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魔道人形の自分探し  作者: 白波 阿伎


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5/5

5.マーガレットの進む道

 翌朝、マーガレットと団長の天幕へ向かう。語り明かしたため睡眠時間はやや短かったはずだが、マーガレットは元気そうだ。


 入室?の許可が降り中へ入ると、団長だけでなくレイチェルもいた。


「よく来た。レイチェルにも事情は話してある。お前を監督するやつが何も知らんのは支障が出るし、信頼出来るだろう」

「過分なお言葉を頂き恐縮です」


 マーガレットの話によると、レイチェルの班に属しているらしい。班の集まりが部隊で、それが団を形成しているとの事だ。


「改めて昨日の件には礼を言う。被害が最小限で済んだのはお前さんのおかげだ」

「私からも感謝申し上げます。部下を始め、多くの団員を救って頂いた事は感謝してもしきれません」

「えと……大丈夫、です。気にしないで、ください」


 思わず丁寧に返そうとしたら、すっごいたどたどしくなってしまった。そもそもわたしは何だか喋るのが苦手だ。言葉で思考出来ても、口からだと上手く出てこない。マーガレットからは口下手凄腕剣士だったのではないかと言われた。どういう人なのそれ。


「ぷっ。おいレイチェル。お前が堅すぎるから嬢ちゃんが変になったぞ」

「そう言われましても、貴賓として扱えと団長が言われたのではないですか」

「本ッ当に堅いなお前は……。事情を知ってるんだからもう良いだろう」


 おほん、と咳払いし団長が続ける。


「さて、ここからが本題だ。単刀直入に言おう。ルミナの嬢ちゃんはこれから団員として籍を作り、マーガレットと共に王都へ向かう任務に当たってもらう」

「籍って、ルミナさんに入団してもらうんですか?」


 うーん、これは……


「たぶん、身元保証?」


 そう聞くと団長はニヤリと笑みを浮かべる。


「そういうことだ。振って湧いた謎の人物じゃ、検問所ですぐに引っかかるからな」

「あぁ~、確かにそれは必要ですね……。ではもう一つの任務とは何でしょう?」


 そう聞かれた団長は「ああ、これだ」と言い、1枚の封書を指し示す。


「これを王都に届けてもらう。届け先は魔導研究所だ」

「あれ、王城や銀鹿(ぎんか)騎士団とかじゃないんですね」

「あのなぁ、そんな場所に従士と謎の新入りだけで行かせられんだろ…。今回の件を報告しとくんだよ。魔物の出現域に異変あり、ってな」

「魔導研究所は魔法や魔導具に魔物など。魔力に関わる物全てを研究し取りまとめている。今回の様な情報が早めに集まり兆候がわかれば、被害を抑える事が出来るかもしれん」


 そうレイチェルが補足する。いくつか聞き慣れない名詞が出てきたが、思ったよりわたしの目的に近づけそうな目的地が提示された。


「気を使ってもらった?」

「それもあるがな。……地域も規模も違うが、最近こういった件は何度か報告に上がってんだよ。面倒な事になりそうだ」


 それを聞いて、レイチェルが少し困った顔をしている。


「今後起こりうる問題もです。が、今回の作戦も副団長に再考した方が良い、と言われていましたから……」

「そうなんだよなぁ……。まぁ大目玉は確定だろうな!」


 大きな声で「ハッハッハ!」と笑う団長。どうやら副団長は真面目な人らしく、いつも団長に小言を言っている、そんな感じらしい。わたしからすれば団長はしっかり仕事をしている気がするけど。


「ま、そういうことだ。ついでに古代魔導人形について詳しそうなやつがいるだろうから聞いてくると良い。ただ学者なんて大なり小なり変なヤツらだから、気をつけるんだな」

「うん、分解されないようにする」

「ルミナさんが分解されるような相手だったら、私は打つ手がないんじゃ……」

「お前はもう少し鍛えてもらうんだな。移動中にいくらでも時間があるだろう。……よし、レイチェルは嬢ちゃんを連れて手続きと準備を頼む。マーガレットは任務の詳細を伝えるから残れ」




 そんなわけで私はレイチェルに連れられ天幕を出て、備品が保管してある天幕へと案内される。ちなみに昨日大立ち回りで大々的に面が割れてしまったため、堂々と陣中を歩けた。騎士であるレイチェルが先導している為かあまり騒ぎにはならないが、耳目は集めているようだ。


「これより団員としての認識票と装備品、移動にかかる経費などを支給します」

「班で動かなくて良いの?」

「団長曰く、貴方には結果的に数多くの団員を救ってもらったので自らの目的を優先して欲しい、人数は最低限の方がそうしやすいだろう、と仰っていましたよ。昨日の戦いを見て道案内だけで済むと判断されたようです」

「わたしは助かるけど、一緒に行くマーガレットは?」

「恐らくですけど姪であるマーガレットに色々経験して欲しいんじゃないでしょうか。頑張って隠そうとはしてますが、仲が良いのは一目瞭然ですから」




 うーん、身内贔屓な気がするけどいいのだろうか?






********************







「王都に着いた後もルミナさんを護衛する、ですか?」

「そうだ」


 団長からそう告げられ困惑する。任務完了後もルミナさんに付き添うということ、そして彼女の目的は文字通り()()()()という、見つかるかどうかわからない事。それはつまり――――


「それじゃ、団には戻るなって事ですか……?」

「別にずっと、って訳じゃない。どのくらいかかるかは知らんが、顛末くらいは見届けろ」

「それ結構かかりそうな気がしますけど!なんなら見つからない可能性だってありますよ!私は叔父様に憧れて騎士を目指したのであって「それなら尚更だろう」


 遮るように言われ、思わずどういう事かと抗議の視線を送ってしまう。 

 

「俺だって若い時は冒険者として方々を旅したんだ。旅の中で目標としたヤツや、師と仰いだ人だっている。要は勉強になったのさ。勿論このまま騎士を目指したって腕は上がるだろう。が、強ぇ奴から直接教わる機会なんてどうしても少なくなる」

「……ルミナさんに鍛えてもらいながらってことですか」


 言わんとしていることはわかる。ただ私は騎士を目指して強くなろうとしてきた。そう考えると本流から外れすぎるのでは、騎士になれなくなるのでは、と感じてしまった。


「お前はどこまで昨日の戦いを見ていたかわからんがな。体幹や手の使い方に脚捌き。緩急のつけ方や力を殺さずに戦い抜く立ち回り。ありゃ間違いなく強者だ。古代魔道人形(アンテレア・ゴーレム)の身体の恩恵はあるかも知れんが……。まぁ人間離れしてても人間らしい動きはしてたから、前も凄腕だったんだろう」


 不思議な言い回しでそう表現する。いわゆる超人的な動き、という事かもしれない。


「そんなにですか?」

「あくまで昨日見た限りだがな。そんな奴に教えを請えれば、一皮むけるのも夢じゃないだろ?」

「確かに出来る範囲でしごいてあげる、なんて言われましたけど……」

「お、そうかそうか!本人がそう言ってたなら期待は出来るな!」


 上機嫌そうに言いながら団長は続ける。


「いいかマーガレット。優秀な師ってのは本当に得難い。例え教えるのが下手でも見るだけで勉強になる。特に今のお前はある程度基礎を終えた後だから尚更だ。そしてそんな強者と一緒に旅をする、これ以上の条件はない」


 そう言われてしまうと「……はい」としか言いようがない。少し腑に落ちない感じもするが、確かに絶好の機会でもある気がする。そんな感じで迷っていると……




「……これはあくまで独り言だ。誰が聞いていても吹聴しない限りは何も起きん。……最近、魔道研究所は魔力の流れがここ数年でかなりの変化が起きていると調査結果を出している。その影響はわからんが、王国内だけでなく大陸全土で火山活動や潮流の変化が観測されている。そして出現域を外れた魔物の騒ぎだ」


 団長はふーっ、と息を吐きながら、頭を悩ませているように言う。




「先ほどはレイチェルの手前、何度か、と言ったが実際は違う。()()()だ。今回この作戦が危険を承知で進められたのも、別個に、かつ内密に正規の騎士達を大勢動員してまで対処しなきゃならん地域が別にあっただけだ」


 今回の作戦は従士による小型魔物の討伐だった。要は騎士達の本隊にとって従士達では足手纏いということだろうか。それにしたって人手としていくらでも使いようがあったのではないだろうか?何も直接戦わなくても、後方支援とかやり様があるような気がするけど。


「王国の東部領域と東のノルディア帝国の国境付近、交通の要衝に死神騎士(デュラハン)が出たんだよ。アイツがいると広範囲に不死者(アンデッド)が沸く。昼夜問わずだ。そんな所にひよっこ共を放り込んでみろ。恐慌が起きて被害が広がるだけだ。副団長には従士の人数調整で文句を言われたがな」


 思わず生唾を飲む。そんな災厄級の魔物が発生していたなんて。しかも海に面したノルディア帝国とは物流が盛んと聞いたことがある。東西に長いシルヴァニア王国の東部領域においては塩や海産物は欠かせない。西からの物流だと人足がかかるし、距離が延びれば何かしらの被害に会う恐れも増えるからだ。


「幸いノルディアとは話がついてる。対処は出来るだろう。問題はこれが今回だけで終わるとは思えないんだよ。来るべきその時の為に、一人でも良いから優秀な奴がいる。そして出来れば戦況をひっくり返せるような強者が良い」


 ここまで言われてようやく私にもわかった。これは思ったよりかなりの大事だ、と。






「従士マーガレット・フォスターに任務を言い渡す。これよりルミナ嬢に協力し、彼女の目的を達成せよ。しかして、彼女に対し王国への協力を要請、説得せよ。そして可能ならば彼女を取り巻く有力者達も、だ」

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