16話 昇格試験②
「冒険者様ありがとうございました。こちらが今回の依頼報酬でございます」
「はい。こちらこそおかげで早く来ることが出来ました」
「これも何かの縁だと思います。またお会いしましょう」
依頼を終え商人さんと別れた俺は、町を観光しつつギルドに向かうことにした。
「それにしても賑やかな町だな。王国に近いだけあって人も多いな」
俺が歩いているのはこの町の市場だ。所々に出店が出ていてたくさんの人で賑わっている。また、そこら中から食欲をそそるような食べ物の匂いも広がっている。
「ちょうど腹も空いたし何か食べようかな。ガッツリといきたい気分だ」
そんな空腹を満たせるものを探していると、
「へぃ! そこのお兄さん、うちの肉食べていかない?」
声を掛けられてその店の前で立ち止まる。
中からはとても肉香ばしい匂いがする。
「これは何て言う料理ですか?」
「風船豚のタレ焼きだよ」
焼いているところを見る。これでもかというくらいにこんがりの分厚い肉に匂いだけで食欲をそそらせるタレがかけられる。
めっちゃ美味しそう!
「これ一つ下さい!」
「あいよ」
その場で我慢できず受け取ったらすぐにかぶりついた。
「うめぇーー!」
噛むたび肉汁があふれ出てきてタレもこの肉の脂濃さに負けず調和が保たれていた。そして、量も多いので空腹が満たされていく。
「うまいだろ! また食べに来てくれや」
「はい! また来ます」
風船豚に満足しやる気が出てきたところでギルドに着いた。
ギルド内はとても混んでいた。
「トレスとは大違いだな」
カウンターへ向かい昇格試験について訪ねる。
「リュウ様ですね。少々お待ちください。こちらが今回のBランク昇格試験の内容でございます」
改めて依頼内容を確認する。トレスで聞いたのと違いはないな。場所もこの近くの森か。
「こちらが拘束用魔道具でございます」
渡されたのは腕輪サイズのリングだった。
「スイッチを入れますと起動します」
受付嬢が魔道具のスイッチを入れる。するとリングは大きく広がった。
「捕縛可能な盗賊はこれで一気に拘束して下さい。一度拘束してしまえば逃げることは難しいので」
なんて便利なんだろう。こんなのあれば日本の警察も簡単に逮捕できるなぁ。俺は魔法の凄さに改めて気づかされたのだった。
「何か質問はございますか?」
「ありません」
「依頼が終わりましたらギルドに報告して下さい」
「わかりました」
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現在、町の近くの森。
盗賊のアジトを捜索している。いろいろと魔物が出てくるが手に負えないほど強くもないので難なく倒していた。ただ、一人だと魔喰を使っている間に隙が出てくるので使えない。トレスでは見ない魔物もいるので非常に残念だ。
向こうから人の声が聞こえた。
「だるいよな」
「あぁ、まったくだ。けれど、今回の取引が一段落したら当分は楽に出来るぜ!」
俺は、茂みからバレないように覗き盗み聞きをする。
「情報通りだ」
目の前は断崖絶壁の岩でそこに空いている横穴の前で見張りをしているであろう盗賊が二人話をしていた。
「それにしてもよく捕まえることが出来たよな」
「相手があれだったしな」
さすがにすべてを聞き取ることは距離も離れていたので難しいようだ。
何かを捕ったらしいな。財宝か何かかな?
人数を把握するため『索敵』を発動する。
「人数は約三十人ってところかな。外に二人で他は全員中にいるようだな」
さて、やるとしますか。不安な気持ちがあるけれども息を整え加速力のある黒狼の顕現武装を発動する。
敵の隙を突くため一気に加速でまずは見張りの二人に仕掛ける。
「なっ、何者だ!」
「くっ、こいつ」
奇襲に成功し即座に殴り気絶させる。こいつらが叫んだため中の奴らも異変を感じ声が聞こえ始めた。
「あとは中の奴らだな」
俺は横穴の中へと入る。
「何者だ!」
中にいる奴らも臨戦態勢を整えていた。
特に名乗る気もないので速攻を仕掛ける。
「くっ、こいつ獣人族か!」
どうやらあちらさんは勘違いをしているようだ。
そんなこと気にすることなく一人また一人と気絶させていく。こちらの動きには全然対応出来ていないようにも見えた。
「この! 獣人風情がー!」
やっぱり相手する奴ら全員が俺を獣人と間違えている。穴の中は松明が灯されているとは言え細かい所まで視認出来ていない。それに突然の奇襲で相手の容姿を確認してる場合ではないだろう。
盗賊の数も残り十人近くになったところで、
「おいおい、なんだこりゃ。てめぇか? これをやったのは、って獣人か。こりゃ高く売れそうだな」
どうやら親玉の登場らしい。
親玉も勘違いしているようだ。
「あぁ、そうだけど」
「「「「「親分!!!!!」」」」」
「おい、お前らさっさとこいつを片付けるぞ!」
盗賊の頭は両手に短剣を構え攻めてきた。
俺はその攻撃に対し黒爪で応戦する。相手は他の奴らとは違いかなりの手練れのようだ。
「やるな。だけど」
一対一なら遅れは取らないはずだ。ただ、残り数人の奴らとコンビネーションでしてくるため少々厄介だ。
「それなりにはやるようだな。しかし、てめぇには弱点があるようだ」
弱点?
その思っていることが表情に出ていたようだ。
「気づかないようだな。さっきから俺たちに対する攻撃は急所を狙えるはずなのにそこを外して気絶を狙ってる。あくまで俺たちの捕獲がメインってところか?」
「あぁ、そうだけどそれが何か?」
それのどこが悪いこっちは一応捕獲も依頼内容に含まれているのだから当然じゃん。
「あまいあますぎる。狙えるときに狙わないと命取りになるぞ」
盗賊の頭は、素早い連続攻撃で攻め立てる。
俺もそれを捌き、隙を狙う。盗賊の頭の気絶させることの出来る一撃が決まろうとした寸前奴は不敵な笑みを浮かべた。
刹那、俺の本能は嫌な雰囲気を感じ取った。
そして、
「おっ、おや……ぶ、ん。なん……で……」
奴は部下を盾にして身代わりとした。
不意を突かれた俺はそのまま奴のナイフによる攻撃を食らう。
「くっ……、仲間じゃなかったのか?」
「仲間だけどそれが何か? ボスの危機を守るそれも立派な仲間としての役割だ」
狂ってやがる。
「それは仲間とは言えないだろ!」
盗賊の頭は、嘲笑い。そして、否定してきた。
「てめぇはやはり考えがあまい! この世界で生き残るには殺すか殺されるかだーー!」
さらに追い打ちを掛けてきた。
その攻撃を今までと同様に捌く。
「だからなぁ、使えるものは何だって使うんだよ!」
さっきよりも攻撃の刃がより一層鋭くなる。
これがこの世界の普通なのか。俺はどうしたらいい。奴らを殺すのか、人の命を奪っていいのか。いや、依頼では一応出来たら捕獲だった。なら、殺す必要はないんじゃないのか? 俺の心の中で善悪が葛藤する。
「鈍くなってんぞ!」
この緊迫した攻防の中で一瞬の迷いが生み出すものは自分の命を危険に曝すことだ。
俺は、そんな戦いの最中に殺すという行為に迷いが生じてしまった。
そんな動揺の隙を奴らに狙われる。
「おいおい、こりゃ完全に終わりだな。お前ら一斉に殺るぞ!」
「「「おう!!!」」」
残りの部下と頭による一斉攻撃が目前に迫る。
どうする。やらなきゃこっちが殺される。
"ドクン"
胸の鼓動が大きく振動する。
ふと、空耳なのだろうか? 何かの声が聞こえる。
"……ナヤムナ……コロセ……"
上手く聞き取れないが途切れて聞こえてきた。
聞こえなくなり意識は振り下ろされているナイフに向き、咄嗟に黒爪で防ぐ。
「ちっ」
これで決まると思っていた盗賊の頭はリュウが防いだと同時に発せられた圧力に危険を察知し部下に指示し距離を取る。
リュウは、黒狼の武装を解き、別の顕現武装を発動した。
「不死王」
「こいつは一体どういうことだ。獣人じゃないのか?」
盗賊の頭は焦り始める。さっきまでの弱々しかった雰囲気が急に変わった。生物的本能が警笛を鳴らす。
「こいつはヤバイ! お前ら逃げるぞ!」
意識が残っている盗賊達は逃走を図る。
「どこに行く?」
リュウを翻弄し逃げようとするが、それも虚しく一人また一人と無惨にその命を大鎌により刈り取られていく。
気がつけば盗賊の頭だけになり、
「バケモノかよ。この死神がぁぁぁーーー!」
さっきまでの冷静な判断はなくなり闇雲に突っ込んできた。
リュウは、不敵な笑みを浮かべ大鎌で首を撥ね飛ばした。
武装を解く。
「何だったんだ今の?」
俺は、不思議に思う。何かが聞こえたと思ったら急に迷いや不安が消え頭の中がスッキリした。敵を殺しているはずなのに何も感じなくなった。少し違うな感じないというより罪悪感などの感情を感じているが不思議と冷静に保てていると言ったほうがいいのか? 初めての感覚に惑う。
「とりあえず。拘束しないと」
気絶させていた盗賊達を魔道具でまとめる。
「これで依頼は完了かな。奥にも何かあるのかな?」
この横穴は今いる地点からもう少し奥に繋がる道があった。
俺は、奥へと進んだ。
奥には金貨や金ピカの財宝そして、布が被せてある何か。
「これなんだろう? なんかの箱でもあるのかな?」
気になったので布を取る。
被せてある布の下から出てきたのは檻だった。そして、その中には一人の少女が閉じ込められていた。
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