香織
「今日は帰りが遅くなるから、吉彦君のトコで食べてきてね」
朝、ボクはお母さんにそう言われたので、
お兄ちゃんのバイト先に自転車で向かっている。
お兄ちゃんのバイト先は牛丼屋で香織さんも居る。
香織さんは
お兄ちゃんのバイト先の先輩で…
何か最近、
前より仲がいい気がする。
…付き合っているのかな?
そんなことを考えていると牛丼屋に着いた。
カウンターに座ると
「いらっしゃいませ、
ご注文は…
って結香?」
…お兄ちゃんが来た。
「ビックリした?」
「ああ、
一人で来れるようになったんだなって」
「…ボク、
来年から中学生だもん。
いつまで子供扱いなの」
「だって、まだだろ?
アレ。
ホラ、赤い色と関係が…」
アレって何かな?
そう思っていたら…
「こらっ!
結香ちゃんに変なこと言わないのっ!」
「あ、お姉ちゃん!」
「いらっしゃい、結香ちゃん。
何にする?
あ、吉彦のおごりだから遠慮しないでね」
「えっ、俺の?」
「当たり前でしょ、結香ちゃんもお客様なんだから…
変なこと言ったバツよ」
「…はい…」
お姉ちゃんってスゴいな、お兄ちゃんが大人しくなった…
でも変なことって何だろ?
とりあえずボクはいつものヤツを注文した。
「おまたせ致しました、
ご注文のちーず豚丼です。」
うーん、やっぱりこれだよね!
チーズと豚肉の相性がバツグンなんだよ
待つこと少々…
「ご注文の品は以上で宜しいでしょうか?」
「うん!」
「いただきます~
…ってお姉ちゃん?」
ボクが食べようとすると、
私服に着替えたお姉ちゃんが隣に…
「今、上がったのよ。
だから一緒に食べよっかなって。
あ、吉彦は後…
一時間ぐらいしたら上がりよ」
そう言ったお姉ちゃんの前には、
豚丼が運ばれてきた。
「豚丼置いとくぞ」
「ちょっと吉彦…
私、お客様なんだけどなぁ~。
…榊原さんに言ってもいいの?」
「…それだけはやめてくれ…」
「じゃあ私のも頼むわね?」
「…分かったよ…」
お姉ちゃんってお兄ちゃんの操縦が上手い…
同い年とは思えないなぁ…
帰り道、
ボクはお兄ちゃんのクルマで家に送ってもらう。
「ねぇお兄ちゃん?」
「ん、なんだ結香?」
「お姉ちゃんと付き合ってるの?」
「うーん…
別に付き合ってる訳じゃ…幼なじみだし」
「じゃあ、
友達以上恋人未満ってやつだね」
「なぁ…香織ってなんか変なトコあったか?」
「なんで?
別にいつもどおりだったよ」
「…なんか最近、
香織の様子がおかしいんだよな…」
「どうおかしいの?」
「何か独り言が多くてさ
…とにかく変なんだよ」
「気のせいじゃないの?」
「かもな…」
(ちょっと考え過ぎか、でも…)