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神様のお願いそれは……  作者: 暁アカル
1章 異世界へ
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1話 森

 とある森


 少女が、依頼でゴブリン討伐をしていた。


「ギャーギギッギ」

「はぁーっ」


 少女の目の前にはゴブリンが三体いる。剣を構え棍棒を振ってくるゴブリンの攻撃を避けながら反撃の機会を窺っていた。

 中々攻撃が当たらないことにゴブリン達は少女を囲み一斉に攻撃を仕掛けてきた。

 その攻撃に対し、少女は急にある一体のゴブリンに狙いを定め剣を突きの構えにして突っ込んだ。

 さすがにゴブリン達もまさか攻めてくるとは予想していなかったので一瞬怯んでしまった。

 少女はその隙を狙い棍棒を持つ手を下からすくい上げ、斬りそのまま首を撥ね飛ばす。仲間がやられたことに呆然とし我を忘れて残りの奴らも突っ込んでくるが、連携がなくなった相手に遅れはとらなかった。一体は横に真っ二つにされ、もう一体は棍棒の攻撃を避け空いた胸元に突く。


「ふう~、これでこの辺一帯は倒したかな」


 少女は汗をぬぐう。


「それにしても量が多い」


 それもそのはず、ここまで少女は多くのゴブリンを倒していた。


「もしかすると……。もう少しあたりを見たほうがよさそうだ」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 転移した俺は森の中を歩いていた。来たのはいいけど、まさかの森の中という。こっちに来てから数時間は経っただろうか。初めは少し歩けば町に着くだろうと思っていたがそれらしきものはまったく見えてこない。見渡すかぎり青々と生い茂った木々。まだ今は昼なので明るいが、夜はどうなるのやら。

 ここで、一つ問題がある、食料だ。保存食程度の物は元から持っていたが、森で遭難しているこの状況を見れば分かるだろう。保存食は無限にあるわけではない。また、水分を補給するものもない。このままでは確実に餓死してしまう。非常にマズい! なんとかして確保しなければ。


「無事、町につきたい」


 日は進み。

 約三日が経つ。やはり夜は月明かりがあるものの視界が狭まるので動かずに木の上で過ごした。はっきりとは視認できなかったが夜行性の生物がいるようだった。

 現在、こっちに来てから初めての戦いが始まった。今までは隠れてやり過ごしていたが、こちらの不注意でとうとう気づかれてしまった。

 その相手というのは、肌は緑色、身長は小柄ながらも体格の良さから力強さを感じる。そして手には棍棒が握られている。ファンタジー系小説で一度は見聞きしたことのある怪物、ゴブリンに似ていた。

 向こうはこちらを獲物と判断して襲いかかってきた。


「ヤバイ、本当にヤバイってー!」


 反撃するための武器はないし、結局、与えられたであろう能力も未だに分かっていない。よく三日間生きてこられたなぁと感心する。


「ギーッ、ギギ」


 俺は武器になりそうな物を逃げながら探す。しかし、周りにはあのいかにも硬そうな棍棒に対抗出来るほどの物はなかった。ずっと走っているのでスタミナも限界に近づく。


「このままなぶり殺されるなら一か八か賭けてみるか」


 俺は止まりゴブリンと相対する。

 突然止まったことにより奴もこちらの様子を窺っている。

 俺は息を整える。


「すぅー、はぁー」


 俺はゴブリン目掛けて走り出す。

 こちらが迫ってきたことで向こうも棍棒を構える。

 まず、相手の動きを確認したかったため細かに動いて焦らして攻撃を誘った。


「来るか?」


 結果、単純だった。少しの挑発ですぐに攻撃してきた。それを躱していく。避けられないほどの速さではなかった。だが、一振り、一撃が重そうに感じた。"ブォーン、ブォーン"と振るたび風を切る音が聞こえた。絶対、生身で受けたら逝かれるだろう。


「ギギギ」

 

「強そうな攻撃だな」


 何度か振ってくる棍棒を躱しただけですぐに目は慣れた。しかし、躱しているだけであってこちらからは何も反撃できない。手詰まりの状況には変わりない。やはりこのままでは俺が先に力尽きそうだ。


「何かないか」


 その時、泥濘んだ地面に足を取られてしまった。すぐに立ち上がろうとしたがすでにゴブリンが振るう棍棒が迫ってきていた。この時だけは時間の流れがゆっくりと動いているような感覚があった。


「…………」


 刹那、突如体に力が沸いてきた。俺は本能で向かってくる棍棒を根元を掴みそのまま引っ張り投げ飛ばす。そしてすぐさま奴の手から離れた棍棒を拾い投げ飛ばされ倒れている奴の頭を何回も叩き潰した。叩くたび血は飛び、返り血をくらう。無我夢中で叩いていたため死んでいることにまったく気がつかなかった。気づいたときにはさっきまでの面影はなく、めちゃくちゃになっていた。


「はぁ、はぁ、はぁ、はぁーはぁー」


 俺はあの時奴が浮かべたニヤついた表情を見たとき背筋に寒気が走った。元の世界では決して感じることがなかった生命いのちの奪い合いがこんなにも恐怖で身も心も支配されることに戦闘後、死体となったゴブリンの目の前で俺はただ呆然と立ち尽くしていた。


 初戦闘から一週間経とうとしている。

 俺はなんとか生きている。けれど、未だ森の中を彷徨っている。このままだと一生森で過ごすことになってしまう。魔王を救う以前の問題。どうして町の近くに転移しなかったのか。まぁ、これと言って理由はなさそうだけど。ポジティブにいこう! これも冒険してるって感があるし。

 話は変わるが、初めて戦った時、急に沸いてきた力についてだけどあれから一度も使うことが出来ていない。でも、おそらくあれが俺の能力に違いない。一部なのか、はたまたすべてなのかは謎だ。


「こう能力と言ったらすべて破壊したり直したりアニメのように変身とか期待してたんだけどなぁ。なんかパッとしないなぁ。使えないものだったらどうしよう不安だ」


 もちろん、悪い話だけではない。木の実や川も見つけて水も確保することに成功した。これで食料問題は一応解決した。また、武器がなかったが入手にも成功した。それは棍棒と包丁だ。棍棒はあれから遭遇したゴブリンのほとんどが持っていた。包丁は遭遇した中で偶然一体だけ持っていた。ゴブリンの皮膚は意外にも硬くて棍棒がすぐに潰れるため戦うたびに変えていた。けれど、包丁がもたらしたものは革命的だった。たかが包丁と思っていたが打撃と斬撃では与えるダメージが違い狩る速さも変わった。きたーって感じ。

 日を追うごとにゴブリンに出会う回数も増えていた。ちなみにゴブリンを倒した後体内を調べてみると綺麗な透き通った石が出てきた。金に換えれるのではないかと思って倒すたび見つけては取っている。余裕も生まれたのでゴブリンを食べてみようと試みたが、とても食べれそうになかったので断念した。


 その時、"カサッ"何かが茂みに潜んでいるのか葉の擦れる音が聞こえた。警戒しながら歩くがどうやら複数いるようだ。そこら中から聞こえる。相手を確認出来ないため少し森の中でも開けた場所に出る。少し待つと後方だけでなく気づかなかったが前方からもゴブリンが現れ円上に包囲され逃げ場がなくなった。


「後は分かっていたがまさか前にもいたとは……こりゃやられたな」


 これまでは数も一度に二、三体だったのでそんなに難しくはなかったが今回は十体さすがに一度にこの量は厳しい。


「やるしかないか」


 俺は棍棒と包丁を構える。

 目の前に見えるゴブリンが棍棒を構え突っ込んできた。残りの奴らもそれに合わせ攻撃を仕掛ける。

 この一週間の生活で俺の感覚は鋭敏に研ぎ澄まされた。振り下ろされる棍棒を避ける。だが、やはり数が多くおまけに休みなしに攻撃してくるので全てを無傷でさばくのは難しい。だから俺はそれを受け流すことで当たるダメージを軽減する。


「はぁ、はぁ、このままじゃ」

「ギギャ」

「ギーギッ」

「あれが、つかえたら……」


 嘆いてもしょうがない。使えるか分からない能力に頼るよりも今出来ることで現状を打開する。まず、奴らの攻撃は? 一撃で仕留めるには? 相手の動きをよく観察してみるとわずかだが、攻撃には時間差があり被らないようにしていた。良く出来た連携だと思うが、俺が反撃するにはそのわずかな間を狙ったほうが良さそうだ。


「さぁ、反撃開始といこうか」


攻撃を仕掛けてきた一体の攻撃を躱し包丁で胸元を刺す。


「よし、一体目!」


 続いてやって来る攻撃も難なく躱し包丁の一突きで命を奪う。その後も攻撃を受け流しながら躱し四体葬ることが出来た。数で優勢だったはずのゴブリン達にも焦りが見えてきた。


「ギギギギッ!」

「ギッ」


 今度は同時に攻めてくる。俺は今まで通り避けるが避けた後の僅かな間を狙いまた他の奴が攻撃してくる。瞬時に防御態勢に入る。けれども、完璧に態勢を作れず飛ばされる。


「くっ!」


 その後もゴブリン達は反撃の隙を与えない。


「ちっ、狙う隙がない」


 徐々に攻撃を受け流してきたツケが回ってきた。蓄積された傷の痛みが耐えられる限界を超えそうになる。

 ここで、一体が攻撃を仕掛けてきた。今度の攻撃は今までとは違った。なんとそのゴブリンの背後にもう一体隠れていた。

 俺は傷の痛さゆえに気づくのに遅れてしまった。


「まじか!」


 全くをもって予想外の攻撃だった。


"ドカッ"


 棍棒で強打される。


「ぐぅ……、こんなところで……」


 薄気味悪い笑みを浮かべていたゴブリンを最後に俺の意識は遠のいていく。

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