22話 忍者の里③
危なかったー。ほんと、あと数秒飛び出すのが遅かったら二人共あの世行きだっただろう。
「リュウ兄? 本物? だって、死んだって」
ペタペタとハツネが身体を触ってくる。
「本物だよ! 勝手に殺すなよ」
「リュウ兄ーー!」
ハツネは、抱えられている状態で胴を強く抱きしめてくる。
俺は、そっと頭を撫でる。その後、地上の様子を確認する。なぜかと言うとこの機に乗じてダンゴロウさんが里の人々の中に潜り込めたかどうかだ。ちょうど俺たちが着いた頃になんかカウントダウンが始まっていてそれもまさかハツネが処刑されかけているなんて思いにもよらなかった。本当はダンゴロウさんとやるつもりでいたが無視して勝手に出てきたためどうしているか心配だ。
「わからないな」
空中だと狙いの的なので地上に降り、抱き上げていたハツネを降ろす。
突然、魔族の男が一人話しかけてきた。
「私の楽しみを……あなたは……。あぁ! そいつと一緒にいたっていう奴ですか?」
「そうだけど」
「な~に邪魔してくれちゃってんの。久々にやる処刑なのにさ~」
魔族の男は、不服そうな顔をし言う。
ここは、しっかり言わないとな。
「邪魔して悪いと思うけど、こっちもこいつは大事な人なんで」
「リュ、リュウ兄何言っての!?」
「はぁ~、仕方ないですね。どうしましょうか」
魔族の男は、「う~ん」とあれこれ考えているようだ。
一体どんなことを言ってくるのだろうか?
数分後、
「じゃあ、私と殺りませんか?」
そう来たか。正直このまま帰ってくれると色々とありがたかったが、どうやら断ることも出来そうにないだろう。そのことを言った直後から「やりますよ」感が魔族の男から発せられていた。それはこちらにもピリピリと伝わってきた。
戦う他に選択肢はなさそうだ。
「あぁ」
「決まりですね」
俺は、隣にいるハツネに声を掛ける。
「ハツネ……」
声を掛けても反応しない。ハツネを見るとボケーとしていてどこかにトリップしているかのような感じだった。
「ハツネ!」
「あっ、はい!」
何回か声を掛けようやくこちらの世界に帰ってきたようだ。
「後ろに下がっといてくれない?」
「うん」
相手がどれくらいの強さなのだろうか。圧迫感などもなく普通な感じがするが殺ろうと言ってくるのだから強さには自信があるのだろう。
「それじゃ、こちらから」
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魔族の男は、距離を詰めてくる。そして、蹴りを入れてきた。
リュウは、瞬時に後方に引きつつ威力を逃がして守備する。
「反応はまあまあですね」
今度は逆にリュウが身体強化を発動し攻める。怒濤の連続攻撃、上、下、斜めと四方八方からランダムに攻め立てる。
それに対し、魔族の男は見切っているかのように無駄のない鮮やかな身体運びで攻撃を払う。
「くっ」
明らかに力の差があることは明確だろう。リュウもそれは感じているようだ。この男は唯のふざけた奴ではないことを。相手が反撃してきたことにより一度距離を取る。
「いいですね。でも~、まだ詰めが甘いですね。何って言ったらいいかな~、そう! 老けた赤子みたいな?」
「で、結局何が言いたいいんだ?」
リュウの頭の中では疑問符が浮かんでいることだろう。そんな表情をしている。
「どういう事かと言うと、雰囲気なんだよね」
「雰囲気?」
「そう。こう相対すると歴戦猛者的な雰囲気を感じるんだけどさ。感覚は悪くないんだけどなんか動きがね」
結局、男が言いたいことはリュウは戦闘の初心者だと言うことだろう。しかし、そのように言いつつも初心者であってそうでないものも感じ取っているのではないだろうか? 普通ならその人の戦闘経験と共に色々蓄積され雰囲気や動きも変わっていくものがどうやらリュウにはそこにズレが生じていてどこか違和感を感じているようだ。
魔族の男が話している間にもこのままでは攻めきることが出来ないと踏んだリュウは、
「顕現武装、不死王」
話していた魔族の男の目の色が突然変わる。
「それは何ですか? まだ隠し玉があったんですね!」
目は輝いているように見える。
「いくぞ!」
リュウは、再度接近し大鎌によって薙ぎ払う。唯の攻撃ではない。漆黒の刃が払うと同時に放たれる。
ここで驚いたことに魔族の男は、その攻撃を素手で防いでいた。それも片手で器用に刃を摘まんでいた。刃の威力で少しだけ後に押すことだけであっけなく漆黒の刃は砕かれる。
「マジかよ」
今度は、魔力を溜め始める。その魔力は全身から集められて全て大鎌へと流れる。まわりでは渦を巻くように風が吹きあふれる。おそらくかなりの量を溜めているに違いない。
「終焉審判!」
練り込められた魔力が球体となり放たれた。草木、地面の土を吸い込みながら魔族の男へと迫る。
「ハハハハハ!」
今度の攻撃は今までとは違って凄い威力のはずなのに魔族の男はこれまで以上の不敵な笑みをこぼしていた。
そして、黒の球体が魔族の男に直撃した瞬間、そこを中心にし周りを巻き込みながら大きく膨張する。その光景はまるで全てを無へと返すブラックホールのようだった。
「はぁ、はぁ、はっ」
球体が消えた後、粉々のミンチにされた草木や物、周りにいて巻き込まれた魔族達、そして、中央には倒れている魔族の男。
それを見ていた里の人々はこの光景に歓声を上げ始める。
さすがにこの状態にリュウも倒したと思い安堵のため息をつく。
「リュウ兄!」
ハツネは、勢いよくリュウに抱きつく。
まだ残っている魔族達は「そんな!」という驚きの表情を浮かべていた。
それぞれが反応を示していた時、
「いやいや。今のはさすがにヤバかったね」
その声に反応しリュウは、攻撃後の中央を見る。
そこには無傷でないにせよあの魔族の男がよろよろと立ち上がり身体の凝りをほぐすような仕草をしていた。
周りの魔族達はこの男が生きていたことに個々に声を上げ始める。
「バケモノかよ」
これにはさすがにリュウも絶望の淵へと追い込まれているだろう。さっき放った攻撃が今出せる最大の技だった。しかし、無傷でないにせよ魔族の男はそれを食らってもなお余裕の感じが見てとれた。
「さて、そろそろ帰りますか」
一体どういうことだろうか。急に魔族の男は生き残っている部下に「撤収~、撤収~」と命令を掛ける。
「どういうつもりだ?」
この撤収行動にリュウは拍子抜けになっていることだろう。
「帰るよ。良い時間つぶしになったし。それに、あちらで人々も全員解放されちゃっているしね」
どうやら里の人々を救出作戦がバレていたようだ。
リュウは気づいていなかったが、ハツネを助けていたあの時ダンゴロウは隙を読んで潜り込んでいたらしい。周りで見張っている魔族達はまったく気づいていなかったようだがこの男だけは気づいていたようだ。
「このまま見逃しても良いのか? お前達の目的は殺すことじゃなかったのか?」
「もちろんそのつもりだったけど……今回はいいや。そのかわりに次会うときを楽しみにしているよ」
そう言って生き残った魔族達と共に里から出て行った。
リュウは、命を拾ったことにはほっとしたようだが、それ以上に力の差を見せつけられただけでなく本気すら出していないような底知れない魔族の男に恐怖感を覚えたようだった。
ここまでで三章は終わりです。「キリが悪い」と感じる人もおられると思います。すいません。
ここで一旦修正とこれ以降の話について考え直そうと思います。次回から四章を始める予定でいます。
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