第二話 予感と不安
私には、常々思っていたことがいくつかある。例えば、『私はどうして、今ここにいられるのか』という漠然とした疑問、『もしかしたら、今ここにいられるのはすごく奇妙なことなのかもしれない』という勝手な思い込みなど。所詮薄っぺらい私の考え方だとそれで終わってしまう。でも、そんな月並みな考え方でも思いつくことはたくさんある。
その一つが、自分の家族についてだった。
けっして、家庭に問題があるわけではない。当たり前と言っては何だけど、本当にそういう感覚だったから、それを自分が考えた時に愕然とした。自分がどれだけ疑問を抱かずに、家族に依存していたかを知ってしまったから。
「だからって、今更」
そう、今頃になって気づいたのだから、仕方ないんだ――そう、自分を言い聞かせても、一度気づいてしまった自分の気の緩みはどうしようもなかった。気づいたら、もう離れられないくらい近付いている。ただ、自分がどうしてそこまで家族にこだわるのかはわからなかった。多分、先週の木曜日、十一時五十四分がなければ、ずっと気付かなかった。
「おやすみ」
「おやすみなさい」
母さんと、それだけの挨拶。それで一日は終わるはずだった。
「あ。何か留守電あったから、掛け直しなさい」
でも、その日私には電話されるほどの思い当たる用件がなかった。思いを巡らせてもどうにもならないので、一旦留守電を聞いてみた。後から思い返してみれば、あの時点で母さんは――あの人は、私との別れを決意していたのかもしれない。あの人の性格からして、留守電は真っ先に聞いていたはずだから。
『再生を始めます』
『もしもーし、貴方、クレハ? あ、ごめん今思い出したけど、もう連絡取るなって言われてたわ。ごめんなさいね。まあ、大した用件じゃないから後ででも構わないんだけど、とりあえず掛け直してくれる?』
『再生が終わりました』
私は、すぐに掛け直した。
相手は出なかった。
一年以上お待たせしました。すいませんでした。これからまたぼちぼち更新していきます。