19話 スイーツは正義
陰影の里に向かう途中だけどその間にある町に寄っている。ついでなので腹ごしらえもしようということになり今は店を探している。
「ハツネ、どんなのが食べてたい?」
「う~ん、どんなのがあるのかな?」
そりゃ、そうなるよね。ガッツリいくなら肉だろ。あっさりなら魚かな? それにしてもこの世界は店選びが非常に難しい。飲食店の看板は出ているけどメニューは中に入らないと分からないんだよな。ほんと元の世界にある食品のサンプルはよく出来ていて素晴らしいなぁと思うよ。この町の人に聞いてみるしかないか。俺は、町を歩いている人に聞いてみる。
「すいません。お聞きしたいことがあるのですが」
「いいけど、なんだ?」
「この町で美味しい料理を出すおすすめのお店はありますか?」
「そうだな……やっぱりあそこかな」
町の人は、指を指してお店を教えてくれた。
「ありがとうございます」
心優しい人で良かった。
それでは行くとしますか。
「ハツネ、あのお店に行こう」
「うん!」
お店の前に着く。かなり人気の店なのだろう行列が出来ていた。
「かなり時間が掛かりそうだね」
「他の店に変えるか?」
「いや、ここにする」
一時間弱列に並び待ちようやく入ることが出来た。
「何にしようかな」
席に座り店員が持ってきたメニューを開く。肉、魚、その他諸々の素材を使った生や焼く料理が書かれていた。
「これだけ多いと悩むな~」
ハツネもかなり悩んでいるようだ。
ようやく決まり注文をした。
「ねぇ~、リュウ兄が最後に頼んだのってなに?」
「来てからのお楽しみ」
「えぇ~、いいじゃん教えてよ」
メニューをパラパラめくっているときあるページに気を取られた。そこに書かれている内容を見たとき「これは!」と驚きと興味が沸いた。俺の予想が正しければあの料理ではないかと。もしそうなら異世界で食べれるなんてこれほど嬉しいことはない。だって俺の大好物だからな。
数十分後、
「失礼いたします。ご注文の品です!」
店員が料理を持ってきた。俺が頼んだのはもちろん肉を使った料理だ。それもドラゴンの肉を使ったステーキだ。ハツネはパスタの麺、具材には魚を使っている料理だ。
「うまそう!」
「はやく、はやく食べようよ!」
「そうだな」
「「いただきます!!」」
肉にナイフを入れる。分厚いから硬いと思っていたが実際は違いとても柔らかくすんなりと切れていく。また、切った断面からは肉汁が溢れ出てきて肉の香りが一層増した。フォークを使い切った肉を口の中へと運ぶ。
「やば、なにこれ」
こんなの元の世界じゃ絶対食べれない。口に入れたとたんとろけてなくなってしまった。一瞬だ、もうなくなってしまったぞ。高級肉ってこういう感じなのだろうか?
「リュウ兄、わたしのもあげるから少し食べさせて」
「いいよ」
俺は、肉の一切れをハツネの口に運ぶ。
「ほい」
ほしいと言ったから運んだのにハツネは食べようとしない。
「どうした?」
「うんうん、なんでもない」
なぜか顔を赤くしながらハツネは、肉を食べた。
「………………」
「イマイチだったか?」
「おいしいよ」
「それじゃ今度はハツネのをもらうよ」
フォークで巻き取ろうとしたらハツネが、
「食べさせてあげる」
「おっ、悪いなそれじゃお言葉に甘えて」
ハツネがパスタを巻き取りそれを口に運んでくる。
「うまいな、この店はずれ料理ないんじゃねぇか?」
「そっ、そうだね」
ハツネの声のトーンが若干高くなる。どうしたんだろうさっきから調子でも悪いのかな顔も赤いし。
「大丈夫か?」
「なにが?」
「いや、顔が赤いし」
「全然大丈夫だよ」
「そうか、しんどかったら言えよ」
「うん」
その後、料理を食べ終わりとても満足し堪能した。いよいよあれだな。俺は、店員に例の料理を持ってきてもらう。
「お待たせしました。フルーツパフェでございます」
キター! やはり俺の予想通りだ。容器にはたくさんの果物と生クリームとアイスクリームが入っていているだろう。あくまで見た目の判断だ。元の世界と見た目には違いはない。問題は味、食べてみないと分からない。
「とても美味しそうだね」
ハツネもかなり興味を示しているようだ。パフェに釘付けだ。
「よし、食べるか」
パフェを食べる時に使われるロングスプーンで掘り出して口へと運ぶ。うん、良い! これは間違いなくパフェだ。みずみずしく甘いフルーツとしっかり甘さを控えめにして合わせた生クリーム、そして、冷たいアイスクリーム。久々に食べる味だ。
その時、俺はふと思い出すあいつらはどうしているのかなとやっぱり何も言わずに来たのはミスったかな。まぁ、これが終わったら帰るし心配する必要はないか。
「どうして泣いているの?」
「んっ?」
どうやら涙を流していたらしい。故郷の味を食べてよく泣いている人がいるがこういう気持ちを持っているのだろうか。ただ、パフェで……。
「ちょっと思い出してな」
「そうなんだ……」
ハツネはそれだけを聞いてこれ以上話には踏み込んで来なかった。
「パフェ最強だわ」
その後、ハツネも食べて「美味しい何これ!」とパフェのうまさに満足していた。やはりな、スイーツは素晴らしいむしろこれで世界が救えるのではないか。スイーツは正義! 飛躍しすぎたがそれほどこのパフェは俺に影響を与えた物だったんだろう。
「さて、行くとしますか」
「うん! めっちゃ美味しかった!」
お会計を済ませようと席を立ち上がり行こうとしていた時それは突然起きた。
「おい! …………」
なんだろう、トラブルでも起きたのだろうか? ある一人の客が女性店員に対して何かを言っているようだ。怒っている相手の服装を見ても金持ちそうな雰囲気がかなり出ている。それと身体は太っている。
「何かあったんですか?」
近くのテーブルで食事をしていた人に聞いてみる。
「なんかどこかの偉い人が料理に関して文句を言っているみたいらしいぜ」
なにー! この料理に対して文句だと! どんだけわがままなんだここの料理のどこが不味いんだ。
客に話しを聞いている間も事態は進む。怒っているわがまま太っちょ野郎が女性店員を平手打ちで打った。しかし、周りで見ている客達は怯えているかのように誰もが見て見ぬふりをしていた。
「どうして誰も助けないんだ?」
「そりゃ、お前、相手は格の高い人だ。抵抗したら何をされるか分からないだろう? だからみんな手を出せない」
これはあれか定番のやつか。そんなこと思っている場合じゃないな。今度は控えている護衛らしき人に剣を借りて女性店員を斬り殺そうとした。
俺は、瞬時に店内を駆け抜けて間一髪のところでその振り下ろしていた剣を素手で受け止める。
「おい! 何をする」
「それはこっちのセリフだ。なに斬り殺そうとしてんだ」
「それは当然ここの店が不味い料理を余に出したからに決まっておろう」
そう言ってそいつは皿に余っていた料理の残りを床に投げ捨てた。
こいつ、なんてことをしやがる。俺の中で怒りの感情が沸き上がってきた。この騒ぎに気づきここの料理人も厨房から出てきた。必死に頭を下げ許しを請うがこのクソ太っちょ野郎は文句をたらたらと言う。 そして、
「そうだな、余の邪魔をしたお前、それとここの料理人は処刑だ。あとそこの店員もな」
いい加減に俺も堪忍袋の緒が切れる。
「おい、太っちょ野郎! さっきからうるさいぞ、だまれ。」
「余にそんなことを申すか。今すぐ処刑だ、処刑! おい、あいつを殺せ!」
ニヤニヤと気持ち悪い笑みを浮かべながら護衛の奴に指示を出す。
命令された護衛は剣を振りかざすが、俺は、身体強化を発動し護衛の剣より速く拳で瞬殺する。
「お、お前ーー!」
俺は、こいつを睨み威圧する。
すると、太っちょ野郎はブルブルと震え口から泡を吹き気絶した。そして、こいつの家来が「ー様!」と言って回収し店から出て行った。
ふぅ~、まったくとんだクソ野郎に出くわしたもんだ。
あいつが出て行ったあと少し沈黙が続いたが騒動を見ていた客達が徐々に「よくやった!」や「あいつ凄いぞ!」など口々に声を上げていた。
「大丈夫ですか?」
俺は、あいつに叩かれた女性店員に尋ねる。
「はい、大丈夫です。ありがとうございます」
「そうか、なら良かった。ハツネ行こうか」
「うん!」
俺は、騒ぎが広まる前に店を荒らしてすまないと謝り、代金を払って店を出た。
その後、町中を歩いているときハツネが、
「リュウ兄、手、ケガしてるでしょ」
「いや、してないけど」
「いいから見せて」
よく見てるな。ここは素直になりハツネに手を治療してもらう。
「ありがとう」
「いい、これからはケガしたらちゃんと見せるんだよ!」
ハツネに少々注意されたのだった。
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