お泊まり
ある日の夕方。
「お兄ちゃん、来たよ~」
「おう、結香。
まぁ入ってくれ」
今日は結香が家に泊まりに来る日だ。
なんでも両親が急な出張で家を開けるらしい。
でも今日はちょっと問題が…
「えっ、今日…お兄ちゃん一人なの?」
「明日、母さんの親友の結婚式でな。
日にちを間違えたみたいで、さっき慌てて…」
「そっか、お兄ちゃんと二人っきりかぁ~」
結香…なんか嬉しそうだな。
でも一応、年頃の女の子なワケだし…
「俺と二人でも大丈夫か?」
「なに言ってるの?
変なお兄ちゃん。
あのね…おねがいがあるんだけどいいかな?」
「ん、いいけど…なんだ?」
結香からのおねがいは…
一緒にお風呂に入り、一緒に寝る…。
…ちょっと甘えたいのかな?
結香が来る前に作っておいたカレーを温め夕食をすまし風呂へ…
俺がさきに湯船に浸かっていると結香が入ってきた。
その姿は少しずつ大人へと近づいていた…
数年前(ある部分を除いて)
は男の子とあまり変わらなかったが、
改めて結香は女の子なんだなと実感する。
湯船に浸かり、
「お兄ちゃん料理できたんだね~」と話す結香。
体つきは全体的に丸くなり、胸には小さな膨らみが…きっと数年も経たないうちに立派に成長するだろう、
…そうしたら悪い虫が付かないように俺が守らなければ。
「ちょっとお兄ちゃん?
…ボクの話聞いてるの?」
「ん…ああ悪い。
ちょっと考え事をな」
「ふーん、
ボクの身体を見ながら考え事かぁ」
なんだよその目は…
「別に変な意味じゃないぞ。
結香は成長したなって見てたんだよ」
「そう…かな?」
少し恥ずかしそうにする結香。
「ホントだって、結香が産まれたときから見てるし…
たまにオムツ替えたりしたこともあったしな」
そんなに驚いて…
あれ、言ってなかったっけ?
「ホントに?」
「ホントだって。
後で写真あるけど見るか?」
「うん。
…あのね、ボク…お兄ちゃんのコト…好きなの」
「俺も結香のコト大好きだぞ」
「…違うの…
そうじゃなくてっ!
男の人として、
その…異性として好きなの。
ごめんね困らせるようなこと言って、でもどうしても伝えたくて…」
風呂から上がると…
「遅かったわね、結香ちゃんに変なことしてないでしょうね?和彦」
えっ、なんで家に?
「香織!なんで家にいるんだよ?
…しかも俺が作ったカレー食いながら」
「和彦が作ったの?
料理できたんだ…」
「あのなぁ…家庭科の調理実施のときに作ったろ…」
「そうだけど…
水っぽくないし、ちゃんと出来てるからさ。
あ、おかわりあるわよね?」
…どんだけ食う気だよ…
そう思いつつ大盛りで出してやる。
「よかった。
お姉ちゃん、来てくれたんだね」
「結香ちゃんが心配だからね。
そういうコトで…
私も今日、泊まっていくからね」
「やった~。
今日は3人で寝ようね、お姉ちゃんっ」
嬉しそうな結香、
でも俺は…
「ちょっと、いいか香織」
そう言って香織を俺の部屋へ
「なぁ、ホントに泊まってくのか?」
「その…これは結香ちゃんを守るためで…一応ね」
「一応か…そう言えば、
なんで今日結香が家に来る
って分かったんだ?」
「結香ちゃんから連絡があってね『お姉ちゃんは来ないの?』って。
それで来てみれば…
鍵は開いてるし、食器はそのままで、それで片付けたあとにカレーをね」
「…俺は結香のコトを妹だと今でも思ってるんだ、
だから絶対に間違いは起こらない。
…それでも泊まっていくか?」
コクりと頷く香織。
「わかった。
…悪かったなメシの途中で連れてきて…」
「ねぇ、結香ちゃんから何か…」
「『お兄ちゃんのコト好きなの』
って告白されたよ…。
なぁ香織、俺はさ結香のコト妹としか思えないんだ…
でもそれじゃあ結香のコトを傷つけてしまう。
俺はどうすればいいんだ…」
ガチャっ
「お兄ちゃん、なんで開けてくれないの?」
「結香、ノックぐらい…あ、カレー持って来たのか。」
「さっきから開けて
ってた言ったのに…。
はい、お姉ちゃん、カレー
あれっ…顔真っ赤だよ?」
顔を真っ赤にした香織は結香からカレーを受け取り食べ始めた。
「結香、ホラ」
俺の手には、
分厚く赤いアルバム
「コレに赤ん坊の結香が写ってる」
そう言って結香にアルバムを手渡すと、
静かにページを開いた。
「ねぇお兄ちゃん?
この子、ホントにボクなの?」
(そっかぁ、自分で見ても分かんないよな)
「ああ、間違いなく結香だよ。
で、結香を抱いてるのが俺だ」
「えっ、この子お兄ちゃんなの…可愛い!」
「かわいいってなぁ…
たしかに、よく女の子と間違われたケドさ…」
「ねぇ和彦?
コレって確か…
結香ちゃんの首が座ってから、初めて抱っこした時の写真だよね。
結香ちゃんが5ヶ月ぐらいのときかな」
「ねぇ、ボクのコトいつから知ってたの?」
「いつからって、そりゃ…
結香が産まれてくるときに香織と見てたからな。
…まぁ小さい頃だったから詳しくは覚えてないケド」
「ねぇ、結香ちゃん。
…コレは誰でしょう?」
そう言ってある写真を香織が指差した。
「お姉ちゃんの隣の子だよね。
…お兄ちゃんにそっくりだけどスカート履いてるから女の子だし…。
お兄ちゃんに妹って居ないしね」
「…コレ俺だ。
確か、香織に無理やりスカート履かされたときの…」
「えっ、ホントにお兄ちゃんなの…」