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『異世界造船』〜勇者なんてやらない。宇宙船作って彼女の待つ地球へ帰ります〜  作者: 新月 望


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第10話『探索と連携』

 洞窟の口に立つと、外とはまるで別世界のような冷気が流れ出してきた。

 蒼真は無意識に身を震わせる。ひんやりとした風に混じる、鉄錆のような匂い。湿った石の壁には苔がびっしりと生え、しずくが時折滴り落ちては、硬い地面に小さな音を響かせた。


「……ふむ。やはりここは古代の鉱脈じゃな」

 グラントが壁に手を当て、岩肌を確かめながら呟く。

「炎成岩の成分に混じって、魔力結晶の反応がある。奥には必ず希少鉱石が眠っているぞ」


「よっしゃあ! 鉱石も魔物も、俺がまとめてぶっ叩いてやるわ!」

 バルドランは胸を張り、肩に担いだ鉄槌を軽く振る。低く重たい音が響いて洞窟内に反響した。


「バルドラン……騒ぐと余計な魔物を呼ぶわよ」

 アルシェが冷ややかな視線を送る。

「へっ、俺は、ちまちま静かに歩くより派手に暴れるほうが性に合ってんだ!」


 そんなやり取りに、蒼真は苦笑を漏らす。

 しかし、洞窟の暗闇を見据えたとき、笑みはすぐに消えた。


(暗い……。まるで映画の廃坑を探索するシーンのようだ。でも、ここは映像なんかじゃない。確かに俺は今、この異世界の鉱脈に立っている……!)


 蒼真は腰のランタンを灯した。

 オレンジ色の光が岩壁を照らし、足元の水たまりに反射して揺らめく。

 光が届くのはほんの数メートル先まで。すぐ先は闇に飲まれていて、何が潜んでいるのか分からない。


「……っ!」

 唐突に、奥から風のような音が響いた。

 それはただの風ではない。獣の荒い息遣いにも似ていて、洞窟の中にこだまする。


 蒼真は思わず剣の柄を握った。

「みんな……今の、聞こえたよな?」


「聞こえた。……歓迎されていないのは確かじゃな」

 グラントが冷静に頷き、杖を構える。


「ふん。魔物ならちょうどいい。腕が鳴るぜ!」

 バルドランが前に出ようとしたとき、アルシェが静かに制した。


「待って。音の大きさ……数は一体じゃない。群れで待ち伏せしているわ」

 その声音は張り詰めており、蒼真の背筋にも冷たいものが走った。


 洞窟の奥。ランタンの光の届かない闇の中で、赤く光る複数の瞳が、じっと彼らを見つめている。


 そして、その血のごとく赤い瞳が一斉に動いた瞬間、洞窟内の空気が一変した。


「来るぞっ!」

 グラントの警告と同時に、影の群れが闇から飛び出す。


 現れたのは、鋭い牙と黒光りする鱗を持つ 岩蜥蜴ロックリザード の群れだった。

 四足の体で素早く地を駆け、鋭い爪で岩を抉りながら迫ってくる。

 一匹一匹は狼ほどの大きさだが、十数体も一斉に動けば地響きが起き、相当な圧力を感じる。


「ちっ、こいつら、群れで連携してくるわ! 蒼真、気を抜かないで!」

 アルシェが弓を引き絞り、放った矢が光を帯びて最前列の一匹の目を正確に射抜く。


「任せろッ!」

 バルドランが雄叫びを上げ、鉄槌を大上段に振り下ろす。

 金属が石を砕くような衝撃音が響き、突進してきた岩蜥蜴の首が粉砕された。

 血飛沫ではなく、体内の鉱石が砕け散るようにキラキラと破片が飛び散る。


 しかし倒したのは一体。残りは次々に仲間を乗り越えて突っ込んでくる。


「蒼真!」

 アルシェが短く名を呼ぶ。


「……分かってる!」

 蒼真は両手をかざし、魔力を練った。

 秘密の特訓を繰り返した成果が、今こそ試される時だった。


「――燃えろ、《ファイア》!」


 彼の掌から火球が生まれ、轟音と共に前方に放たれた。

 炎は狙い違わず、岩蜥蜴の群れの中へ。

 爆ぜる熱気に数匹が怯むが、体表の硬い鱗が炎を弾き、すぐに立て直して突っ込んでくる。


(ちっ……直撃でも倒しきれない!?)


 その瞬間、後ろからバルドランの豪快な声が飛んだ。

「いい火力だな、坊主! だったら足りない分は、俺が合わせてやる!」


 バルドランは蒼真の火球が炸裂した瞬間に鉄槌を地面へと叩きつけた。

 轟音と共に地面が割れ、火球の熱で脆くなった一部の岩が崩れ落ちて、岩蜥蜴たちを巻き込む。


「なるほど……!」

 蒼真の目が見開かれる。

(俺の火球じゃ倒せなくても、バルドランの怪力と組み合わせれば勝てる……!)


 しかし群れは止まらない。側面から数体が突破し、蒼真に迫った。

「くっ!」

 苦し紛れに剣を構えるが、間に合わない――


「下がれ!」

 グラントの叫びと同時に、強烈な風圧が横から吹き抜けた。

 突風が岩蜥蜴を壁に叩きつけ、骨が砕ける音が響く。

「ふぅ……相変わらず制御が大変じゃな」


 そこへ、アルシェの矢が次々と飛び、倒れかけの岩蜥蜴を仕留める。


 息を切らす蒼真の横で、バルドランが笑った。

「おい坊主、いいじゃねえか! お前の炎と俺の鉄槌で大暴れできる!」


「俺一人じゃ力不足だ。でも……みんなと連携すれば!」

 蒼真は再び魔力を練る。


 今度は火球を大きく膨らませるのではなく、地面を這うように広げた。

「地面を熱して……爆ぜろ!」

 火の粉が鉱石混じりの岩盤に染み込み、内部の鉱石を膨張させる。

 直後――轟音と共に爆裂音が響き、群れの足元で連鎖的に岩が弾けた。


「おお! おもしれー! 足場ごと吹っ飛ばす作戦か!」

 バルドランは鉄槌を振り上げ、その爆発で浮き上がった岩蜥蜴を豪快に叩き落す。


「蒼真……」

 アルシェの視線がわずかに柔らかくなる。

(彼の工夫が、戦いの流れを変えてる……)


 最後の一匹を、グラントの放った風刃とアルシェの矢が同時に貫き、戦闘は終わった。


 蒼真は肩で息をしながらも、剣を握る手を離さなかった。

(……勝てた。みんなと一緒なら、俺でも戦える……!)



 ⸻


 洞窟の空気がようやく静まり返った。

 黒焦げた岩蜥蜴の亡骸からは、じゅうじゅうと煙が立ち上り、血ではなく鉱石のような欠片が散らばっている。

 蒼真は剣を鞘に収め、膝に手をつきながら大きく息を吐いた。


「……はぁ、はぁ……なんとか、倒せた……」


 汗が滴り落ちる。

 自分の炎で倒したのではなく、仲間の力と組み合わせたからこそ勝てたのだと、蒼真は痛感していた。


「ハハハハッ!」

 豪快な笑い声が響き渡った。

 バルドランが鉄槌を肩に担ぎ、満面の笑みで蒼真の背中を思いきり叩く。


「よくやったじゃねえか坊主! お前の炎、俺の武器と組み合わせりゃ最強だな!」


「うぐっ……!」

 蒼真は盛大にむせながらも、妙に嬉しくなって笑った。

「いや、俺一人じゃ何も出来なかったよ。でも……一緒に戦えば、こんなにも強くなるんだな」


「そうだ! 戦いってのは一人でやるもんじゃねえ! 力をぶつけ合って、合わせて、ようやく勝ちを掴むんだ!」

 バルドランの言葉は荒っぽいが、胸の奥に響いた。


 その横で、アルシェは弓の弦を調整しながら、ちらと蒼真を見やった。

「……思ってたより、悪くなかったわ」


「えっ……」

 不意に向けられた言葉に、蒼真は思わず固まる。


 アルシェはすぐにそっぽを向いたが、その耳がほんのり赤く染まっているのを見て、蒼真の胸がくすぐったくなる。

(……なんだよ、それ。褒めてくれたのか? 流石に今のは皮肉じゃないよな……?)


「アルシェが素直に人を褒めるなんて珍しいのぅ。明日の天気は槍が降りそうじゃな」

 グラントが皮肉気に微笑むと、アルシェは弓を強く握り直して反論した。

「べ、別に認めたわけじゃない! ただ……少しは役に立ったってだけよ! それ以上何か言ったら、矢を降らすわよ?」


「……はいはい」

 グラントの肩をすくめる仕草に、蒼真は苦笑いを漏らした。

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