんじょそこらのただの木じゃないわ。千年以上もかけてやっと見つけた魂ですもの。」


僕を引き上げた時の感動が甦ってきたのか、少し言葉に力を込めて神様が言う。


「あなたにはあなたが生きてきたのとは別の世界、異世界といえば分かり易いかしら?異世界の世界樹に宿ってもらう事になるわ。」

「世界樹?」


「そう、世界樹。その世界のいしずえであり、その世界の全ての根源であり、その世界を育み守る親のような存在、それが世界樹。

 天から落ちた種を共に生まれた精霊が育み続け、幾千年もの年月をかけて世界に根を張った巨樹。あなたはそこに宿るの。」


・・・なんだかすごい話になってきたぞ。僕にそんな大役が務まるのだろうか・・・。


「なんで、僕なんですか・・?第一、その世界樹になって僕は何をすればいいんですか?!」


神様の話を聞いて急に不安が心を覆った僕は少し強い口調で問う。


「何故あなたか、それには答えられないの。ごめんなさいね。

 でも何をすればいいかっていうのは心配いらないわ。その時になれば自ずと分かるから。

 それに助けてくれるパートナーもいる。それにこの私がこんなに時間をかけて見つけたあなただもの。きっと大丈夫よ!」


「こんなに」に力を込めてそう言うと、神様は釣竿を持つのとは逆の手を僕に向かって掲げる。

神様の言葉は漠然としていて何の根拠もない答えだったけれど、なぜか僕の不安は薄れていく。


「・・・分かりました。いえ分からない事ばかりだけど、それが僕に与えられる次の生なら精一杯生きてみます!」


そう言って神様を見ると、とても優しい顔で一つ頷いてくれた。

初めて、目の前の人が本当に神様なんだと思った。



――掲げられた神様の掌から光が溢れる。


光はどんどん強くなり、僕の目の前に居るはずの神様の姿がぼやけ、視界が白一色に塗り替えられていく。何故か眩しさは感じない、優しくて強い光。

ふと目を向けてみた自分の掌さえも見えなくなった時、浮遊感を感じ、僕は穏やかな気持ちで意識を手放した。


閑話的な感じでいつか神様のお話も出来たらいいなぁ。

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