眠れぬ夜に
眠れない…
隣には…スヤスヤと眠る香織、そのとなりには
クマのぬいぐるみに抱きつき眠る結香。
(二人とも…昔と変わんないな。)
「…ちょっと出てくるからな」
起こさないように服を着替える。
「…ねぇ和彦、出かけるの?」
「香織…起こしちゃったか?」
「ううん、眠れなくて…
ねぇ、3人で行こ?
話したいコトもあるし…」
「そうだな。
じゃあ、結香を抱っこして…」
(何年ぶりに抱っこしたかな…ずいぶん重くなったなぁ)
「ねぇ、大丈夫?」
「大丈夫だって、
じゃあ行こうか」
「ねぇ和彦、高速のってどこ行くのよ?」
「山だよ、あと30分ぐらいで着くかな」
「なんでまた…。
もしかして、変な事するんじゃないでしょうね?」
「…変な事って…
エロいことか?」
(あ、真っ赤になった…
図星か)
「大丈夫だって、エロいことはしないからさ」
「…ホントに?」
「ホントだって。
…俺さ、結香に正直に話す事にした。
それでさ、改めて考えてみたんだ…香織のコト」
「えっ、私のコト?」
「うん、
俺にとって香織はただの幼なじみなのかって、
正直ずっと引っ掛かってたんだ。
少しずつ変わっていく香織の俺に対する接し方が、
成長するにつれて前よりずっと近くなってくる…みたいな感じがさ」
「…気づいてたの?」
「うーん…気づいたより
、結香に気付かされたって言うのかな。
…着いたぞ。」
「えっ、ここなの?
…なんにもないじゃない」
「上、見てみな」
「えっ上?
…スゴい…綺麗」
サンルーフから見えるのは、満点の星。
「すごいだろ。
俺さ、考え事とか悩んだときによく来るんだ。
…星のコトはよく分かんないけどな。
そう言えば、
香織の話したかったことって?」
「…あのね…
私ずっと前から、
吉彦のコトが好きなの」
「うん、俺も好きだ」
そう言って俺は香織と唇を重ねる。
「…お兄ちゃん?」
「ゆ、結香…起きたのか?」
「結香ちゃん…これはその…」
「なに慌ててるの?、
…星キレイだね」
(気付いてないのか?)
そのとき俺は、結香の本当の気持ちに気づいてやれなかった。
帰り道…
「結香ちゃん、寝ちゃったよ」
「うん…
俺さ、結香に悪いことしちゃったかな」
「大丈夫だって、
結香ちゃんは全部分かってるから。
…私の勘なんだけどね」
「そうかなぁ…
まだ結香は小学生だぞ?」
「小学生でも女なのよ。
まだ体が未発達なだけで、和彦が思っているよりはずっと大人よ」
「…じゃあ、
香織はどうだったんだ?」
「えっ私?
…その頃からかな、
和彦を意識し始めたのは。
…和彦、結香ちゃんにはちゃんと答えを出してあげてよ?」
「ああ、分かってる」
そう言って俺は、
夜明けの高速をかっ飛ばす。