メイル:プライドの高い弟子
一夜明け、メイルとダイは街中にある広場に来ていた。ダイ曰く、『集中出来るから』らしい。
「おん? 朝は苦手かい」
「ウルサイぞ! 僕の勝手だ」
「それが、〝師匠〟に対する態度かな?」
「……チッ。少しくらい核を知っているから何だと言うんだ。直ぐに僕も追い付いてやる」
「やる気はあるみたいだね。じゃ、まずは走れ。小走りでゆっくりに。全速力で走るとバテるから」
「走れだと! ふざけるな! 僕に指図をするんじゃない」
「指図……って……。俺は、お前に核を教えてやるってんだぞ。随分と無茶な注文をつけてくれちゃって」
「核の習得の仕方を聞いているんだ。君の指図を受ける気など毛頭ない。分かったか!」
メイルの勝手気ままで傲慢な態度に、フレンドリーに接していたダイも流石に堪えきれず詰め寄った。
ダイの気迫に、流石にメイルも口がごもる。
「……なっ、んだ」
「ワレ、調子ぶっこいてんじゃねえ!」
ギリッとメイルを睨むその目は、さっきまでの穏和な態度とはかけ離れていた。目はキリッとつり上がり、表情も真剣そのものだ。
「人に教えを乞うヤツが、偉そうな態度で構えてんじゃねえ! 歳が近かろうが遠かろうが、物事には順序ってのがあんだ! 俺にそんな態度を取りたいんなら、まずは相応しい実力を示しやがれ!」
「そ、そこまで怒鳴る必要などない筈だ!」
「俺は、これからの為に怒鳴ってんだ。そういう態度を取り続けていれば、いつか自分に返ってくる。今のうちに、他人との態度を改めなければ、ワレは一生苦しむことになる。手遅れになる前に、俺で態度を改めてみることだな」
メイルとダイは同い年。そんなことを忘れさせる程の言葉をダイは放った。そんなダイの言葉が効いたのか、メイルが少しだけ静かになった。
「なんとか言ったらどうなんだ。ワレの修行にも関わることだ」
「……僕には、負けられない奴がいる。能天気で考えなし、向こう見ずな奴が……。あんな奴に負けるわけにはいかない。負けたくない。僕のプライドが気に食わないのなら構わない。だけど、それが僕だ!」
「なんだ、居るんじゃないか……友達が」
ダイの口調が柔らかくなる。メイルの正直な気持ちを聞けたのが嬉しかったのだろう。メイルも気持ちを吐き出したからか、表情がスッキリしていた。
「その〝負けたくない奴〟に負けないために、俺の指示を受けてくれるか?」
「いいだろう。僕も男だ。やると決めた以上、その為なら自分を変えてやる」
「良い返答だ。じゃ、早速走ってこい」
「フン。良かろう」
メイルが、ゆっくり走り出す。そんなメイルの姿を見ているダイは、まさしく〝師匠〟だ。
順調に進むかと思われた修行だったが、思わぬ乱入者によって中断してしまう。左目を閉じた少年……冷たい視線がダイを差す。
「何だ、お前」
「……別に……。オレの勝手だ」
左目を閉じた少年は、アクロバティックな動きで去っていく。ダイは、そんな少年に対して危機感を覚える。
「誰なんだ? 今の。知り合いなのか?」
「いいや。俺の知り合いには居ないね。ああいうの」
(何だ……この胸騒ぎは。嫌な予感がするんだが)
ダイの胸騒ぎは、このあと的中することになる。
少年の出現により、街は騒ぎになる。