1.白昼
穢らわしいと感じる
しかし、反面でそれに欲情している
踏み付けられた陸の、喉の筋肉が
微力にも俺の躰重を押し返そうとして居る
その、死に瀕して震える、びくびくとした喉の弾力がセックスの様だと俺は思った
家には他に誰も居ない
仮に居たとして、誰一人止める者など居なかった
こうした時間を過ごす時──実際には、一日の総てが『こうした時間』で形成されているが───俺は口元だけで嗤って居るのだと、最近気付いた
心に湧き上がるものは何一つ無いが、これはきっと俺にとって『楽しいこと』なのだろう
行為の後は、必ず煙草を吸うようにして居る
俺の憂鬱は一本の煙草が解決するものではないが、陸はそうではないらしい
この子供は、必ず煙草を一本だけ肺に入れる
もっとも
そうしなかった場合、俺が暴力を行うからなのだが
「お前は」
「煙草は好きか」
座して、陸の方を視もせずに聞く
いつもと同じだ
陸は答えない
ゆっくりと座って居る陸に近付くと、人差し指と中指の付け根辺りで横顔を殴り抜いた
交通事故実験のダミー人形みたいに、陸が弾き飛ばされて壁に頭を打つ
そのまま力無く畳に倒れる所も、人形のようだった
愉しくて、そのまま馬乗りになって殴ろうとする
防衛本能からか、逃げようとした陸が、うつ伏せの姿勢で僕の下敷きになる
顔の方が愉しかったが、後頭部を殴るのも悪く無かった
庇おうと頭を抱えた陸の指を、諸共に殴る
殴る手に伝わる感触で、陸の指が二本程折れたのが解った
痛みの閾値を超えたのか、暴力を加えても、はあはあと息を吐くだけだった陸の呼吸に、涙の音が混ざり始めた
この音は好きだ
屈服させたつもりになれる
実のところ、自分が何を屈服させたいのか、本当は俺は解って居なかった
一通り殴ると、陸はあらゆる反応を視せなくなった
呼吸すら、して居るのか解らない
いつか殺してしまうかも知れないが、もしかすると、俺は内心ではそれを望んで居るのだろうか
少なくとも「これ以上やると、殺してしまうのではないか」と考える時、いつも、真っ黒で昏い昂揚が胸の奥に在った
痛み止めも兼ねて、テーブルの上に在った缶ビールの残りを、仰向けで動かない陸の口に注ぎ落とす
少し咳込んだあと、陸が、けたけたと嗤い始めた
陸は昔の女が産んだ子だが、俺の子では無い
俺がこいつに欲情するのは、それが理由なのかも知れなかった




