23話 忍者の里④
前回まで、魔族が里から去った。その後の続きから入ります。
2ヶ月ぶりですがよろしくお願いします。
魔族が里から撤退して数時間が経過。
今、俺はと言うと、
「いや~よかった!」
「我らの恩人に感謝を!」
「飲め飲めーーーー!」
「あっ、どうも」
宴が催され、それに救世主リュウとして参加している。
里の人達が次々に飲み物を注いでくる。
もう正直飲み物はいいのですが……。
「そう遠慮なさらず。さあさあ!」
「こんなことされるほど俺何もしていませんよダンゴロウさん」
「何を言っているのだリュウよ。里だけでなく二度もハツネも助けてくれたではないか。感謝している」
里長はおろおろと泣きながら感謝の意を伝えてくる。
「それはもう何度も聞きましたから」
俺が少し遠慮するとすぐにこの流れになる。いわゆる無限ループに近い状態だ。
「しっかりお礼がしたい。何か欲しいものはあるか? 出来る範囲だがしたい」
「それもさっきから言っているようにこの宴で満足していますから」
「そうか? しかしだな……」
里長はどうしても納得がいかないようだ。それならと、
「そうだ。こうしようお主が困ったとき今度は我らが助ける」
このままだと終わらないしそうしとくか。
「わかりました。そうしましょう」
「うんうん」
さっきまでの殺伐とした雰囲気とは裏腹に和やかに進んでいく。
この光景を見ていると忍者のイメージがすごく変わるな。こんな風にどんちゃん騒ぎするような人達って思わないでしょ。忍者っていったらあれだよ隠密に優れている印象があるから以外すぎる。
「おっ、これうまいな」
「リュウ兄!」
ハツネが後ろから抱きついてくる。
「おお、ケガはもう大丈夫か?」
「うん! もう全然平気!」
ハツネは、軽く飛び治ったアピールをする。
「リュウ兄は?」
「もう大丈夫だぞ。この里の薬はめっちゃ効くな」
この里で使われている薬はポーションみたいな液体とは違い塗り薬だ。
「そうでしょ」
ハツネは、"ドヤッ"って表情を作る。
「それはそうと、リュウよ。これからどうするのじゃ?」
「とりあえず。明日にはここを出ようと思っています」
「そうか」
「えっ! もう帰るの?」
「ああ、悪いな」
俺は、ハツネの頭を撫でながら言う。
ここ最近気がつけばハツネの頭を撫でているな。撫でられている当本人は特に「いや」と言わないから今まで気にしなかったけど。
「よし……」
「ハツネどうかしたか?」
何か意を決したような表情をしていた。
「うんうん。何もないよ」
「そうか?」
その後も人々の喜びの声と共に宴は続いた。
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太陽が真上辺りに昇る。
おおよそ昼頃だろうか。
「さて、そろそろ行くとしますか」
昨夜の宴はとても楽しかった。初めは遠慮がちだったが知らず知らずのうちにのめり込んでいた。そのためか今日は寝坊してしまった。
「リュウ、また来てくれ。お主は里の救世主だ。ありがとう」
「そんな救世主って……」
この里で俺は完全に救世主扱いにされてしまった。もうそれでいいかと受け入れている。
「また来ます」
「さぁ、ハツネも……おらぬな。どこに行きおった?」
そういえば今日一度もハツネを見ていないな。
きょろきょろと辺りを見渡していると、
「里長!」
突如、声と共にハツネが見送りに集まる人垣を飛び越えて現れた。
「どこに行っておった?」
「大事なお話があります」
大事な話?
ハツネの表情は真剣さを帯びていた。
「なんじゃ?」
「わたし、ハツネは、この里を出てリュウの従者として一生を捧げます」
「自分が何を言っているかわかっているのか? ハツネよ」
「はい」
ハツネが宣言したことにより和やかだった周りの雰囲気が緊張を張り詰めたようになってきた。
そんなに大事なことなんだろうか? それはそれとして「従者」ということはこのまま話が通ったらハツネは俺に行くことに……というかさすがに面倒を見る自信はないんだけど。
「ふむ」
ハツネの真剣な表情にダンゴロウは冗談では言っていないことを感じ取っているように頷く。
ハツネは、ダンゴロウが出す答えを息を凝らすように待つ。
「わかった。おぬしの覚悟受け取った。その誓い絶対に破ってはならぬぞ」
「はい!」
張り詰めていた空気は元の和やかな状態に戻る。
勝手に話がまとまってしまった。
ダンゴロウが俺の方に向く。
「こちらからのお願いはおかしいのだがリュウよ。見ての通りまだあいつも子どもだ。迷惑を掛けるかもしれないがこれからハツネのことをよろしく頼む」
ダンゴロウは頭を下げる。
「さすがに面倒は見れないんですけど」
「すまないがそれでもよろしく頼む」
おっと。まさかの断れないパターン。
「なぜですか?」
「それはこの里の掟だからだ」
どうやらこの里では自分が仕えたい者がいる時里長に誓いを立てる。しかも相手の事情など関係なく仕えるらしい。まるでストーカーのようだな。
どうやら拒否権はないようだ。
「……わかりました」
「これからもよろしくね。リュウ兄!」
ハツネは、満面の笑みを作る。
はぁ~、これからどうしようか。
「ちょっと、待ったーーーー!」
今度は何だ?
人混みの中から男性が一人現れた。
「俺は認めんぞーー!」
現れた男に対して周りからは、
「やっぱりな」
「こんなにすんなりいくのはおかしいと思ったんだよな」
現れた男の正体はハツネの父親。
「はぁ」
また面倒なことになりそうだ。
親子の言い争いは続いている。
「俺は認めていないぞ。ハツネ!」
「お父さんには関係ないでしょ!」
「なっ! 『関係ない』、とても素直な子だったはず……」
どうでもいいから早く終わって欲しい。
「やはり……あいつか!」
父親は急に俺の方を指さす。
「リュ、リュウ兄は関係ないもん!」
「そうかそうか」
嫌な予感が……。
「リュウとか言ったな。ハツネを助けてもらったことには感謝しているが今回の話とはまた別だ。お前がハツネに相応しい男か見極めてやる」
ハツネがついてくる話は俺の意志に関係なく決まったはずなのになぜかハツネの父親と決闘することになってしまった。
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昨日、戦場となった里の広場。
今、この中央に二人の男が立つ。
「お前なんかにハツネは渡さんぞ!」
「は、はぁ」
ここまでやる気が出ないのは初めてだ。
見ての通りハツネの父親は娘を溺愛しすぎているのがよく分かるだろう。娘に何かあればすぐに飛び出す。今回の失踪事件も暴走して押さえるのに一苦労したとか。
「始め!」
審判の合図により決闘が始まる。
ハツネ父が先に仕掛けてくる。前に腕を突き出す。
「忍法“火球”」
突き出した手のひらから火の弾が出される。
「ファイヤーボールに似ているな」
俺は、向かってくる弾を避ける。
この里の人達が使う忍法はどうやら一部は魔法と同じのように感じる。原型はそこにあるのだろう。勇者と関係があったみたいだし。
「いいのか? 避けてばっかりで」
火の弾を撃ちながら忍者特有の変わった両刃武器、クナイで攻めてくる。
俺は、剣で対抗する。
「くっ」
根本的に身体の作りが違うのだろうか? 身体強化を使っても相手の動きについて行くのに精一杯だ。
「ふん、この程度か。こんな奴のどこがいいのか」
特にこの決闘にやる気はなかったがやっぱりあんな風に言われるとムカつくな。
「顕現武装、黒狼」
さっきまでと違いもう何段階くらいか身体機能が上がる。
クナイと鉤爪がぶつかり合う。
これでようやく互角に渡り合えるくらいになったようだ。
「それが例のやつか」
ハツネ父が忍法を発動しようとする。
「忍法“炎陣”」
火が俺の周囲を囲むように円陣を作る。
「そこからの脱出は不可能だ」
ハツネ父が言ったように跳躍だけで超えることは難しいくらいに火の壁は高かった。
間髪入れずに次の忍法を発動する。
「忍法“炎波”」
壁の炎が波のように揺れ出す。それは海岸に打ち付ける波のように迫ってくる。
俺は、顕現武装を切り替える。
「鷹」
中央に押し寄せる波から逃げるべく一気に背中の翼を羽ばたき上空に脱出する。
「逃げられたか」
逃げたはいいがどうしようか。空中にいても意味がないので一度地上に降りる。
「なら、これを使ってケリをつけよう」
今度は何をするのだろうか?
「忍法“鬼火”」
空中に青白い炎が出現する。怪談話とかでよく聞くような炎だった。
「今までの火と何か違うのですか?」
「斬ってみたらわかる」
言われるがままに剣で炎を斬る。
すると、炎は二つに分裂した。
「マジかよ」
ユラユラ燃えながらゆっくりと炎が迫る。
「さぁ、降参しろ。お前にその炎を遮るすべはない!」
とりあえず近づいてくる炎を斬って対処する。
こんなの水があれば絶対すぐに消せるのに。
「降参する気はありません」
「仕方ないこのまま炎を食らえ」
斬って対処していたために大量に増えた炎が迫ってくる。
里の人達は、
「ヤバイぞ」
「誰か止めろ!」
この忍法危険な技のようだ。
「逃げて! リュウ兄!」
いや、もう遅いんですけど。
回避出来ない距離に炎が迫る。
刹那、
「忍法“水流”」
大量の水が俺に降りかかってきた。そして、周りの炎をかき消す。
「冷た!」
周りで決闘を見ていた観客の中から女性が現れる。ハツネ母だ。
「ア、ナ、タ」
「キク、なんで邪魔を……」
「それはあなたがいけないからでしょう」
と、とりあえず助かったー。
忍法、奥が深いな。
まだまだ力が足りない。継続してやっていくしかないな。
「リュウ兄、大丈夫?」
「あぁ、問題ない」
今もハツネ母は、水の球体の中にハツネ父を閉じ込めている。
うわぁ、キツそう。
「すみませんね。うちの主人が迷惑を掛けて」
「いえ」
「ゴボッ……オデェハ……ビド、ゴボ……ベェンゾ」
「あなたは黙りなさい。上級忍術なんか使って。取り返しがつかなくなったらどうするのですか?」
「オマエニ……ハァヅネハ」
ハツネ母はさらに水の忍法でお仕置きする。
「あの人はほっておいて。リュウさん、まだまだ子どもですがハツネのことをよろしくお願いしますね」
元から断れないが。もし出来たとしても断れるはずがない。あのお仕置きされている父親を見ると。
「お母さん! わたしもう子どもじゃ」
ハツネ母がハツネの耳元で何かを囁く。
「そっ、そんなんじゃないよ!」
急にハツネの顔が赤くなる。
「頑張りなさい」
一体何を言われたのだろうか?
「さぁ、戻りますよ。あなた」
水球にハツネ父を閉じ込めたままハツネ母は戻って行った。
結局、その日は決闘をしたため里を出ることが出来ず。
次の日、当初、里に帰すはずだったがなんやかんやあってハツネと共にトレスに帰ることになった。
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