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ウル:初めての対決

 昼食を済ませ、宿を取ったウルは、街をふらついていた。


「ルーのご飯を買っとかないと」


 猫のエサが売っている店を探して右往左往するウル。なんとか猫缶を見つけたウルは、〈送迎書〉を提示して買い物を済ませた。


「猫のご飯までタダになっちまうだなんて。〈送迎書〉様様ってやつだ」


 ルーの喜ぶ顔を思い浮かべながら歩いていると、子供が空を見上げていた。気になったウルが訊くと、どうやら風船が建物に引っ掛かって困っていたらしい。

ウルは、その建物の主人に理由を話して棒を借り、風船を取ってあげた。


「ほれ。もう離すなよ」


「うん! ありがとう、お兄ちゃん」


 子供が礼を言って駆けていった。ウルは、〝お兄ちゃん〟という言葉に優越感を覚える。


「さーて。ルーが待ってるって」


 宿の方向に歩いていくウル。そんなウルの前に突然、人が落ちてきた。左目を閉じた少年。寡黙な感じをウルは受けた。


「危ないだろ。周りに人が大勢居るんだ」


「……」


 ウルの言葉に耳を貸すつもりなどないのか、アクロバティックな行動を取りながら街中を進んでいく。

 少年の態度にウルは怒りを感じた。


「テメエ、聞いてなかったのかって!」


 少年を走りながら追い掛けるウルだが、超人的な動きをしている少年になかなか追い付けないでいた。

 そんな少年の行動に街の人も困惑している。


「人の迷惑も考えろって!」


 ウルが、先程借りた棒を少年に投げる。棒は少年の横をすり抜け落下した。


「……何だ」


「ようやく耳を傾けやがったか。テメエ、普通に歩けって。あんな移動をされちゃ、街の人の迷惑だろう」


「迷惑だと?」


「そうだ。ここは公園じゃないんだ。そういうの考えたことないのか?」


「無駄な行為だ」


「んだと!」


「オレがどこをどう行こうがオレの勝手だ。誰かに指図される筋合いはない」


 少年は、ウルが投げた棒を拾うと、閉じていた左目を見開いた。少年の左目は、金色に輝いている。


「只の棒か……下らない」


 少年は棒をウルに投じた。棒はウルの腹部に抉り込む。一瞬の出来事に動揺するウル。腹部の痛みに耐えかねて、しゃがみ込むも、少年の様子を窺っていた。


「避けなかったのか、はたまた避けられなかったのか。どちらにせよ大した奴じゃない。失せろ」


「……~!!」


 苦悩の表情を見せるウル。ウルは只、少年の後ろ姿を眺めていることしか出来なかった。悔しさをバネに痛みを堪え立ち上がる。転がっていた棒の、少年が握っていた側が凹んでいた。


(何者なんだ!?)


 ウルは痛みを堪えながら、宿屋へと歩いていった。

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