自販機になっちゃった!
ボクは気がついたら
…自販機になっていた…
おかしいなぁ?
ボクはただ…
お兄ちゃんにこれを届けたくて…
お兄ちゃんにあげるチョコケーキ。
あっ!お兄ちゃん!
「今日は寒いな…
…あれ?
こんなとこに自販機あったっけ?」
(気づいてよ、ボクだよ…)
「…てか、
チョコケーキ売ってるし…変なの…」
(それは、お兄ちゃんにあげる…)
「とりあえず寒いからな、暖まるか~」
(っ!…何か入れてる?)
「…小銭?」
「これにするか~」
ポチっ!
(んー!
くすぐったいよぉー)
「…声?
つーか、反応悪いな…」
(ちょ!何回も…
くすぐったいてばぁ!)
ガチャン!
「…やっと出てきた…」
(ちょっ…!
そんなとこ…触らないでよ…)
ボクのなかにお兄ちゃんの手が入ってくる
…ボクの大切なところに…
お兄ちゃんなら…いいよ…
「…っおかしいな、
缶が抜けない!」
(なんか気持ちい!?
…なんでだ?)
…ココアを取ろうとしてるだけなのに!
(あれ?
やっぱ…声が…)
『お兄ちゃん…』
(…女の子?
てか…ボクっ子?)
…ボクっ子…
…一人しかいないな…
「ゆ…結香か?」
(えっ…!
どうしよ~)
「お兄ちゃん…」
(お~声がはっきり聞こえる!)
「…何で自販機?」
(えっと…何でだろ?)
「…わかんないよ…」
結香のその声は…
泣きそうだった…
(…やっぱ結香の声って、
スゲー可愛いな)
…今は自販機だけど…
「…なぁ結香…」
「なに?」
「…これからどうすんだ?」
「うーん…あ!
…お兄ちゃん、バイトは…」
「…結香…
俺、昨日から休みだぞ」
「えっ…?」
「えっ、
ってなぁ…」
(俺、言ったよな…)
「じゃあ…
お兄ちゃんは?」
「俺は…まぁ…その…
ちょっと野暮用でな…」
(なんだよ…
風邪治ったのか。
今から、見舞いに行こうと思ったのに…)
二人はとりあえず、
元に戻る方法を考えていた。
「ねぇ、お兄ちゃん…」
「ん、なんだ
なんか思いついたか?」
「うん…キ…」
結香がそう言いかけたとき…
結香の体が
ピンク色の煙に包まれた…
「結香!大丈夫か!」
「うーん…大丈夫…
あれっ?」
…体が戻ってる…
「元に戻ったよ!
お兄ちゃんっ!」
…よかった。
「大丈夫か?
…ケガ無いか?」
「うん!
何ともないよ~」
ガバッ!
俺は、たまらず結香の小さな体を抱きしめる
「えっと…お兄ちゃん?」
…ホントに戻ってよかった…
「スゲー心配したんだぞ?
…結香、もう少しこのまま…」
「うん、いいよ…」
ボクはお兄ちゃんの顔を覗き込むと…
お兄ちゃんは泣いていた…
(ホントに心配してくれたんだね…)
『ふふ、あの子…
おもしろいわね。
気に入っちゃった。』
「お兄ちゃん!
ホラ、あれ!」
「ん?…ドコだ?」
…居なくなっちゃた…
「さっきね、魔女がいたんだよ!」
「魔女?
…結香、アニメの見すぎじゃねーか?」
「違うってば、ホントに居たんだよー!」
俺はこの時
結香の見間違えだと思っていた…