26話 真夜中に
「うぅ~、さむっ!」
ミリアさんと交代の時間になった。
こんな真夜中に外に出ることなんて絶対ないよな。寝起きで肌寒い。
「さてと、ここから朝までかぁ」
このままだと覚醒には時間が掛かりそうだ。
寝起きで重たい身体をラジオ体操の順番を思い出しながら動かす。
「ねむい」
けれど、ラジオ体操以外と凄いのではないか? さっきよりはマシになった。俺には合っていたようだ。
「うーん。ひまだ」
今はただひたすら消えそうになる焚き火を絶やさないよう燃料になる木などを入れている。だって明かりはこの焚き火と……。
「綺麗だな」
俺の頭上、晴天の夜空に輝く星々。
「見ても全くわからない」
どういうことか?
俺が知っている星座を探そうと思っていたが地球では輝いていても都市の明かりで見れないような星も見えているはずだから分からないということだ。
「いつになったら日が昇るだろう?」
時間はゆっくりと進んでるように感じる。
起床から時間は思ったほど経ってはいないだろう。
「この際能力でも確認するとしますか」
魔喰で取り込んだ魔力、その力で何が出来るのかを見てみることにした。特にユニークスキル『顕現武装』は強い。
正直なところ黒狼が使いやすくて他の能力を最近全く使っていない。早急に発掘しなければならない。
「まずは不死王だな」
二番目によく使ってはいるがなぜか使った後は使用時間に左右されるが反動を食らっている。Aランクの魔物とはいえ魔王幹部だったからな今の俺の実力には合っていないということだろう。
主な能力としては幻影と攻撃系の魔法。
「次は鷹だな」
主な特徴は空を飛ぶことが出来るというところか。あとは風属性の魔法が使える。ちなみに『索敵』スキルはこいつから得られた能力だ。使うと視力が強化されて遠くまで見通すことが出来るようになる。
「スライムは」
火属性を取り込んだため、その能力も火属性だけ。物理攻撃に強いが魔法には弱い。
「これで終わりかな……。あっ、こいつを忘れてた」
ゴブリンだ。『身体強化』しか使えないけど使いやすいから問題はないな。
ここで一つの疑問が浮かぶ。
「ゴブリンを顕現武装したらどうなるんだろう?」
どうなったかは皆さんのご想像にお任せする。ただ言えることは良くはなかったということだ。
確認が終わってからは『索敵』でぼ~っとしながら見張っていた。
「あれは……」
普通の視力では目視出来ない距離だが強化された俺の目には遠くからぽつぽつと燃える火がこちらにやって来るのが見えた。迫るごとに姿がぼんやりと見えてくる。
「人かな。馬ような生き物に乗っているな。手には武器みたいな物が」
だるいな。絶対盗賊じゃん! よくこんな場所で襲ってきたな。
「他には見えないな。しょうがない。ここだとミリアさんを起こしてしまうし。こちらから出迎えてあげるとしますか」
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「今日はあれを頂戴するぞ! 野郎共!」
こんな何もない平原でも盗賊達は隙あらば金品や食料、はたまた人を攫う。どうやらこの平原で野宿をしている場所へと向かっているようだ。
「何がありますかねぇ?」
盗賊の部下がボスに問いかける。
「おそらく商人だろうよ。食料を奪うとしようか」
「人はどうしやす?」
おそらく殺すのか売り捌くのかについて聞いているのだろう。
ここエーテルには奴隷という一般市民より下の位が存在する。奴隷になった者の末路は個人差はあれど決して良いものではない。正規ルートなら罪を犯した者の多くが奴隷に落ちる。しかし例外もある。この盗賊達のように人を攫い奴隷として売るなど違法ルートも存在する。
ここで一つ余談だが、リュウは奴隷という存在を知ってはいるがまだ見たことはない。
「もうすぐだ」
そろそろ盗賊達は野宿している場所に着きそうだ。
「ありゃ何ですかねぇ?」
部下の一人がこの何もない平原に立つ何かを捉えた。
「見間違いだろ。気にするなこのまま行くぞ」
ボスの返答に部下達も従い馬を走らせる。
しかし突如、前方に立つ何かから"ビューッ"と音を立てる物が飛んできた。
「避けろー!」
ボスの号令に従い部下達も回避行動を取った。しかし、今の奇襲で乗っていた馬の足は切られてしまい立つことが出来なくなっていた。
「距離を取れー!」
盗賊達は馬を捨て距離を取る。
明かりは数十本の松明こんな真夜中では姿もはっきりと映しはしない。
「何者だ!」
「それはこっちのセリフですよ。俺たちの方に向かってきているんですから」
「お前、あそこに見える馬車の奴か?」
「そうですけど」
「なぜ気づかれた」
盗賊達は驚きを隠せないようだ。それもそのはず、さっきから言っているように遮蔽物がない場所とはいえこんな真夜中に接近してくるものに普通なら事前に気づくことはないからだろう。
「見えていたので」
「そんなことあり得ない」
「『あり得ない』って言われても。とりあえずあなた方は盗賊ですか?」
この盗賊達はバカだ。
相手のことに気を取られすぎて正体を逆に曝す。
「そうだがだったらなんだ?」
「そうですか。ならここで殺らないと」
そう言って謎の人物は盗賊達に攻撃を仕掛けてくる。
「お前らこいつを殺せ!」
この人物の前にいた盗賊は奇襲により倒される。
「残りは……二十弱ってところか」
謎の人物は襲ってくる盗賊を返り討ちにする。
「なんでこいつこんな暗い中で戦えるんだ!」
「アホでしょ」
その理由とは、多分盗賊達が持っている松明が原因だろう。相手からしたら場所を教えているようなものだ。そして、盗賊達は近くに明かりがあることにより暗順応出来ていないと考えられる。だから不意に現れるように見えているのだろう。
次々に盗賊達は倒されていく。
「お前何者だ?」
ここで再度盗賊のボスが問いかける。
「名乗る程でもないですよ」
謎の人物は、そう言っている間も部下達を倒していく。
「答えろー!」
盗賊のボスは、謎の人物へと攻撃を仕掛ける。
その人物は攻撃をスッと躱し、ボスの腹部に強烈な一撃を加える。
「ギン……イ……ロ」
その攻撃の最中盗賊のボスの瞳には謎の人物の姿が薄らと見えたようだ。
「耐えたか。他の奴とは違うな」
殴られた盗賊のボスは、「はぁ、はぁ」と息を荒くする。
攻撃は効いているようだ。
謎の人物は、「これを使うか」と小声で呟くと、
「顕現武装スライム」
盗賊のボスが言った「ギンイロ」と、このフレーズを聞いたらこの人物が誰であるか分かるだろう。
リュウだ。
顕現武装で身を纏ったリュウは再度盗賊のボスに仕掛ける。
「クソが!」
盗賊のボスは向かってくるリュウに反撃する。しかし、攻撃は何か柔らかいものに阻まれる。それだけではない。どういうことか、
「アツイー!」
殴った拳が火傷を負っていた。
これは火スライムの能力だ。物理攻撃を通さないだけでなくコントロール次第では熱を発することが出来るようだ。
能力の発動中リュウの身体はオレンジ色に輝いていた。
「ばっ、バケモノ!」
盗賊の思考は今までの状況に加え、今の現状に追いつかないようだ。
「こういうのには使えそうだな」
リュウは、能力を試しているかのような言い方をする。
「終わりにするか」
リュウは、ゆっくりと盗賊のボスに近づいて行く。
「うぁぁぁー! 来るな!」
盗賊のボスは、腰を抜かし尻餅をつく。
リュウは、前まで近づくと盗賊のボスの首を掴む。
「ア゛ァァァー!」
首を始まりとしてジワジワと盗賊のボスの身体が燃えていく。
「ふぅー。他の奴らも」
燃やし終わった後、リュウは残りの仲間も倒し、さっきと同じように殺った。
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