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想いはもう人魚姫には届かない

作者: するめ315

短いですし、人魚姫の王子sideはいらないと言う方は、不快に思うと思うので、戻ってください。

この話は誰もハッピーではありません。

結婚の宴で盛り上がり、酒も勧められるままに飲み、疲れて眠ったはずなのに……ふと、目を覚ました。


なんだかとても悲しい夢をみた気がして……。

このまま、再び眠りにつくことだけはしたくなくて、妃の部屋を訪ねようと考えた。


部屋を出る前、あの子の顔が思い出された。


声だ出せないあの子のことを……。


声が出せないことが不憫でもあったし、何も身につけていないことも不憫であった。


何より私が流れついた所にいたことが、近親感を覚えさせた。

そんなこともあってか、あの子を拾い、妹のように可愛がった。


なんとなく、妃の部屋を訪ねる前に、あの子の部屋を覗き、顔を見たいと思った。


もう寝ているだろうし、行動も失礼だが、言いようもない不安が、後から後から込み上げて、行かなければ安心出来ないと思った。


そんな思いから……安心したい一心で向かう先を変えたのだった。


あの子の部屋の前についた。

当たり前だが、部屋から物音は一切しない。

時間のことも考えると、普通なのだが、『音がしない』ただぞれだけのことが不安をよりいっそう強めた。


静かに扉を開ける。

ベッドに寝ているであろう、あの子の寝顔を見て安心するつもりだった。

できると思っていた。


しかし、ベッドに思い描いていたあの子の姿はない。


不安が現実となって襲ってきた気がした。


訳がわからなくて、気付いたら妃の部屋にいた。


「ん、どうしたんですの……殿下?」

「…………あの子が……部屋にいなかった…………。」

「……あの子がですか?……きっと殿下がくる前にお手洗いにでも行ったんですわ。少しタイミングが悪かったんでしょう。明日の朝にはいつも通り元気な姿を見せてくれますわ。だから、安心なさって……今日は眠りましょう。」

「……ああ、そうだな……。」


妃の言葉通り、明日には姿を見ることができると思っていた。


けれど、願いはかなわなかった。

朝になっても、あの子の姿はどこにもなかった。

船上という閉鎖空間の中だというのに……。


海に落ちた可能性も考慮し、周辺を捜索させたが、なにも見つからなかった。

いったいあの子はどこに消えたと言うのだろう……。


あの子のいない日々は、何もかもが、急に色褪せた日々へとなった。

新婚だというのに、妃にたいして、なんの思いもわかない……。


そして、気が付いてしまった。

私は……あの子のことを愛していたということに……。


妹のようだと、家族のようだと思っていた……。

けれど、あの子笑顔が生き甲斐だった、あの子の存在があって、息が出来ていた……。

あの子がいなくては息も出来ない……。

その事実に気が付いてしまった……。


妃との生活に何の不満もない。思いも無い。

何にも無いのだ……。


私の恋情はすべてあの子のものだ。あの子が持っていってしまった。

もう、他の誰にも与えることは叶わない。


結婚という国と国の契約を、今さら間違いだったと破棄することは出来ない。

できたとしても、想いをぶつけるあの子はどこにもいない。


私はこのまま……ずっとこのままだろう。

何にもない結婚、生きる意味も覇気もないまま停滞するのだ。


そして、妃にたいして恋情を持つことができない罪悪感を抱え言うのだ。


「愛しているよ……。」



人魚姫の話を読んでいつも不思議だった王子様の想い、その後を妄想しました。


楽しんでいただけたなら幸いです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 王子も王子で苦悩していたんですね。もう少し彼が気付くのが早ければ……と思わずにはいられません。
[良い点] とても共感できます [一言] レス不要ですよ(^o^) 今 するめ315様の書かれた王子さまと同じ様な喪失感があり、このお話を読むことができたタイミングにおどろいています 書いてくださって…
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