ティタ:触れ合い
馬車に乗せてもらったティタは、そのまま街に着く。その街は、街というより村に近かった。風車が、風を受けて廻り、村に放たれている馬は元気よく駆けている。
「どの馬も大きい!」
「馬は大きいほうが映えるのだ。自然の中を駆けている馬ほど、自然を美しく際立たせるものだ」
「馬が主役なんだ?」
「ワシは馬が好きだからね。どうしても馬を中心に考えてしまうのだ」
「オジサン、この街にはオジサン以外にも馬を好きな人はいるの?」
「生憎この街は過疎化の境地でね。もう住んでいるのはワシと数人だけだ。囲いが無くても安心なのはそれが理由でね。ワシの言うことには絶対に従うのも理由だが」
「なんか寂しい。こんなに緑豊かな街なのに」
「ワシは、今のままで十分だよ。馬と共に余生を過ごせれば」
「そうなんだ……私なんかでは難しいよ」
ティタは、馬に触れる。馬の毛に触ると、自然と心が落ち着く。ティタは自然と馬を楽しんでいた。
「ワシ以外の人間に触られるとは……。お嬢ちゃんは動物に好かれるのかな?」
「あまり意識をしたことはないかな。でも私、動物は好きです。たとえ言葉は通じなくても、心で通じあえることを実感できるから」
「素晴らしい言葉だ。とても十歳の少女とは思えない」
「お世辞が上手だね、オジサン。馬車に乗せてくれただけでも嬉しかったのに、更に嬉しさが倍増だよ」
「それはそれは。褒めがいがあるね」
「また褒められちゃった」
舌を出して照れるティタ。そんなティタのお腹が空腹を知らせる。
「おやおや。お嬢ちゃんの胃袋が泣いているようだ。早く食べ物を納めてあげなければの。馬車に乗りなさい。もう少し先に栄えた街がある。そこで食事を摂るがいい」
「ありがとうございます」
再び馬車に揺られながら、ティタは目を閉じる。
自然の香りが鼻をつき、馬車の不規則な揺れが眠気を誘う。そんな贅沢な時間を過ごせることに、ティタは喜びを感じていた。
(故郷に居たときには、絶対に味わえなかった感覚だよ~。私、幸せ者だ)
「お嬢ちゃん、街に着いたら……」
「……」
「……ふふ。お眠りかな。三年間の長旅の初日と言っていたか。眠れる時には眠るがいい。旅の過酷さを味わう前にの」
老人の皺に、重ねた年月を感じられる。ティタの旅の行く末を案じているのが端々に感じられた。
「人と人との出逢いには意味がある。これも何かの縁だろうの……。お嬢ちゃんにワシがしてやれること……若者ならば乗り越えられる筈だの……核の目覚めをの」
老人の目に、一筋の光が宿った。




