メイル:チェイサー
ウルとティタと別れてから、メイルは颯爽と森を駆けていた。
(しつこい! いつまで追ってくるつもりだ)
(森に入ってからというもの、僕の後追ってくるやつ)
メイルは振り返り止まる。人の姿は見当たらない。
森の中は静けさを保っていた。
「一体誰だ! 僕に用があるんなら出てこい!」
「……っち。反応なしか」
メイルは再び走り出す。森を抜けると、太陽の陽射しが眩しく感じたのか、メイルは手で顔を覆う。
「……そろそろいいだろう。さあ、姿を現せ!」
メイルが言うと、一人の少年が現れた。
しっかりと準備が整っているところから、この少年は最初からメイル狙いだということが分かった。
「僕に何の用だ? 随分な執念だ」
「自分のライバルを忘れるとは、相変わらずの余裕ちゃんだ。俺のことも覚えてないのか」
「さあな。君みたいなやつ、僕は知らないし興味もない。一方的なライバル意識はやめてもらいたい」
「一方的!? 俺の勝手な一方通行だと言いたいのか!」
「フン。自覚してるのなら話が早い。僕は、君には興味も関心もない。じゃあ」
「待て! まだ話は終わってない」
「僕の話は終わったぞ」
メイルは、呆れた様子で走っていく。少年の方も諦めた様子はなく、相変わらず付いてくる。
「まったく。面倒な奴だ。勝手にしろ」
「当たり前だ。ライバルを目の前にして逃げる奴を見逃す訳にはいかない」
メイルと少年は、一定の距離を保ちながら、小さな広場へと出た。そこから街が見える。メイルは呼吸を調えた。
「よし。街までもう少しだ」
メイルは走り出す。人との遭遇はなく、静かな道を辿るだけ。街との距離が縮む毎に、街の賑わいが聞こえてくる。その賑わいに交わるべく、メイルは、足を止めることはしなかった。呼吸は荒くなっても、心臓の鼓動が速まっても。そうしてメイルは街へと到着した。祭りでもあるかのような賑わいをみせる街中へ。
「オイ。僕に付いてくるのなら、僕の邪魔はしないでくれ。僕は、君の事を関知しない。どうなっても知らない。じゃあな」
「待て、我がライバルよ。俺の名前はダイ。ダイ!」
「フン!」
メイルは、素知らぬ顔で街中へと溶けていった。
ダイも負けじと溶けていく。無視をされ続けながら。