27話 到着
お待たせしました。
歩けば道の端に立ち並ぶ露店の数々、どこも料理または食材を扱う。それだけではない。店を出す個人の個性が出ているだけあってかそれぞれが独特の主張を出している。見る側からすれば飽きさせないことだろう。
「おぉー! ここがフードピアか」
竜は、国に入るやいなや露店から立ち込める匂いに惹かれっぱなしでいた。
食の楽園を彷彿させるかのようなフードピアをもっとじっくり見たいがそうはいかない。
ここには観光をしに来たのではない。
「さっさと行くぞ!」
ボーッと見とれていた竜にミリアが急かすように声を掛ける。
「はい」
人混みの中を歩く二人。人が多すぎてはぐれたら迷子になるのは確定だ。
「それにしても凄いですね。この国は」
やはりゆっくりと見たいのだろう。
竜は、終始周りにある露店に目が行っていた。
「まぁな。これだけの食材が集まるのはここだけだからな。食材が多いだけに世界中から料理人が集まっても来るところだしな」
「へぇ~。そうなんですか」
不意にミリアが進めていた足を止める。
「どうかしたんですか?」
「ちょっとここで待っといてくれ」
そう言うとミリアは、人混みの中へ消えていった。
「ちょっ……、行ってしまった」
数分程経ったがミリアは帰ってこない。
ポツンと一人見知らぬ場所で取り残されている竜、ここで突っ立ていても邪魔になるだけだ。どうしたらいいかも分からず流れに身を任せて人混みの波に呑まれる。
「どうしよう。これ完全に迷子ルート確定だよな。ほんとどこに行ったんだか? 一緒に連れて行って欲しかった」
どこまで行ったかも分からない。
「とりあえずここを出るか」
人波に出来た隙間を縫って竜は、脱出を試みる。
「くっ、多い……。すみません、すみません」
一言断りを入れながらそしてようやく、
「ふぅ~。やっと出れた~! で、ここは?」
さっきまでは露店が並んでいたが、レンガや木で作られている建物に変わっていた。
「色々見てみることにするか」
竜は、適当に進む方向を決めて歩き出し、くねくねと曲がりくねった細い路地などに入っていく。
「こっちに行ってみるか」
竜は、どんどん大通りとは程遠い所へと入っていく。建物に遮られて光の入りにくい暗い路地を突き進む。
「ミスったかな」
暗い路地はどうやら大通りとは違うようだ。見るからに柄の悪そうな人達がポツポツと出始めた。なので、ここでも店はあるようだが怪しい物でも扱っている雰囲気がある。やはり全てが良いという訳ではなさそうだ。光ある所に影があるというような感じだろう。
「闇市みたいな所かな」
流石にここはヤバイと感じたのだろう。
竜は、来た道を引き返そうとする。しかし、
「ねぇ~。ちょっとそこのお兄さん」
竜は、後ろから腕を掴まれる。
「はい?」
「うちのお店で良い物が入ったんだけど……どう?」
竜が振り向く。声を掛けてきたのは綺麗な女性だった。
「別にいらないのでいいです」
こういうのには関わらない方が絶対に良いだろう。
竜もそれは分かっているからさっさと逃げようと腕を振り解く。
しかし、流石闇市らしき場所であるだけタダで返そうとはしない。
「今ならサービスしちゃうんだけどな~」
女性は、艶めかしい声で誘惑する。そして惜しむことなく自らが持つ武器を最大限使う。
「あの、当たってるんですけど」
先程解いた腕にまたしがみつく。立派な二つの山が竜の腕を飲み込む。
健全な男子にこんなことをされて正気を保っていられるだろうか。答えは否であるだろう。
「どう?」
「わ、わかりました。少しだけなら」
竜の答えに女性は微笑む。
しかし、裏では「毎度あり~」とでも言いたそうにしているに違いない。
「こっちよ」
女性に引っ張られていく竜。
このままでは絶対に巻き上げられてしまうだろう。
「ちょっと待ちな!」
大きな袋を両手に持った赤毛の女性が呼び止める。
かなり息を切らしていることからどうやらかなり走っていたようだ。
「ミリアさん!」
竜は、「やっと会えた-!」と言いたげな表情だ。
竜の腕を掴んでいた女性は、機嫌が急に変化し、
「チッ、連れがいたのかよ」
「こいつは返してもらうぞ」
ミリアは、竜の腕を掴む女性の手を叩く。そして女性を睨む。
女性は、特に難癖をつけることなくその場から無言で立ち去った。
「あっ、どうしたんですか?」
「ハァ、ハァ、どうしたじゃねぇよ!」
竜は、状況が飲み込めていない。
ミリアは、そんな竜に呆れている。
「お前なぁ。もうちょっとで騙されていたぞ」
「良い人そうでしたけど」
これは良い人というよりも良いことをしてくれる人だろう。
ミリアは、竜にそのままさっきの女性について行っていたらどうなっていたかを予測を交えて話す。
「あれはだな。色仕掛けで近づきぼったくるつもりだったぞ。運悪かったら気絶にされて奴隷として売られていたかもな」
「マジか! 危なかったー。助けてくれてありがとうございます」
「というかそもそもお前があそこからいなくなってたのが悪いんじゃねぇか」
「それは無理ですよ。あそこ人多すぎ」
「それもそうか。とりあえずお前も見つけたし、ここを出るか」
竜は、ミリアと来た道を引き返し大通りに戻った。
「ずっと気になっていたんですけど」
竜は、ミリアが手に持つ袋に何が入っているか聞く。
袋がパンパンに膨らんでいた。一体何を買ったのだろうか。
「忘れてた」
ミリアは、袋から食べ物を出す。
それは丸い饅頭の形をしている物だった。まだできたてなのだろう湯気が出ていた。
「良い匂い」
ミリアがそれを半分にちぎる。すると熱々であるため香ばしい匂いが立ち始める。
その匂いは竜の鼻腔をくすぐる。
「とりあえず食べてみな」
ミリアは、それを竜の口へと運ぶ。
「アツ! アツ!」
「どうだ?」
「ふぁい。おいひいです」
「やっぱりな。お前もそう思うよな。これはこの国のオススメの一つで……」
ミリアは、自慢げに語り始める。
竜は、料理について楽しそうに語るミリアを微笑し見る。
そしてミリアは、自分が暴走して喋っていたことに気づく。
「すまん。夢中になってしまった」
「本当に料理が好きなんですね」
「まぁ……な」
ミリアは、頬を指で掻きながらちょっと照れた感じを出す。
いつもは取っ付きにくい感じだが今は可愛らしい一面を見せている。
「他にもオススメの物とか無いんですか? 腹も空いたので何か食べたいです」
「そうだな。ならあそこに行くか」
この後二人は食べ歩きを満喫したのだった。
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夕方、宿に入った。
ミリアは、借りた部屋の鍵で扉を解錠し中に入る。
「ふぅ~」
どうやら疲れているようだ。
荷物を置くとすぐにベットダイブ!
「やっぱりこの国の料理は美味しいな」
ミリアは、今日食べた料理に満足している。
「アイツも気に入ってくれたし」
アイツとは竜の事だろう。
ミリアの頬が赤く染まる。
「今度はあそこの料理でも一緒に食べに行こうかな」
ルンルンと楽しそうに呟いている。
「今日は上手く出来ていたかな」
そう。ミリアには克服すべき課題があったのである。竜と仲良くするということ。この結果は当人にしか分からないことだ。少なくとも今日のミリアも普段通りだったと言えるのではないだろうか。
少し行き詰まったので違った書き方をしてみました(自分の中では)。
修正、評価等よろしくお願いします。




