第44話『再会』
魔法広場を満たす光は、もはや夜空の星々よりも眩しかった。
蒼真が両手を伸ばし、始原晶へと魔力を注ぎ込む。アルシェが大気のマナを引き寄せ、ミラが幾何学紋を制御し、ロイが剣を握りしめて見守る。
四人の気配が重なり合い、広場の床に刻まれたクリスタル回路が眩い網となって輝き始めた。
「……来るぞ」
ロイが低く呟いたその瞬間――
砕けていた晶鋼巨人の核が、まるで心臓を打つように震えた。
青白い光脈が砕けた欠片の隙間を縫い、ひとつ、またひとつと繋がっていく。
――ドン。
大地が低く鳴った。
石と結晶が軋み、半壊していた巨体に徐々に血流のような輝きが走る。
「……まだ制御が甘い! 死にたくなければ意識を切らさないで!」
ミラが鋭く叫ぶ。
「わかってる!」
蒼真は額に汗を浮かべながらも、決して視線を逸らさなかった。
心の奥で呼びかける。――再び共に戦ってくれ、と。
やがて核から放たれる光は頂点に達し、広場全体を包み込む。
バラバラだったクリスタルゴーレムの巨体が、ゆっくりと繋がりを持ち、再生していく。
長い眠りから目覚めるかのように、虚ろだった眼窩に青白い光が宿る。
「……成功、したの?」
アルシェが息を詰める。
巨人の胸部で光が脈打ち、ゴウン、と低い鼓動音が広場を揺らした。
それは大地そのものが呼吸しているような荘厳な響きだった。
次の瞬間、クリスタルゴーレムの視線がまっすぐにアルシェを射抜いた。
巨体が膝を折り、地を震わせて跪く。
その眼窩の光が、深く頭を垂れる仕草と同調して瞬いた。
「……主人」
ゴーレムの核から伝わる共鳴が、確かにアルシェの胸に響いた。
アルシェの身体が小さく震えた。
「おかえりなさい」
その問いかけに応じるように、ゴーレムの胸部の核が強く脈打ち、彼女のマナと共鳴した。
蒼真もロイも、ただ言葉を失ってその光景を見つめていた。
その時、複数の足音とともに、図書館での調査組が広場へと駆け込んで来た。
リュミエールが目を見開き、呆然と呟く。
「……ゴーレムが……復活を……」
グラントが髭を撫で、低く唸った。
「やれやれ、間に合ったか。見事なものじゃ」
「……すごい」
セラフィナは胸に手を当て、祈りにも似た吐息を洩らす。
ゴーレムの足音が、地を打ち鳴らすように広場へ響いた。
その姿は完全ではなく、砕けた痕跡をなお背負っていたが、それでも確かに“守護者”として立っていた。
蒼真は安堵の息をつき、調査組に向き直った。
「そっちはどうだった?」
リュミエールは静かに首肯し、手にした古文書を掲げる。
「……セレーネに関する痕跡は断片的ですが、決定的なことがわかりました」
仲間たちの視線が彼女に集まる。
リュミエールは一拍置き、低く告げた。
「ダークエルフは……日の光の下では生きられません。彼らは“永夜の地”、影の国――ネファルティスに集っているのです」
「一度入れば戻らぬ闇、と伝わる地じゃ。勇気ある者も愚か者も、その名を口にするのを避けるほどにな」
そう口にしたグラントの声には重さがあった。
セラフィナは決意し、静かに言葉を添えた。
「けれど、私たちは行かねばなりません。セレーネを見つけるために」
「守護者も甦った。あとは……腹をくくるだけだな」
ディランが剣を軽く抜き、刃に映る光を見つめた。
巨人の足音が再び響き渡る。
その鼓動は、まるで一行を次なる地へと駆り立てる合図のようだった。
こうして、蒼真たちの次なる目的地は定まった。
――永夜に閉ざされた影の国。
そこに、百年前の真実とセレーネの運命が眠っている。




