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神様のお願いそれは……  作者: 暁アカル
3章 Bランク昇格試験
28/34

閑話③ 異世界

今回はすぐに投稿出来ました。

 光の輝きが消える。

 周りから「おぉー!」と、歓声が聞こえ、敦、紗綾、その他クラスメイト達はゆっくりと瞼を上げる。


「何が起きたんだ?」


 敦は、辺りを見渡す。

 純白に染められ、神聖な雰囲気を感じさせる空間。

 白装束を着てフードを被った多くの者が敦を含めたクラスメイトを中心に円で囲んでいる。


「何が起きたの?」

「何なんだ?」


 その他のクラスメイト達もさっきまで教室に居たはずが急に見知らぬ場所に変わったことに混乱し、各自がそれぞれ近くの奴と小声で会話をしている。


「まさかな」


 敦は、呆然としているようだが、この状況に思い当たる節があるようだ。


「敦くん、何が『まさか』なの?」


 紗綾は、みんなと同じで状況を飲み込めていない。


「多分、もうじきわかんじゃね」


 紗綾は「ん?」と首を傾げるが、敦が言った通りになる。

 急にフードを被った者達が道を作るように片膝をつく。

 その道から白装束で豪勢な羽織を着た老人がゆっくりと敦達に近づいてきた。

 老人は、敦達の前に来ると片膝をつき、


「ようこそ我らが勇者! 呼びかけにお応えくださってありがとうございます!」


 それをクラスメイト達は、「勇者!?」、「キター!」、「勇者だってウケルわー」様々反応を示す。

 その反応は当然のことだろう。それだけではない。ここが日本とは違う全くの別世界であること薄々感づいているみたいだった。

 敦もクラスメイトと同様の反応をしている。


「異世界召喚キター!」


 クラスの大半が嬉しさや喜び、驚きに浸っていたが中には例外な者もいる。タロットカードを捲り占う者、「クックック」と不気味に笑う者、また、自前の物なのか、本を開き興味がないような態度を示す者。クラス委員長佐野三ツ葉もその中の一人である。冷静に周りをよく見て観察していた。


「ここではあれですので場所を変えましょう。勇者様方、私についてきてください」


 高貴な老人に言われるがまま意気揚々とクラス全員後に続いて行く。

 移動中、三ツ葉は、テンションの上がっている敦に話し掛ける。


「どう思う隈井くん?」

「何が?」

「『何が?』って、なんであなたまでみんなと同じになってんのよ」


 三ツ葉が"バチン"と、敦の背中を叩く。

 この一発が敦に冷静さを取り戻させた。


「イテェー! あっ、すまん。あれだと思ったらついテンションが上がっちまって」


 三ツ葉は、「はぁ~」と、眉間を指で摘まみ呆れた仕草を作る。

 この場に冷静な三ツ葉が居なかったら敦はこのまま暴走していたことだろう。それほどにまで敦は興奮していた。


「今、冷静な判断出来そうなのはあなたくらいなのに……。ともかく、『あれ』ってなに?」


 敦は、三ツ葉の質問に答える。


「いや、俺が読んでる小説に似ているなと思って」


 敦がオタクだということは周知の事実だ。

 どうやら敦は、読んでいる小説の中で異世界転移系の話と今回の状況を照らし合わせていた。


「あぁ、あなたがいつも読んでるオタクな本のことね」


 三ツ葉の一言は敦のオタク魂に火をつける。


「オタクではない。未知の可能性を持った気高く偉大な日本の文化だ!」


 敦は、どれだけ素晴らしいものかを三ツ葉にペラペラと早口気味で己が持つ知識を喋る。


「はいはい。わかったわよ。で、特にどの辺が似ているの?」


 敦は、「わかってくれたかー」と、ほぼ息継ぎなしで喋っていたため息切れを起こしながらうんうんと頷く。そして、息を整える。


「俺が読んだやつではとりあえずさっきのようにこの見知らぬ場所に召喚される。で、その場で誰かに会う。これがさっきの老人や周りにいた奴らだ。こっからが違うんだけど小説ではその場に綺麗な王女様も居て『お願いです。魔王を倒して世界を救って下さい!』的な展開になるんだわ」

「で、そのままその物語では戦いに行くと」

「そんな感じだ」

「魔王は倒せたの? 元の世界に帰れたの?」

「わからん」

「何でわからないのよ!」

「だってまだ完結してないし。あー、そう思うと無性に続きが読みてー!」


 三ツ葉は再び考えているようだった。徐々に皺が眉間に徐々に寄り始める。


「おーい。そんなに深く考える必要はないんじゃね?」

「何言ってるの! さっきの話は置いといて、とりあえず私たちは全くの見知らぬ地にいるのよ。帰る方法もわからないのに。魔王……」


 敦もその意見には賛同している。

 敦の話のことを気にせず逸らして置いておきながらも、やはり三ツ葉は気になって仕方が無いようだ。

 そうこうしている内にどうやら部屋に着いたらしい。

 重厚感のある大きな両開きの扉がゆっくりと開き生徒達を迎え入れる。部屋の中はまるで中世の宮殿を彷彿させるかのような作りだった。明かりを照らすは大きなシャンデリア、所々に金の装飾が施されている。ただ、この部屋も先ほど召喚された部屋と同じで壁、床、はたまたインテリアまでも白を基調とした作りになっていた。目がチカチカするほどに。


「勇者様方あちらのお席にお座りください」


 老人に指示された生徒達はそれぞれ席に着く。


「おいおい、まさかね」


 敦は、小声で呟く。

 クラスメイト達も机を挟んで正面にいる人物に目を引かれた。主に男子。

 これが異世界!? そう受けてもおかしくはない絵に描いたような端整な顔立ち、銀髪、碧眼の女性が座っていた。その女性から滲み出る全てを暖かく包み込むようなオーラは、場にいる全員に絶対的安穏を与えるはずだ。

 老人もその女性の隣に座り生徒達と相対する。

 少しの沈黙後、老人が、"ゴホン"と咳払いをし、話を始める。


「この世界の名はエーテル。ここは、エーテルの中の一つの国、アスフィリア教国。私は、この国の教皇、モロフと言います。こちらが娘の……」


 さっきまではわかりにくかったが、とても人当たりの良さそうな印象だった。


「お初にお目にかかります勇者様。ソフィアです」


 黙っているだけでも存在感があるのに澄んだ美声はさらに思春期真っ盛りの男子共のハートを貫く。

 一部の女子達のハートも貫いたようだ。例えるなら「ソフィアお姉様~!」的な感じでうっとりとした表情になっている。

 こうなっては埒があかないと思ったのだろう。三ツ葉が質問を投げかける。


「私たちはなぜここに呼ばれたのでしょうか?」


 その質問は誰もが疑問に思っていたことだ。生徒全員の視線がモロフ教皇に注目する。


「それはだな」


 モロフが言おうとした矢先に、


「勇者様にはこの世界を征服しようとしている魔王を倒して欲しいのです!」


 ソフィアが席から立ち上がり懇願する。

 対して、生徒達の反応は、


「ムリだろ」

「こんなことが現実にあるのか?」

「一発、俺を殴ってくれ」


 この反応が普通だろう。それもそのはず自分達は唯の学生に過ぎない。そんな子に魔王を倒してくれと、ゲームじゃないんだから、誰もが疑った。


「『魔王を倒して欲しい』と言われても私たちにはそんな力は無いと思うのですが?」


 三ツ葉の心配は杞憂に終わる。


「心配する必要はない。勇者として召喚された限りは何かしら強大な力を持っているはずだ。そう言い伝えが残っている」


 自分達に力があることが分かったことで生徒達のテンションがまた上がる。


「では、もう一つ、私たちは元の世界に戻れるのでしょうか?」


 それを聞いた途端にモロフ、ソフィアの顔に影が差す。

 その反応に三ツ葉はあまり良い返答はないだろうと感じたようだ。


「元の世界に帰すことは出来ない」


 モロフは頭を下げ「申し訳ない」と、生徒達に謝る。

 帰ることが出来ないと分かった生徒達は先程の態度と一変して不満を爆発させる。こればっかりは三ツ葉もお手上げのようだ。予想はしていても落胆の色を隠せない。

 しかし、ここで以外にも敦が、


「まぁ、とりあえずしょうがないんじゃね」


 この男だけはどうやら割り切っているようにも見て取れる。


「これだけのことをしたんだ。何かしら世話はしてくれるんだろ? まさかそのままいきなり戦いに行かす気じゃないだろ」

「あぁ、もちろんだ」

「なら良いじゃん」


 当然、この言動にクラスメイトからは大ブーイングの嵐。

 しかし、どうやら敦は元の世界に帰ることを諦めてはいないようだ。


「俺はこの世界で生き残って帰る方法を見つけるぜ。絶対どこかしらにあるだろ」


 楽観的に言っているが、その目は真剣そのものだった。

 それに刺激され残りのクラスメイトもやる気を見せ始める。

 クラスでの意見もまとまり、


「というわけでモロフ教皇、ソフィアさん、勇者として魔王を倒す。あと、帰る方法も見つけるんで」

「ありがとう。こちらも勇者様が元の世界に帰れる方法を探す」

「勇者様ありがとうございます」


 モロフ、ソフィアはお礼を述べる。


「何とか丸く収まったみたいね」


 三ツ葉はホッとしている。あの敦がまとめるなんて想像していなかったようだ。


「そういえば、ずっと静かだったわね、紗綾……」


 今思うとここまで紗綾が何も口を挟んで来なかったことに疑問に思ったようだ。三ツ葉は紗綾の様子を窺う。


「竜くんに会えない、地球に帰れない、探せない、竜にもう会えない、会えない、会えない、竜くん、竜くん、りゅうくん、りゅうくん、りゅう……」


 壊れてしまったかのようにブツブツと言っている。


「紗綾さん、大丈夫!?」


 どう見ても大丈夫ではない。


「紗綾さん、紗綾さん!」


 三ツ葉は、紗綾の両肩を持ち小刻みに揺らす。


「フフフフフッ……」


 三ツ葉の声は紗綾に届かない。

 まだみんな話合っているから用意に大きな声を出すことを渋ったのだろう。


「どうしたらいいの?」


 結局、話し合いが終わるまで紗綾はずっとあのままの状態だったらしい。

ちょくちょく閑話を挟んでいこうかなと。

次の投稿では本編第四章を予定しています。

修正、評価(感想あれば)よろしくお願いします。

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