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魔道人形の自分探し  作者: 白波 阿伎


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4.魔狼襲来

 団長が去ってからわたしとマーガレットは色んな事を話した。不世出の冒険者、そして騎士である叔父に憧れ、今の道に至ったこと。女だてらに騎士を目指すのに、応援してくれた温かい家族の話。


 他にもレイチェルと呼ばれていた上司の騎士を褒め称えたり、そんな彼女に憧れ女性でも騎士を目指す者が増えてる事。そしてそんな同僚達と誰が先に騎士になれるのか賭けをしているらしい。




「いやぁ、一歩間違えてたら魔狼に食べられて、今日賭けに負けてたかもしれないんですよねぇ」

「……マーガレット」


 軽く言う彼女にわたしは思わずジトっとした目で諌める。


「もちろん怖くはありましたし、命を軽く考えてるわけじゃありません。ただ、騎士を目指す以上いつ何時、命を落とすのかわかりません。他の方もそうですけど、遺書は書いていますし覚悟しているつもりです」


 魔物の蔓延る地へ踏み入る職業として、割と一般的だそうだ。前のわたしもそうだったのだろうか?


 マーガレットは「それでも軽いって良く言われるんですけどね」と笑いながら言う。ある意味、必要以上に考えないようにしているのかもしれないが。


「なんか不安。出来る範囲でマーガレットの事をしごいてあげる」

「え゛っ!?」

「大丈夫。さっき剣を振ってて、たぶん(ドラゴン)とか巨鬼(オーガ)くらいなら戦ってた記憶がある」

「そんなの即ご飯にされちゃいますよ!!というかルミナさん、そんなのと戦ってたんですか……?」

(ドラゴン)とか巨鬼(オーガ)くらいじゃ大した事ない、たぶん」

「くらい、って言ってる時点で、少なくとも一般的な人間は辞めてると思います」


 今度はわたしがジト目で見られてしまった。確かに厄介な相手ではあるが、古竜(エルダードラゴン)死神騎士(デュラハン)と比べれば、天と地ほどの差だろう。ああいう手合いはもはや災厄の類だったはず。まぁ、まず人の生活圏には重ならないけど。


「でもまぁ、強いにしてもどれくらいの力量なのかは知りたい所じゃないですか?出生の秘密を探るにしても、下手したら危険なとこへ行くかも知れないですよねぇ」

「うん。だから自分にあった武器も欲しい。この身体、力は強いけど小さい」

「あ~、確かに。私より頭一つ分小さいですもんねぇ。刀身の長い剣なんかは引き摺っちゃいそうです」

「でも両手持ちの方がしっくりくるし、威力を考えると取り回しより長さ重視が好きかな」


 さっき木剣で型の練習をしていた時の感想だ。




 その後は武器談義に花を咲かせた。マーガレットはショートソードと小型の盾で、取り回しやすさ重視の戦法だ。わたしはどうやら大型の魔物の相手も多かった(少しづつ思い出してきた)ので、とにかく威力重視だ。彼女には「なんか筋肉の塊みたいな先輩騎士っぽい感じですね!」と、ほぼ悪口な感想を言われた。ひどい。




 それから時折、レイチェルと呼ばれた騎士が天幕の外からマーガレットを呼び話をしたり、わたしは木剣を握りながら戦闘のイメージをしていた。

 そして日が落ちてしばらく経った、その時――――――


「敵襲ッ!!敵襲ッ!!総員戦闘態勢!!」


 陣に怒声が響いたのであった。




 急いでマーガレットと身支度を整え、とりあえず天幕の中に置いてあった長めの剣(予備らしい)を引っ張って出る。天幕の外にはレイチェルと呼ばれた騎士がいた。


「先輩!状況は!?」

「北側に魔狼が出た。結構な数だ。お前が報告を挙げていたおかげで作戦中の団員達は全員帰陣しているが、いかんせん騎士が少なく従士だらけで状況が悪い。幸い数が居るからまだ睨み合いだが、いつどうなるかわからん。お前を残して私も前へ赴く」


 そう言いながらレイチェルはわたしの方を見た。プレートアーマーを着用しながらも重たそうな印象は受けない。かなり腕が立ちそうだ。


「ルミナ様ですね。挨拶がこのような形になり申し訳ありません。団長からお話を伺っておりますので、貴方様はここで「わたしも行きます」


 言うや否や剣を持ちながら走りだす。正直北がどっちかわからないが、陣の間からかがり火が見えるので間違いないだろう。

 後ろから「お、おいっ!」「はやっ!」と声が聞こえるが関係ない。マーガレットが仮に優秀(自称)なら、他の従士では相当の犠牲者が出るはず。


 少し大きい陣だが直ぐに前線へと着く。これでも全速力は出していない。というか出したらどっか飛んでくかもしれない。これが古代魔道人形(アンテレア・ゴーレム)の性能なのだろうか?


 眼前には魔狼の群れが距離を置きながら様子を伺っている。こちら側では盾を構えて警戒する者、松明を投げたり構えたりして威嚇する者。弓や魔法を使っている者も少数いるが、距離を取られすぎて威嚇射撃程度にしかなっていなさそうだ。


 その中に知っている人影を見つけて声をかける。


「団長」

「うおっ!?お前さん来ちまったのか!?」

「手伝うよ」


 言葉少なに用件を告げる。団長はそれを聞くと逡巡した後、喋り始める。


「やつらの動きが変だ。普段は魔物だけあって凶暴だが馬鹿じゃねぇ。これだけ人数差がいれば、いくら頑丈な奴らでも被害は出る。なのにこれだ」

「何か異常が起きてる?」

「ああ。それが何なのかわからんがな。……これは勘だが、何か別のが居る気がする。俺の勘は良く当たるんだぜ?だから下手に突っ込めなかったのさ」


 団長は「だが」と続ける。なるほど()()()()()()()()、というわけだ。


 そう判断すると地面を蹴り正面の魔狼へと肉薄する。「あっ、おい!」という声が聞こえたが関係ない。……さっきから突っ走ってばかりな気がする。




 初?遭遇時は遠慮したが今回は違う。勢いをそのままに踏み込み右から左へと大きく薙ぎ払うと、鈍い音と共に魔狼が凄まじい速度で横っ飛びしていく。あれなら仕留めれたはず。

 即座に右の方にいた魔狼へと飛び掛かり上段から剣を振り下ろし叩き潰す。あとはもう作業だ。力を削ぐことなく、流れるように。しかして静と動を織り交ぜながら、ひたすら次から次へと剣を叩き込む。


 混乱し始めた魔狼の群れがにわかに動き始めるが、前線へ近づいたものは団長や少数だが騎士達に阻まれている。レイチェルとマーガレットも合流したようで姿が見えた。



 そこそこの数を倒したが、様子がおかしい。魔狼は狼だけあって、狩りにおいては合理的だ。群れで狩りをし、獲物の隙をつき、的確に急所を狙う。そしてそれが無理ならば気を伺うか逃げる。

 だがどうしたものか、この群れは一向にその気配がない。半数ほどは減らしているのにも関わらず、だ。


 そう思いながら、また一匹と魔狼を切り伏せた時だった。


「ガアァ!!」


 隙を狙って森の陰から、ひと際大きい魔狼がわたしに飛び掛かってくる。身を翻しながら回避しつつ蹴ってみるが、かなり重くあまり吹き飛ばせなかった。わたしは剣を正面に構え大きい魔狼と対峙する。軽く見積もって魔狼の倍は大きい。


「うおっ、地獄の番犬(ヘルハウンド)じゃねえか!嬢ちゃん大丈夫なのか!?」


 チラ見すると団長が魔狼を叩き潰しながら心配してくれる。器用だなこの人。

 上位魔物の出現に前線もざわついている。まぁこのサイズの魔物なんて見る機会はそう無いから仕方ない。


「大丈夫。というかさっきから木陰で、こっちを伺ってるのは見えてた。大きいから」

「マジかよ……。見えてるって、あっちは真っ暗じゃねーか」


 恐らく身体(わたし)の性能が良いのだろう。我ながら便利な身体である。


「いけるのか?」

「大丈夫。というか試させてほしい」

「試すってお前なぁ」


 思わず、といった感じで団長があきれているのを横目に、剣を背負うような構えを取る。先ほどは迎撃し損ねたが、今度はしっかりと決める。




 そう意を決した時、地獄の番犬(ヘルハウンド)がわたしを抑え込まんと飛び掛かってくる。

即座に片足を引きつつ、体を最大出力で捻りながら 地獄の番犬(ヘルハウンド)の頭目掛けて剣を振りぬく。如何に大きかろうが重かろうが関係ない。最大限の力を弱点に効率よく叩き込む。


 激しく鈍い音と共に地獄の番犬(ヘルハウンド)の頭が地面へとめり込む。地獄の番犬(ヘルハウンド)は少し痙攣した後、完全に動かなくなる。勝負は決した様だ。


「よし」


 勝利を確信し、剣を振る。


 一拍の静寂の後、「「「「うおぉぉぉぉっ!!!」」」」と鬨の声が響く。


「しゃあ!やるじゃねえか!つーか滅茶苦茶つええな!」


 団長が握りこぶしを掲げる。


「お前ら!油断せず残りも対処に当たれ!嬢ちゃんに守られるだけだったら騎士とは言えねぇぞ!!」




 団長の檄により戦場が静けさを取り戻すのは程なくしてだった。











「いや、助かったぜ。重症のヤツはいるが、誰も死ななかったからな」


 先ほどの戦いの事後処理が済み、今は騎士団長用の天幕にお呼ばれ中だ。あまり夜分に女性を呼び出すものではないと思うが、生憎と人ではないし良いのだろうか?


「しかしあれだけ戦えるとは思わんかったな。今の俺だと普通に負けそうだ」

「そうなの?」

「そりゃそうだろ。前線でバリバリやってた頃から何年経ってると思ってる。こちとら爺だ」


 そう言うと団長は苦笑いしながら無精髭の生えた顎をなでている。先ほどの動きを見ていた感じだと地獄の番犬(ヘルハウンド)程度には後れを取らなさそうだが。


「それにしても。あまり状況は良くない」

「ああ。こんな森の浅い所に地獄の番犬(ヘルハウンド)が出やがった。多少なりとも城壁のある町ならともかく、村ならすぐに全滅だ」


 「それにだ」と団長が続ける。


「お前さんのことを団員にどう説明するか、これも問題だ」

「なんか団長の知り合いで、凄い冒険者の親戚、ってことにするとか」

「お前なぁ……いや、でもそれならまだマシか。冒険者連中は大陸中をぶらぶらしてるやつも多いしな。名前を出さずに匿名で預かった事にすれば或いは……」


 適当に言っただけだが採用されたようだ。


「いいの?」

「仕方ないだろ。助かったのは事実だしな。……あとは正直なところ、古代魔道人形(アンテレア・ゴーレム)をどうこう出来た技術者が背後にいるなら、恩を売っておくって意味でも良いだろ?」

「それ、本人に言うことじゃない。実際どうだったのかはわからないし」


 そう呆れると「そりゃそうだがな!はっはっは!」と豪快に笑う団長。


「ま、何にせよ皆には上手い事言うだけだ。あとは最初に言った通り、明日に話を詰めるぞ」

「わかった」


 話が一区切りしたところで、マーガレットの待つ天幕へ戻っていく。




 目が覚めたばかりだが随分と濃密な一日だった。でも思ったより剣を操れたしなんとかなるかな、とも思う。一つでも頼れるものがあるのは良い事なのだ。


 今日の事はマーガレットが眠ってからゆっくりと思い返そう。正直、精神的には疲れたかもしれないが、身体的にはまったく疲れておらず、眠くなりそうな気配もない。まぁ古代魔道人形(アンテレア・ゴーレム)だからね。今はその事実に感謝しつつ、有効に活用させてもらおう。






――――――そう思ったのだが


「ルミナさん!遠目でしたけど凄かったです!ぜひ戦いの詳細を教えてください!!」


 興奮したマーガレットに一晩中、根掘り葉掘り聞かれるとは思わなかった。

ルミナさんは剣をぶんぶん振るのが楽しい質。高性能脳筋です。

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