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年上メランコリック  作者: Sako
7/23

せぶん


ガタンゴトンと電車の揺れが心地よい。乗客は少なく車内はとても静かだ。ただし私の隣を除いて。

大きな溜息が出る。なぜかというと…


「ねえねえ、夕紀ちゃん?聞いてる?俺を巡って女の子達が激しい戦いを繰り広げた話、今いいとこなんだよ~」


コイツがいるからだ。


事の始まりはさかのぼること30分。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「わー、眩しー」


家の前で、私が太陽の光に歓声を上げていると、長谷雅が自転車で現れた。しかも爽やかに。路面がツルツルに凍って転んでしまえばいいのに。


「おっ、夕紀ちゃん!どっか行くの?まさか…この前言ってた好きな人と?」


「違うから!」


「違うのか。可愛い格好してるからてっきりデートかと」


ちなみに、今日着ている物は全部小春が選んでくれた。服の少ないあたしにお母さんがお金をくれた時に、「全身コーディネートしてみたかったんだ」と楽しそうに選んでくれた。


だから服が可愛いのはあたりまえで、問題は着ているあたしが服に見合った容姿を持っていないこと。



「違う。で、何の用?」


「暇だったからケンとどっか遊びに行こうと思って」


「お兄ちゃんいないよ。今日バイト」


「えっ!?」


携帯持ってたよね。何のための携帯なんだ。


「メールか電話で確認してから来なよ」


「携帯失くしちゃってさー」


「あはははー、ドジでしょー」と笑う。自分で隠した向日葵の種を忘れたハムスターが浮かんだ。


「とにかく、お兄ちゃんはいないから。帰って」


「えー、夕紀ちゃんは友達と遊びに行くの?」


「1人だけど」


「あ、そーかそーか」


長谷雅の顔がパッと明るくなった。嫌な予感しかしない。


にこーっと笑って長谷雅は言った。


「俺も一緒に行くよ」


「はぁ?」


聞き間違い?今、俺も一緒に行くって聞こえたんだけど。

聞き間違いだよね?誰か聞き間違いって言って。


「聞こえなかった?俺も一緒に行くって言ったんだよ」


聞き間違いじゃなかった。


「なんでそんな誇らしげなのよ。嫌にきまってるでしょ」


「そんなこと言わずにさ。せっかくオシャレしてるんだから、1人じゃ勿体ないよ」


「あんたには関係ないでしょ」


「大ありだよ。親友の可愛い妹が1人で出かけるなんて、心配じゃないかー。チャラチャラした男共がよってくるかもしれないんだぞー」


どんな頭しているんだろうか。


「大丈夫だから!心配無用です。」


「まあまあ、そう言わずに。俺、暇なんだよ。ね?いいでしょ?」


でた、子犬。これは計算なのか?


「う……あーもう、いいよ」


「やったあ!」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



というわけで、私は長谷雅と一緒に出かけることになってしまった。


「俺を巡って取っ組み合いの喧嘩したんだよ、あの子達。凄いと思わない?」


「まぁ、凄いとは思う。………こんなチャラ男を奪い合うなんて、その人達騙されてたのかな。」


最後のは小声で呟いた。


「でしょ!凄いよね~。ん、最後何か言った?」


「へ、あ、ううん。何も言ってないよ」


地獄耳ですか。


「そっか。俺の悪口言ったのかと思ったよー。俺さ、地獄耳なんだよね~」


そうだと思ったよ。


「気のせいじゃない?」


「そうかも~。あ、着いたよ。降りよ」


「あ、うん」


平日とはいえ、冬休みだから人はそこそこいる。特に若い人達、カップルとかね。



「カップル多いなー。俺たちもそう見えてるんじゃない?」


「ないから!」


カップルとかありえない。


「えー、ザーンネン」


ニヤニヤして、あたしをからかって楽しんでるんだ。


「そういえば、一緒に来たけど何か買いたい物あるの?」


「んー、特にないよ」


「無いのに来たの?」


「うん~。暇だったから~」


私はあんたの暇つぶしか。


「…あーもう。じゃあ、私が勝手にお店決めるよ、いいよね」


長谷雅にいちいち怒ってたらキリがない。諦めて、欲しい物買ってしまおう。


「もちろん。俺はデートを楽しむよ。」


「いや、デートじゃないんだけど。」


冷たい視線を送る。


「えー、違うのー?」


「違います。 」


先が思いやられる。



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