8話 今度こそ初依頼
お金がようやく貯まり装備を買うことも出来て今日は初の討伐依頼なんだけど……。
「おいおい、兄ちゃん本当に大丈夫か?」
「ダメなんですか?」
「ダメとは言わないが」
この人は今回の依頼で共にやるCランク冒険者のダグラスさん。大きな体にはち切れんばかりの筋肉、顔の傷跡から見ても冒険者感がめっちゃ出てる。こんなことになっている原因はもちろん俺の天職だ。言った瞬間これだよ。この先無事依頼達成までいけるのか心配。
今回の依頼内容は黒狼の討伐。不思議に思うのではないか? なぜEランクの俺がCランク冒険者と一緒に依頼をしているのか。その理由はこの依頼自体はEランクでも受けることが出来るが最近どうやら大量発生しているらしくダグラスさんは討伐ついでに調査を頼まれたらしい。発生したのが町の近くなのでいち早く原因を突き止める必要がある。この大量発生が起きたのは魔族が宣戦布告した後なので関係があるのではないかとギルドでは疑っている。
「この天職の何がいけないのですか?」
他の人にも聞いておこう。この前はうやむやにされたからはっきりした意見が聞きたい。
「何がいけないってそりゃ能力取り込めなきゃ終わりじゃん。失敗したらどうなるか分からないなんて爆弾抱えてるようなもんだしよ。それなら他の奴連れて行くな」
「そうですか……」
やっぱりそうなるのか。この世界は俺に厳しすぎる!
「でも心配すんな。さっきはあのように言って悪かったが少なくとも俺は天職よりも強いやつなら大歓迎だ!」
サムズアップをする。
めっちゃ怖いけどダグラスさん実は良い人? こんな人もいるんだな。これは何としても頑張らないと。
それからあたりを調べていると今回の目的の獲物が姿を現した。
「グルル」
深く飲み込まれそうなほど黒い毛並みに鋭く睨む金色の瞳、鋭い爪、鋭い牙。
うぉっ! これが黒狼か。あの爪と牙ヤバそうなんだけど。
「出てきやがったな。兄ちゃん二体いるがどうする? 一体やるか?」
「はい!」
そりゃやんないと。これでも戦う準備はしてきたんだから。
ダグラスさんは背に掛けていた斧を抜き戦い始めた。
「こっちもやるか」
俺は、この日のために今持つ唯一のスキル身体強化の練習をしてきた。初めは全然発動しなかったんだよね。あの時は無意識に発動していたから。てことでアニメみたいに力を溜めるポーズやってみたり技名つけて叫んでみたり我ながら中二っぽくて恥ずかしかった。それでも出来なかったので思考を変えて強くするイメージをしながら「身体強化」と言ってみたら発動した。何回かやっていくうちにコツも掴むことが出来た。それから慣れるために使っているが身体強化を解除した後は今でも使用時間にもよるが筋肉痛になることがある。
「身体強化!」
薄い青色のオーラが全身を包み込む。
腰に携えている剣で黒狼に斬りかかる。その攻撃は簡単に躱される。そして絶え間なく俺は攻撃をしていくが軽やかに躱される。
「こいつ素早いな」
身体強化はしているだけど攻撃が当たる寸前に一瞬早く動いているんだよな。これはなんかありそうだな。隙を窺って魔力を取り込もうとしていたら。
「ガァ!」
奴は鋭い爪が生える前足を相手に届くはずのないのに振った。すると地面を抉りながら斬撃が飛んできた。
「なにそれ!」
咄嗟に回避する。
斬撃が通った後は、おそらく相手の爪の本数分だろうか抉った跡が残っていた。
「あれ食らったら細切れになっちまうな」
相手はそれ以降接近戦と遠距離から斬撃を飛ばしてくる。
魔力を取り込もうにも避けることに精一杯で出来なかった。
「これも魔喰の弱点の一つか」
どうやら戦いながら発動が出来ないらしい。
攻めあぐねていたとき、
"キン"
斧で俺に迫ってきていた斬撃を一振りで吹き飛ばした。
「苦戦しているな」
「ダグラスさん」
手分けした片方をすぐに倒したらしい。
「どうする? このまま倒そうか?」
「いいえ。俺がやります。少しだけ時間を稼いでもらっていいですか?」
「何をやるかわからないがまかせろ!」
ダグラスさんに時間を稼いでもらっている間に俺は相手の魔力を取り込む。俺の体に黒狼の魔力が入ってきているの感じる。とても不思議な感覚だ。颯爽と地面を走り風を全身で受け止めるような感じ。まるで黒狼になった感じ。そして、魔力を取り込んでいく中で技のイメージも入り込んで来た。魔力の取り込みが終了し。
「これで使うことが出来るのかな」
体が軽くなったような感じがする。
「ダグラスさん準備が出来ました」
「よっしゃ! 交代だ」
戦闘を交代し再び攻める。飛ばしてくる斬撃を剣で受け流してここで取り込んだ一つ目のスキルを発動する。『縮地』、相手との距離を瞬時に縮めるスキル。黒狼がギリギリで躱していたのはこれを使っていたからだろう。相手との距離を一気に縮めて接近する。横斬りで攻撃するが相手もまた『縮地』を発動し躱す。ただし、今度はさっきとは違いジャンプして躱したので空中で無防備になったところに二つ目のスキルを発動する。『闇刃』、黒の刃を飛ばす蹴り技。食らった黒狼は真っ二つに切り裂かれ絶命した。
「ふぅ~、なんとか倒せた」
「おつかれさん。さっきのスゲーなあれが黒狼から取り込んだものか?」
「はい。自分でもビックリですよ。まさかあんなのが手に入れられるなんて」
「でも、失敗したときのこと考えるとなぁ」
「そうですよね。でも取り込んでいた時特にヤバそうな感覚は感じませんでしたよ」
「ならいいけどな。ヤバそうならすぐにでもやめてくれよ」
「はい」
それからも黒狼に出会っては殺していき、新しいスキルにも慣れることが出来た。しかし、黒狼の大量発生の原因は分からなかった。日も暮れてきたので、
「そろそろ終わるか」
「そうですね」
「初めは心配したがなかなか良かったぞ兄ちゃん!」
「ありがとうございますダグラスさん」
「なんかあれだな俺のことはダグラスでかまわないぜ」
「じゃあ、俺のこともリュウでお願いします」
「またなんかあったらよろしく頼むぜリュウ!」
「こちらこそよろしくダグラス」
こうして初の依頼は無事終わることが出来た。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
リュウ達が去った後の森で闇に紛れ響く声、
「まぁ、とりあえずはこんなところか次やるときはまた違う方法を試してみるとしますかね」
誤字、脱字、評価等(感想あれば)よろしくお願いします。




