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『異世界造船』〜勇者なんてやらない。宇宙船作って彼女の待つ地球へ帰ります〜  作者: 新月 望


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第18話『魔法都市の休日』

 港町の喧噪を抜け、魔法都市アルミナの石畳を踏みしめる。

 海風に混じるのは硝子のように澄んだ鐘の音。

 街全体に魔力が流れているのがわかるほど、空気が濃い。


「さて、ひとまず自由行動といこうじゃないか」

 グラントがそう言うと、みんなが顔を見合わせる。

「停泊させた船は巨人(ゴーレム)がしっかりと守ってくれておるし、合流は日が傾く頃でよかろう。のぅ?」


 各々やりたい事がある一向。誰の口からも反対の二文字は出てこなかった。


 まず最初に行き先を口にしたのはグラントだ。

「ワシは魔導器具や魔法薬を見に市へ行くぞい。ここの薬は特に珍しい成分を使っとるはずじゃ」

 彼は興奮気味に路地へ消えていく。

「……また変なもの買ってくるんじゃないだろうな」

 蒼真がぼそりと呟くと、アルシェが肩をすくめた。

「むしろそれ以外の未来が見えないんだけど?」


「おれは……まぁ決まってるよな」

 豪快に鼻を鳴らし、港町の酒場へと向かうバルドラン。

「英雄様の羽休めってやつさ」

 背中を見送りながら、アルシェが苦笑する。

「どうせ飲み比べで一晩潰すんでしょ」


「アルシェはどうするんだい?」

「私は……とりあえずお風呂! 潮風で髪がギシギシなんだから」

 彼女は腰まで届く髪を撫で、さっさと宿屋街へ向かう。

「女の子は身だしなみが大事なの!」

 去り際にそう言い放ち、残った蒼真に釘を刺すように睨む。


 一人残った蒼真が呟く。

「何も言ってないじゃないか……」

(うーん、どうしようかな? やっぱり情報収集なら……)


 こうして蒼真一向は各々の欲望を満たす為、別々の目的地へと向かった。



 ⸻魔導器具と魔法薬の市にて


 アルミナの魔導器具市は、露店の一つひとつが異様な輝きを放っていた。

 試験管に封じられた光の粉、魔力を溜め込む水晶片、さらには、自動攪拌する鍋など、妙ちきりんな品まで並んでいる。


「ぬぅ……これは面白いのう!」

 グラントは目を爛々と光らせ、煙を吐く小瓶をひっつかむ。

「おい、じぃさん! それ、開けちゃ駄目だ!」

 露店の主人が慌てて止める。

「これは北方の瘴気を凝縮した実験素材で素手で触ると三日は寝込む代物だ!」


「ほっほっほ、それは素晴らしい! 二つくれ!」

「買うのかよ……」

 隣の客が呆然と呟く中、グラントは財布を弾き、両手いっぱいに怪しげな器具を抱えて意気揚々と去っていった。



 ⸻とある酒場にて


 陽気な音楽と笑い声に包まれる酒場。

 船乗り達がどんちゃん騒ぎをする中、バルドランは樽ジョッキを片手に腰を下ろした。


「よぉ、お前さん! 飲むか?」

「おう、相手になってやるよ!」

 瞬く間に、飲み比べ大会が始まる。


 ごくごくごく――。

 ジョッキが何度も空になり、周囲が次々とテーブルに突っ伏す中、バルドランだけは涼しい顔で樽を抱えていた。


「次は腕相撲だ!」

「望むところだ!」


 巨漢の船乗りたちが次々と挑むが、誰一人勝てない。

 最後には「バルドラン! バルドラン!」と大合唱が起こり、彼は片手でジョッキを掲げ、誇らしげに笑った。



 ⸻宿屋の浴室にて


「ふぅ……やっぱり潮風ってべたつくのよね」

 アルシェは宿屋の浴場に浸かり、肩まで湯に沈む。

 湯気に包まれた銀髪が、月光のようにきらめく。


(……結局、蒼真ばっかり頑張っちゃってる)

 心の中で小さくため息をつく。

(あいつ、もっと無茶をするつもりなんじゃない? ただでさえ、放っておけないのに……)


 湯気に隠れて、ほんの少しだけ赤くなる頬。

「……バカ」

 小さく呟き、湯を指ですくいながら、彼女は仲間のことを思っていた。

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