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年上メランコリック  作者: Sako
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わん

土曜の14時に週末課題にいそしんでいる私はなんて寂しい人なんだろう。

高校2年生にもなって、休日に友達と遊ぶ予定なんて全くないのだ。


そして、そんな寂しい女子高生の隣の部屋から楽しそうな笑い声が…。


「また、来てる」


大学生のお兄ちゃんが中学生の頃から仲の良い長谷 雅。いっつもヘラヘラニコニコ笑ってて何を考えてるのかわからないからこの人が苦手だ。


どんっ


壁に何かがぶつかる音が部屋に響いた。

いつものようにプロレスごっこでもしてるのかもしれない。


こんなのじゃちっとも集中できないじゃない。


「…もうっ」


私は部屋を飛び出しお兄ちゃんの部屋のドアを思いっきり開けた。


「ちょっと、2人共、静かにしてよ。私、勉強してるの!」


「夕紀いたのか。たまには友達と出かけたらどうだ」


兄の健斗が私を茶化した。


「お兄ちゃんに気遣ってもらわなくても結構ですー」


「夕紀ちゃん、友達いないの?俺とデートする?」


雅の軽い冗談に不覚にも動揺してしまった。


「なっ!よ、余計なお世話よ」


友達の1人や2人ぐらい、私にもいるに決まってる。


「ざーんねん」


ちっとも残念そうに見えない顔で笑われた。


「…とりあえず、勉強してるんだからプロレスごっこは程々に!」


「はいはい」


「はーい」


私は大股でお兄ちゃんの部屋を出た。





「ふぁー」


大量にあった課題を終わらせ、伸びをしながらリビングにおりた。


「あ、勉強終わったの?」


トントントンと包丁で野菜を切るお母さんに捕まった。


「うんー」


「じゃあ、ちょっとソース買って来てよ」


どうやら下りてくるタイミングを間違えたらしい。


「えー、今から見たいテレビが入るのに?」


「いつものアニメでしょ。録画してあるじゃない」


「そうだけどー」


「多めにお金渡すから好きな物も買って来ていいわよ」


「…行く」


結局物欲には勝てないのだ。


「暗いから気をつけてね」


「はーい」


「あれ、夕紀ちゃん出かけるのー?」


玄関で靴を履いていると長谷雅が声をかけてきた。


「うん。帰るんだ?」


「そうだよー。もう暗いからね」


小学生みたいな答えが返ってきた。


「どこいくの?」


「ふたばスーパー」


「俺ん家その近くだから一緒に行くよ」


「必要だと思いませんけど」


「まあまあ、そう言わずに。女の子なんだから夜道に1人は危ないだろー」


「別に。護身術習ったし」


体育の授業で習った柔道を護身術ということにしておく。


「そんなこと言わないのー。ほら、行くよ」


「ちょっ、許可してない」


「気にしない気にしない」


私の手を掴んでそのまま玄関のドアを開けた。


「気にする、ってこら!」


強引に手を引っ張られ外に。冷たい風が一瞬で体温を奪っていく。


「やっぱ寒いなー」


スタスタ歩き出した。


「ねえ、手」


ムッとした顔で言う。


「手?」


しらばっくれても無駄だ。


「離してよ」


あたしの手は長谷雅にしっかりと繋がれている。


「いいじゃん、寒いんだから」


確かに真冬の夜は本当に寒い。でも、手を繋がなくてもいい。


「良くない」


「寒いんだもん。いいでしょ?」


ふにゃーっと笑って見つめてくる。あたしは長谷雅のこの笑顔に弱い。

抵抗する気力が無くなってしまうのだ。


「もう、好きにすれば?」


「好きにさせてもらいまーす」


更にあたしの手を握る力が強くなった。長谷雅の手は大きくて硬くて暖かかった。





人の全然いないお店をテキパキ歩いてソースとチョコレートを籠に。


「チョコ好きなの?」


ニョキっと長谷雅が現れた。


「なんでまだいるのよ」


10分前ぐらいにコイツは「じゃあねー」と呑気に手を振ってどこかに行ったはず。



「だって、夕紀ちゃんとまだ一緒にいたかったんだもーん」


「チャラい。たらし」


ホストかお前は。


「酷いなー。夕紀ちゃんが変な男に声かけられたりしないか見張ってるんだよ」


「余計なお世話」


「そういうと思った。実はこれを渡そうと思って。」


渡されたのは手のひらサイズの箱。


「防犯、ブザー?」


「そう。護身術だけじゃ心細いでしょ」


「…あたしは小学生かっ!」


「あはは、いいツッコミ!じゃ、今日はもう帰るよ。バイバイ」


ニッコニコの笑顔で防犯ブザーを渡して、長谷雅は颯爽と帰って行った。あたしの知っている長谷雅は女を取っ替え引っ替えして、チャラチャラしてる最低男で、こんな優男ではない。


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