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神様のお願いそれは……  作者: 暁アカル
4章 フードピア
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25話 出発

 トレスの町入り口前に()()()はいる。


「そろそろ行きましょう。ミリアさん」

「何で……お前と行かなきゃならないんだ」


 本日のミリアさん、すこぶる機嫌が悪い。

 一つ気になることがあるのではないだろうか? どうしてハツネがいないか。それはこれから行くところが推奨ランクBだからだ。でも、これは冒険者としての正式な依頼じゃないから別に良いと思ったんだけど。マーレさんが「あんた達が行っている間借りるからね~」とハツネを店の手伝いに連れて行かれたということさ。

 さて、こうしていつまでも突っ立てる訳にもいかないからな。


「とりあえず行きましょう!」

「アァ!」


 ミリアさんは、眉間に皺を寄せてヤンキー風に睨んでくる。

 はぁ、この先不安しかない。


「足引っ張んじゃねぇぞ」


 フードピアまでは遠いため馬車を使った移動になる。この険悪な雰囲気の中俺達は荷台へ。乗ったことを確認した馬車は発進する。


「今回の詳しいことを聞いてもいいですか?」


 ミリアさんは、「はぁー」とため息をつき面倒そうに内容を話す。


「とりあえず母さんが言っていたように場所はフードピアの北にある森。ルージュペッシュは木に実を付けているんだけど数が少なくて探すのに時間が掛かる」


 探すのに時間が掛かるタイプか。


「思ったんですけど……」

「なんだ?」

「ミリアさんも戦うのですか?」

「そうだけど。女だからってナメてんじゃねぇぞ!」

「すっ、すみません」



 今日、彼女は身の丈ほどの長さのある戦鎚ハンマーを持っていた。初めはてっきり食材採取で使うものだとばっかり思っていたが。果たして彼女は使いこなすことが出来るのだろうか? 一体どんな天職なんだろう?

 それからも黙っているのは気まずいから何かと質問した。

 案の定、「しつこい!」と言われ会話は終了。

 フードピアまで三日は掛かる道のり、日も暮れ始める。

 つくづく思う。やっぱりここが日本とは違う異世界だということを。向こうでは日が暮れても街灯が点灯し闇を明るく照らす。しかし、今はと言うと馬車に取り付けられている松明だけ。科学の進歩がどれだけ素晴らしいものか感慨にふける。


「今夜はこの辺りで野宿にしましょう」


 御者の提案により開けた平原で野宿することになった。

 テントを張るなど準備を始める。周りに遮蔽物は何もない。もし襲われてもすぐに気づくことは出来るな。冒険者の世界では全てにおいて自己責任、自分の身は自分で守ることが暗黙の了解になっている。それが出来ないなら冒険者をやるなということだ。


「それにしてもほんと周り何もないよな」


 見渡す限りどこまでも平地が続いてそうな。

 テントなどの準備が終わった頃、ミリアさんから声が掛かった。どうやら出来たみたいだ。何がって? そりゃあれに決まってんじゃん。


「ほら」

「ありがとうございます」


 ミリアさんから具材の入ったスープの器を渡され、汁を啜りその後具材を口に運ぶ。


「ウマッ! 美味しいです。ミリアさん!」

「当たり前だ。私が作ったからな」


 普通なら「どうだ? 凄いだろう!」と俺なら言ってしまうがクールに返答する。

 何て言ったらいいかな。インパクトが強いんだよな。マーレさんとは違った感じ。

 美味しいご飯に身も心も満たされて、


「この後はどうします?」


 なぜ、俺がこのような質問をしたかと言うと、就寝時についてだ。いくらこの場所がさっきも言った通りのことであっても寝ている間は無防備だ。やはり見張りは必要だろう。


「先にお前が寝ろ。それまで私が見張りをする」

「わかりました」


 前半、後半に分けることになり、俺は交代後朝まで見張ることになった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 リュウは、途中で見張りを変わるため仮眠をとりにテントへ向かった。

 昼間いくら温暖な気候であっても夜は少し気温が下がる。人の肌は温度の変化に敏感だ。


「夜は涼しいな」


 前半の見張り役であるミリアも少しだが感じている。


「それにしても。はぁ~」


 ミリアは、自分の不甲斐なさでも感じているかのようにため息を付く。

 何を思い、ため息を付いているのだろうか?


「どうしてもあいつ、リュウの前だと強い口調になってしまう。今回も別に行きたくないというわけじゃないのに。どうして昨日はあんなことを」


 またもや「はぁ~」とため息を付く。

 どうやらリュウのことが決して嫌いということではないようだ。

 普段のミリアを見て分かるように何かとリュウにはきつい。それは誰に対しても同じのように見えるのだがミリア自身は違うと思っているようだ。


「どうしたらいいだろう?」


 悩まなくても「そんなのは簡単じゃん!」と思うのだがミリアには凄く難しいことらしい。


「とりあえずこの後の交代の時間からだ」


 ミリアは会話の練習をし始める。


「交代の時間だ」


 これでは今までと同じだ。

 ミリアも「同じだ」と呟く。


「交代だよ。リュウ」


 いつものようにクールに、違う所は呼び名を加えている。「うーん」と唸る。


「リュウくん、交代の時間だよ!」


 可愛く感情を込めて。


「ちがう、ちがーう!」


 今までとあまりにも違うことにミリアは赤面になる。

 ここで見張りを始めてから何度目か分からない。「はぁ~」とため息を付く。

 その後も色々と試したが交代の時間になり、


「こうなったらなるようになれだ!」


 流れに身を任せることにしたらしい。

 それでも一応声を掛ける文は決めているようだ。


「リュウ交代の時間だぞ。リュウ交代の時間だぞ……」


 ブツブツと復唱しながらリュウが寝ているテントへと足を運ぶ。名前を加えている所以外はいつもと変わらない。これが今の彼女の限界らしい。

 そして、テント入り口の布を上げ、


「おい! 交代の時間だ!」


 ミリアは、「やってしまった」というような表情を作る。しかし、そんなことを思っても手遅れ。一体いつになったら上手く言えるようになるのだろうか?

修正、評価等(感想あれば)よろしくお願いします。

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