18話 帰るはずだったが……
17話にてハツネの年齢を変更しました。
ハツネが完治し、今日、俺は、トレスに帰る。ここでハツネとはお別れだ。
「じゃーな。また会えたらいいな」
俺は、別れの挨拶をして行こうとする。しかし、後ろから服の裾を掴まれる。不意に捕まれたことによって少しこけそうになる。
「どうした?」
「どうしたじゃないよ。なんで帰るの?」
何を言っているのだろうか。その間も俺は、ハツネに引っ張られて戻される。
「そりゃ、ハツネも治ったし帰るに決まってるだろ。というか、ハツネのことはギルドに任せて……」
「一緒に来てくれるって言ってたじゃん!」
はて、そのようなこと言ったかな。全く記憶にないんですけど。
「言ってないだろ。いつ言ったよ?」
「そ、それはあれだよ……あれ……」
初めは面と向かって言っていたが徐々にハツネの視線は言葉を紡ぐことにつれて下に行く。
「な、やっぱり言ってないだろ」
「いった、いったもん!」
ハツネは俯き涙を流しながらも俺にお願いしてくる。そんな姿を見ると同情心で「一緒に行ってやる」と言いそうになる。けれども、今の俺よりもギルドに頼れる人は絶対に居るはずだ。俺なんかよりもっと……。
「うぅ……。どうしてもダメなの」
「ハツネ……」
端から見たらお別れという悲しいことだなぁと思われることだと言えるのではないだろうか。
しかし、
「少しよろしいでしょうか?」
「はい」
どうしたんだろうか?
受付嬢が話しかけてきた。
「あの~ですね。非常に申し上げにくいのですか。そちらの"ハツネちゃんを故郷に帰す"という依頼、募集を掛けたのですがどの人も手一杯で……」
そうなのか。まぁ、みんな忙しいからだろう。魔物も魔王の影響により活性化しているし、でもなんでそれを俺に言うのだろうか。まさか、まさかね。
「リュウ様、このまま依頼を受けてもらえませんか?」
「本当に他はいないのですか?」
おかしいだろ。いくら足りないからって……。
「いるには居るのですがハツネちゃんの故郷付近は冒険者ランクBが推奨されていましてそれ以下は依頼に関しては受けることが出来なくて」
そんなこと初めて聞いたぞ。B以上って、ハツネよ、一体どんな所に住んでいるんだ?
「そうですか」
この会話中、ハツネの涙は止まりキョトンとした顔で何が起きているのか。話している俺たちの顔を交互に見ている。把握出来ていないようだ。
「今回ちょうどリュウ様はBランクになられましたので、もう一度言います。受けてもらえますか?」
これは腹をくくるしかないか。大丈夫だろうか。心配ごとしか出てこない。
「はい、わかりました」
「ありがとうございます」
会話が気になるのだろうハツネが聞いてくる。
「ねぇ、どういうこと?」
受付嬢がその質問に対して答える。
「ハツネちゃん、リュウ様があなたを故郷まで送ることになったからもう悲しむことはないよ。故郷までだけど」
「ほんとう?」
「うん、本当だよ」
ハツネが嬉しそうな表情をしてこちらを向き確認してくる。
「ほんとうにリュウ兄と一緒に行けるの?」
「あぁ、どうやらそうなってしまったらしい」
ハツネが飛びついてくる。
「やったー!」
こうして俺は、ハツネの故郷に帰す依頼を受けることになった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
陰影の里へ向かうため現在移動中。
「ねぇ、どれくらいで着きそう?」
「早くて五日程度かかるらしい」
「そうなんだ!」
ハツネは、スキップをしながら歩き進みそして、聞いた質問の返答をする。とても楽しそうだ。この依頼を受けたことに対して不安な所もあるが喜びに満ちたハツネの表情を見ているとなんとしても無事に里まで帰さないと。俺は、決意する。
そうやって楽しく会話をしながら歩いていると、
「ガルルゥゥ」
三体の狼が現れた。姿は黒狼に似ているが違う点で言えば毛並みが灰色な所だ。大きさも少しこっちの方が大きい。
「灰狼か」
この相手ならハツネを守りながらでも全く問題はないな。ただ、魔喰で取り込めないのは残念なことだ。初めて会う魔物だから、もう一人戦える人が居ればいいんだけどな。
「まぁ、しょうがないな。ハツネ……」
俺は、ハツネに後ろに下がってもらって安全を確保し戦うために言うと思っていたら、
「リュウ兄、ここはわたしがやる」
「なんで? ハツネは戦えないだろう」
「わたし戦えるよ。見といて!」
そう言うとハツネは俺の話を聞かず灰狼に向かって行った。
「ちょ、おい!」
もちろん丸腰で戦いに行ったのではない。町を出る時に安全のためにハツネには護身用のための装備を準備した。店に着くやいなやハツネは自分で装備を選び始めた。俺が勧めた装備は全て却下されてしまった。まぁ、今では俺も装備は勧められても自分に合わなかったら買わないからハツネ自身で選ばせた。
「それにしても軽装備だよな。人のことは言えないが」
その時購入した装備は機動力に優れた軽装備なものばかりだった。武器は短剣だ。これを選んでいるときはとても不満ばかり言い漏らしていたなぁ。
「それよりも、いつでも助けに行けるようにしておかないと」
俺は、いつでも行けるように顕現武装を発動し準備する。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
一方、灰狼に向かって行ったハツネはというと、
「よーし! リュウ兄に良いところ見せちゃうもんね」
とても張り切っていた。
風のごとく突っ込んでいく。そして、腰に備えている短剣を引き抜き灰狼を攻める。ハツネの戦闘は、素早い動きで灰狼達を翻弄し攻撃を加えていくというものだった。一撃は浅いものの早い動きから何度も攻撃をする。
いつまでもハツネに有利な展開ではない。灰狼達も徐々に慣れていき三体ともが息の合った攻撃をしてくる。
「そう簡単にはいかないか」
態勢を整えるのだろうか? ハツネは一旦距離を取る。そして、まるで某アニメの忍者がやっていることと同じようにハツネは手を使い印を結び始めた。
「いくよ。忍法"影針"の術」
術を発動するとハツネの影は浮かび上がり先の尖った針のような形状に変わり灰狼達を襲う。灰狼達はそれを避けるが、その影針は尚も追跡する。
「それはどこまでも追い続けるよ」
影針は次第に灰狼達を追い込む。ハツネは、ただ無作為に攻撃しているのではなく灰狼達がもつれ合うのを狙っていた。
そして、
「今だ!」
ある一本の影針の攻撃によりハツネが考え狙っていたことが起きて灰狼達がもつれ合った。ハツネは、そこを逃さず全ての影針で一斉に串刺しにした。
「よし。すごいでしょ! リュウ兄!」
ハツネは、リュウの方を向き笑顔でピースサインをした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
俺は、唯々驚くことしか出来ない。だってそうだろう。正直普通の少女だと思っていた。けれど、何ですか今の? 凄すぎでしょ。というかむしろ守るより俺が守られる立場に近いんじゃないのか。人を見た目で判断してはいけないな。
「なんか生で忍者見たって感じだな。動きもとても素早かったし。余裕だったんだろうか? 笑顔でピースしているし」
ハツネが走って戻ってきた。
「どうだっ……た!?」
嬉しそうな表情から一変して驚嘆の表情になる。
どうしたのだろうか?
「どうした?」
「どうしたじゃないよ! なんで耳……尻尾まで?!」
そういえば顕現武装は初めて見せるな。
「これは俺の能力」
「こんなこと一度も言ってなかったじゃん」
「そりゃ、これは天職の力じゃなくてスキルによるものだからな」
まじまじとハツネは俺の身体を見てくる。すると、もじもじさせながら、
「……ても……いい?」
よく聞き取れないな。
「なんて?」
「……さわ……っても……いい?」
「何をさわるって?」
「耳と尻尾……」
「別に良いけど」
初めはそっと触れ、次第に揉んだり撫でたりした。顕現武装はあくまで武装なので触れられても感覚はない身体から生えているのに不思議だ。でも、感覚はないけどなんか変な感じがする。
その後、お触りはハツネが満足するまで続いたのであった。
誤字、脱字、評価等(感想あれば)よろしくお願いします。




