表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
年上メランコリック  作者: Sako
6/23

しっくす


寒い寒いと言っている間に冬休みに突入した。


「夕紀~、会えなくなると寂しいよー」


私に抱きつきながら小春が言ってくれる。


「私もだよ。冬休みも遊ぼう」


「うん!」


「小春ー」


山下君が小春を迎えに来た。月曜日と木曜日は一緒に帰ることになってるらしい。


「あ、和弥君!すぐ行くよー。じゃあ、またねっ!」


嬉しそうに山下君と歩く小春を見ると私まで頬が緩んだ。恋する乙女である。





2人が校門を出て行くのを教室の窓から眺めた後、帰ろうと立ち上がったとき、


「どいつもこいつも宮島かよ」


後ろの席で帰り支度をしている沢田がぼそっと言った。


「ん?」


「山下君を取られて拗ねてるんだ」


「なっ、俺はそんな小せえ男じゃねーよ」


見た目は小さいけど。


「へー」


「今俺のこと身長は小さいのにって思っただろ」


ぷくーっと頬を膨らませて睨んでくる。あたしより小さいから子犬が威嚇しているようにしか見えない。


「ほんと子犬。」


「だーかーらー、子犬って言うなっ」


「ふふっ、はーい。それで、本当はなんで拗ねてるの?」


「別に」


「せっかく聞いてあげようと思ったのに。話したくないならいいよ、帰るから」


「えっ、ちょっ……あーもう、御山の言う通り、俺寂しいのー」


「やっぱ犬じゃん」


飼い主が構ってくれなくていじける子犬。


「最近、和弥が宮島ばっかだし。一緒に帰る日減ったし。今まで和弥に彼女ができたことなんて1度もなかったのにぃ」


「山下君、彼女できたことなかったの⁉」


「そうだよ。だってアイツ女子苦手だもん」


「えっ!小春と付き合ってるじゃん」


「俺もびっくりだよ。しかも和弥から告ったし。宮島といると気が楽になって話しやすいらしーよ」


これは驚き。


「確かに。すごく温かい気持ちになるんだよね」


「ったく、どんな能力だよ」


「あんたさー、女子に嫉妬してどうすんのよ」


沢田の顔が赤くなった。


「はっ、べ別に、嫉妬なんて」


「してるでしょ。もしかしてあんた……こっちなの?」


手の甲を内側にして顔の斜め前で立てた。

つまりオネエなのかってこと。


「ちっ、ちげえよ!それだけは絶対ない!」


「あ、違うんだ。」


「当たり前だろ!」


「はいはい。月曜と木曜は一緒に帰ってあげるから。」


「まじ?」


目を輝かせる沢田。ついでに尻尾も振ってるな。


「うん。どうせ方向一緒でしょ」


「よっしゃ!」


素直なのか単純なのか。どっちもか。



いつもは1人で歩く道を沢田と歩く。こいつとは、私が今の家に引っ越してから知り合った。小学4年生からの付き合いで、うるさいご近所さんだ。


「小学生以来だなー」


「そうだね」


「御山はさー、寂しくないの?」


「なんで?」


「宮島が和弥と付き合って。」


「寂しいわけないじゃん。小春がずっと好きだった人と両想いになれんたんだから、むしろ嬉しい」


「すげーなー、おまえ。俺はそんな大人になれねーっ」


小さな犬が鳴いてるみたいだな。自分の飼い主が他の人といるのはやっぱり辛いものなのか。


「いつかなれるんじゃない」


「だといーな。そーだ、御山は好きなやついねーのか?」


「いないよ」


「初恋はいつだ」


「まだだけど」


「まじか…ブファッ今時いるんだな、ハハハッ、御山らしすぎてハハッ、おっかしアハハハーっ」


爆笑し始める沢田。世の中の恋がまだの女子を敵に回したな。


「失礼な。そう言うあんたはどうなのよ?」


「俺か?ふふーん、俺はいるもんねー、好きな人」


こんなワンコでもいるのか。


「意外、誰か教えてよ」


内緒話をする時の、いわゆるコショコショ話の形で聞いた沢田の好きな人は、今は遠い所にいる私たちの幼なじみの名前だった。


「内緒だぞ!誰にも言うなよ!?絶対にだぞ!」


「はいはい」


耳元で話されたから凄くくすぐったかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ