17話 昇格試験③
この状況は予想してなかった。
少女は、気を失っていた。ボロボロの麻の服を着せられていて暗がりでよく見えないが衰弱しているようにも見える。手足は鎖で繋がれていた。
「マジですか」
とりあえず少女の安否を確認する。
「あの~、だいじょうぶですか?」
少女からの返答はなかった。
「これはマズイだろ」
俺は、身体強化を発動し檻の扉をぶっ壊して中に入る。
少女を抱き上げて檻から出て状態を確認する。
「脈もあるし心臓もしっかり動いているな。かなり衰弱しているな。何日間監禁されていたんだ? これはちゃんと医者に診せないと」
俺は、大急ぎでギルドに戻ることにした。
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ギルド内は大いに賑わっていた。
とりあえず俺は、受付嬢の元へ行き指示を仰ぐことにした。
「すいません。ちょっと先に行かせて下さい」
カウンターに並んでいた人達から罵声を浴びせられる。
けれども、そんなことは気にせず俺は突き進む。
「あら、あなたは先ほどの早いですね。でも、ダメですよ!! 順番を抜かしては……」
ちょうど、俺が依頼を受理したときに対応してくれた受付嬢だった。
注意されるが、
「そんなことを言っている場合じゃないんです。この子を医者に診てほしい!!」
背負っている少女を受付嬢に見せる。
「どうしたんですか?! かなり酷いじゃない!」
「詳しいことは後で話します。それよりも早く医者に」
「えぇ、わかったわ」
受付嬢は慌ただしく準備を始めた。
これで何とか診てもらえそうだな。無事に目を覚ませばいいけど。
医者が少女を診察している間、受付嬢に今回の依頼を報告していた。
「その奥に盗賊達が奪った物があったんですけどその中で布が被せてある物があったので取ってみると檻に閉じ込められたさっきの少女がいたんですよ」
「なるほど……そうでしたか。それで盗賊達はどうなさいましたか?」
「盗賊のボスと部下数名は捕縛出来ず殺りました。気絶させていた残りの部下は魔道具で拘束しておきました。」
この場合どう伝えていいかよく分からないからオブラートに包んで言ってみた。というかこれ、包んでいると言えるのだろうか?
「わかりました。こちらで事後処理を致します。その結果次第で昇格かそうでないかをお伝え致します。数日待ってもらえますか? 聞いた感じだと多分昇格出来ると思いますが」
こういうことは日常茶飯事なのだろう。淡々と受付嬢は話しを進めた。
「はい、待ちます。あの少女のことも心配ですし」
「そうですね。大事に至らなければいいのですけど」
その後、少女の治療が無事に終わった。外傷があるものの酷いものではないようだ。監禁で食事があまり与えられていなかったことによる栄養失調と疲労で弱っていたらしい。
結果を待ちつつ少女を看病することにした。けれど、することといっても目を覚ますの待つことしか出来ないが。
二日後、少女は目を覚ました。
「ここは?」
「おっ! 目覚めた。おはよう」
少し戸惑いが見えたので少女を刺激しないよう優しく問いかける。
少女は起き、掛けていた布団を身に引き寄せベットの隅に逃げる。
「ごめんなさい。もうなにもしないのでゆるしてください」
声は、細々しおびえているようで身体を震わせていた。相当あいつらに酷い扱いをされたのだろう。
「落ち着いて、周りをよく見て! ここは冒険者ギルドだよ」
自身を被せていた布団をおそるおそるゆっくりと下げ少女は周りを見渡す。周りの状況が違うことにようやく気づいたようだ。
「とにかく、ここはあの場所じゃないから安心していいよ」
落ち着きを取り戻し少女は聞いてきた。
「あなたが助けてくれたんですか」
「まぁ、そうだね」
「ありがとうございます」
少女はお辞儀をしてお礼を言う。
「たまたまだよ」
俺は、この子のことを知る必要があるためいろいろ質問をすることにした。
「質問してもいいかな。俺の名前はリュウ。君は?」
「ハツネです」
質問を続ける。年齢や出身地この子の容姿の特徴、捕まった経緯などを用紙に書き込んでいった。なんでそんなことをする必要があるかというと少女は盗賊に捕まっていたのでもしかすると捜索依頼が出ているかもしれないから受付嬢から聞くように言われた。
受付嬢に質問内容を報告したが少女に関する依頼は出ていないようだ。
それから、昇格試験の結果も出た。もちろん、余裕でBランクになった。
彼女、ハツネも目も覚ましたしトレスに帰ろうと思ってそのことをハツネに話すと、もうちょっと一緒に居てとうるうるした目で懇願された。この子の年齢は十一歳、こっちの世界で言う小学生に当たる年齢で容姿はまだ若干幼さが残っていて可愛いらしさがあった。そんな子のお願いに対抗出来るはずがない。また、ギルドの方に任せて故郷に帰そうとしてもハツネは、まだ体調が安定していなかったため出来なかった。まぁ、これといって急ぐ必要もなかったので許可が出るまで一緒に居ることになった。
「リュウ兄はトレスっていう町に住んでいるんだ」
「そうだよ」
まずは、定番の質問からで「どこに住んでいるか?」という話から始めたが、
「じゃあ、わたしも体調が戻ったらリュウ兄と一緒に行くね!」
「いや、故郷の人達だって心配してるだろ」
「大丈夫だよ、たぶん……」
あやふやな感じがしたのでそこを攻めたらハツネが「行きたい、行きたい」と駄々をこね始めた。駄々をこねる仕草も可愛い! が、それには屈しない。さすがに攫われていたから絶対に心配されてるだろ。
「ダメだ。故郷に帰す」
「えぇ~いいじゃん」
うるうる目をパチパチさせ胸の前で手を組みお願いされても……。あぁーダメだ。ついつい「OK!!」をだしてしまいそうだ。
「ダメなものはダメ」
「ケチ」
ハツネは、納得いかないようだ。頬を膨らまして不満げな表情を作る。
俺は、負けそうになったがなんとか耐えた。
話題を変え新しい質問をする。
「ハツネの故郷はどんなところなんだ?」
この前目覚めた際、用紙にまとめた中で出身地が『陰影の里』と聞いた。この世界では村や町、国と呼ばれているのに里を聞いたのは初めてのことだった。
「ニンジャって知ってる?」
ニンジャだって! ニンジャって忍者のことだよな絶対そうだろう。
「あってるか分からないけど、クナイや手裏剣を使ったりするのか?」
「そう! なんで知ってるの?」
ここで俺は、今まで向こうの世界のことは言わないようにしていたのに興味がそそられるままついうっかり自分の記憶にある忍者のことを話す。
「そりゃ、忍者といえば時代劇とかでも出てきているし。あとは、とても素早くて術を発動するときとか"忍法……術!"言ったり、服装も隠密性に優れているんだろ? 女性だとくノ一とか呼ばれているのかな?」
あくまで俺が知っている範囲だからどうだろう?
言い終わってハツネを見るとポカンと惚けた表情をしていた。
彼女の顔近くで手を振る。
「おーい。大丈夫?」
フリーズ状態から復活して、
「はっ!? なんで? なんでそんなに知っているの? どこで聞いたの? まさか、まさか!?」
そんなに驚くようなことなのだろうか。
「もしかしてハットリ様の……」
ハットリ様? 誰ですか。
「ハットリって誰?」
「そんなはず絶対ない。里の内部だけしか広まってないはずなのに」
あぁでもない、こうでもないとブツブツ一人で言っている。
「あのさぁ、気になるんだけど、さっきから口にしているハットリって誰なの?」
「あっ、はい」
ハツネは深呼吸して落ち着きを取り戻して驚愕の一言を放った。
「ハットリ様はですね。勇者の一人でそして、初代里長です」
勇者だって!? ニンジャってまさかの異世界転移者が広めたものだったのか!
「マジで」
「まじです。もしかしてリュウ兄は……」
ここでようやく俺は気づいた。ついついしゃべってしまったばっかりに転移者だということがばれてしまったのではないか。まぁ、ばれたからといって問題は特にないが、これからどうなるんだろうか? 若干、不安な気持ちが生まれてきたが、ハツネはこう言った。
「ハットリ様の隠し子ね」
「それはない」
「それならなんでそんなに詳しいの?」
言葉が詰まって出てこない。結局、
「そっ、それはあれだよ。俺、冒険者だからさ、たまたま耳にしたんだよ」
うんうん、これが今、俺に出来る最善の言い訳だ。
「そうなんだ。わたしの勘違いかぁ~」
ふぅ~、なんとか通じたみたいだ。これはもしかするとこの世界には勇者が伝えたものが多く存在するようだな。
その後は和やかに会話は進んでいった。
あっさり昇格試験が終わってしまった……。
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