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神様のお願いそれは……  作者: 暁アカル
4章 フードピア
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28話 ルージュペッシュを求めて

 フードピア近郊にある森。

 竜とミリアは今回の旅の目的である木の実、ルージュペッシュを朝から探していた。

 旬の食材であるがやはり数が少ないので見つけるのに二人共苦労している?

 確かに見つけるのに難しい木の実なのだが探索作業が難航しているのには他に原因があった。

 それは、ミリアにある。


「これは!? あっちにも!」


 ミリアが興奮している理由は、ここには希少な食材が多く存在していること。トレスの周辺ではないらしい。つまり産地限定の食材ということだ。

 ミリアの様子を見ている竜には何が凄いのかよく分からなかった。ただ言えることはこの森には希少な食材が存在している。そのことだけは理解出来たようだ。


「あの~、ミリアさん。そろそろルージュペッシュを探しませんか?」


 実際の所、今日はまだ一度も目的の物を探していない。朝からやっているようだが気がつけば太陽の位置的にもう昼なのである。


「日が暮れてしまいますよ~」


 食材のことが全く分からない竜には、この時間はずっと退屈だったのだ。

 今より前にも何回か声を掛けたが夢中で自分の世界に入っていたミリアは全く反応を示さなかったのである。

 仕方ないな。少ししたら終わるだろうと思って身の回りの安全を確保するため遠目でミリアを視界に納めつつ監視しながら待つことにした竜であったが、結局このような状況になってしまったのである。

 竜は、ため息を吐く。


「こんなところか」


 野草を採集するためにしゃがんでいたミリアが立ち上がり背筋を伸ばす。

 ようやく終わったようだ。

 そしてミリアが竜の元へ近づいて行き、


「どうだ凄いだろう!」


 ミリアは、とても満足しているようだ。満面の笑み、いつもの睨むような表情とは違う。柔らんでいた。

 その笑顔は、竜に初めて見せるものだった。ミリアが見せる笑顔はごく稀だ。

 しかし竜は、ミリアの笑顔は初めてだというのに特に気付いた様子もない。それだけではなく、


「スゴイ、スゴイ」


 受け答えにもはや感情はなかった。共感もない。取ってきたこれらの価値が分かる者ならば共感出来た事だろうに。

 それだけ竜が退屈で疲れていたのだろう。

 けれどもミリアはそんな竜に気づかなかった。


「それじゃ早速ルージュペッシュを探しに行きましょうか」


 竜が言ったことによりミリアは、周りを見渡してどのくらい時が経過していたかようやく気付く。


「すまん」

「いいですよ。人にはそれぞれ好きなものがありますし。実際、俺にもありますから。そんなことよりも早く行きましょう」

「うん」


 冷静になったことによりミリアは夢中になりすぎていた自分を少し恥ずかしいと思い頬を染める。そしていつもとは違い発した言葉には角が取れていた。


 気を取り直して二人は、ようやくルージュペッシュを探し始めた。


「見つかりませんね」


 まだ本命を探し始めて約一時間程しか経っていないが探すのが難しいと言われていても竜は簡単に見つかるだろうと楽観的に考えていたようだ。


「目印になるものが見つかればな」


 ミリアが思案していたことを呟く。


「目印なんてあるのですか?」

「それがあるから絶対という訳ではないんだがな。ある生物の近くでよく見つかるから一つの目安として使われている」

「そうなんですか」

「そう。丁度あれくらいの……って、こっちに来い」


 ミリアは、竜の服の裾を引っ張り茂みに隠れる。


「うぉー!?」


 急に引っ張られたことにより竜は転ぶ。

 ミリアは、"シーッ"静かにしろと仕草を作る。そしてその標的に指差す。

 竜は、その指す方向を茂みの間からおそるおそる覗き込む。


「あれは何ですか?」

「アイツだ。アイツが目印になると言われている奴だ」


 その生物は、前傾姿勢の四足歩行でゆっくりと歩いている。大きな身体で焦げ茶色のフサフサの毛が身を包んでいる。体長はおよそ二メートル程だろうか。竜よりは大きい。しかし可愛らしい半月型の耳を持っており、愛らしい雰囲気を醸し出している。


「熊だ」


 竜がそれを見た時に最初に脳裏に浮かんだことだ。


「クマ? 間違ってはいないが、アイツはクーマーンって言う名前だぞ」


 ミリアが指摘する。


「クーマーン?」


 竜は、正式名を聞いたがそれでもコイツはどう見ても熊だろうと思っているに違いない。


「アイツについて行くぞ!」


 ミリアがクーマーンに気付かれないように小声で竜に指示を送る。

 竜もそれに同意を示す。


「そんな隠れてついて行く必要があるのですか?」


 竜の疑問は最もなことである。

 クーマーンを追跡するのに今は一定の距離を保ち尚且つ足音や草木の擦れる音でさえも極力出さないように心掛けていた。


「クーマーンはとても臆病な奴で気付かれるとすぐに逃げてしまう。あの図体のわりに逃げ足がとても速い。だから今回は運が良かった。ほとんどの場合見つけた時にはもう相手に気付かれてることが多いからな」


 この後もクーマーンの後をこっそりとついて行く。

 クーマーンが突如立ち止まる。

 その立ち止まった場所には一本の大きな木が生えていた。他の木々に比べても立派であることがはっきりと分かる程であった。


「あの木にあるのですか?」

「さすがに遠いからはっきり分からないが大きさ的に可能性が高い」


 クーマーンは、少し木の周りをぶらついた後かなりの速さで走り去っていた。


「速っ!」

「仕方ないな。この木を調べるぞ」


 二人は、クーマーンが見ていた木を調べる。


「デカイな」


 近くで見るとより大きさが分かる。

 竜は、実っているか下から見上げる。しかし、ルージュペッシュは実っていなかった。


「ハズレかぁ」

「そうだな。でもこの木はルージュペッシュが実っていたようだ」

「遅かったか」


 竜は、残念がっている。

 この木に目的である実はあったようだが先着が居たらしい。


「しかし……」


 ミリアは、この木を調べていて気になることがあったようだ。

 それはあくまで憶測であることから証拠らしきものがあったとしも確たる証拠ではない。


「ミリアさん、日が暮れてきましたね」

「ん? あ、あぁ。戻るとするか」


 ミリアは、思ったことを胸中にしまう。

 たった一匹のクーマーンにかなり時間を要していたらしい。それほどにまで繊細な生物なのだろう。

 二人は、フードピアへ戻ることに決めた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 クーマーンに遭遇した初日の探索から三日が経った。

 初日以降クーマーンには会えていない。遭遇率はかなり低いことが分かる。本当にあの時は運が良かったということだ。

 まだルージュペッシュは一個も取れていない。しかし別の食材が……。もう流石にいいでしょと思うのだがミリアは、毎日山ほど採るのである。

 その食材達は、多すぎるから倉庫を借りて保管している。

 そして竜とミリアは、今日も探しに行こうとしていた。でもこうして毎日何の成果もなく。いや、成果はあったか。しかしこのままでは今度は倉庫も時期に満タンになってしまうだろう。

 竜は、ミリアにお願いして探しに行く前にギルドに立ち寄った。


「なんか慌ただしいな」

「で、何を受けるんだ?」

「やっぱりルージュペッシュと同時並行出来るやつかな。どれが出来そうですか?」

「それを普通私に聞くか?」

「ここはやっぱり料理人に聞くのが一番ではないかと」


 ということで、ミリアに依頼を選んでもらうことにした。

 食が有名な国であるだけ依頼も食材関連が大半を占めていた。


「これにしよう」


 ミリアに選んでもらったのはとある野草を採集する依頼だった。


「これって、この前も採れたやつですね」

「これなら簡単だろ」


 二人は、依頼書を持ってカウンターへ向かったが、


「すみません。今ちょっと依頼は受注出来ない状態で」


 受付嬢に断られてしまった。

 どうやらこの慌ただしさと関係があるようだ。


「なぜ出来ないのですか?」


 竜は、受付嬢に理由を求める。


「それが……ちょっと厄介な魔物が出まして」

「なんて奴だ?」


 ミリアが眉間に皺を寄せ、睨む様に聞く。

 怖いです。受付嬢は、気の弱そうな人であったため少し怯えている。


「……です」

「本当なのか?」


 ミリアは、魔物の名を聞くと不敵な笑みを浮かべる。

 その表情は、まるで悪魔を見ているかのようだ。


「ひぃぃ。……はい。なので、ギルドとしては一致団結して討伐することになりまして……」


 受付嬢は、さらに怯え、おろおろとする。


「今日は探索を中止するぞ」


 突然の中止。


「へぇ?」


 竜は、疑問に思った。それ以外にもなぜ受付嬢は怯えているのだろうかと。ミリアの後ろに居たために詳しい内容が聞こえなかったらしい。


「とにかくだ。これに参加するぞ」

「わ、わかりました」


 振り向き際、ミリアの剣幕な横顔に竜は一瞬怯む。

 ただならぬ事情でもあるのだろうか。初めて見せるミリアの感情に竜は気になる所であったが口には出さず同意を示すことしか出来なかった。

少し遅くなってしまった……。

修正、評価等(感想あれば)よろしくお願いします。

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