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プロローグ

初投稿です。

俺の名前は(スガ) 快斗(カイト)

 昨日までは何処にでもいる普通の高校生だったが、

今朝、父さんの会社が倒産することになった為、我が家には大量の借金がのしかかる事が知らされた。

(ちなみに父さんは「社員に報告してくる」とだけ言って、無言で会社に向かった)

 

今は自室の天井を眺めながら、(せっかくの休日が最悪のスタートだ)(じいちゃんも死んだばかりなのに)(このままじゃ1050年地下行きか)(父さんと倒産で韻が踏めるな)などと色々な考えが脳内を巡っている。

 だが当然、どれだけ考えても借金が消えるはずもなく、はぁと溜め息をこぼす。

 

「よし、気分転換に家の掃除でもするか!」

 とりあえず今は考えても仕方ない。

 それに今は少しでも金が欲しい。

 とにかく家中から少しでも売れそうな物を片っ端からかき集め、父さんに頼んでで出来るだけ高値で売り払ってもらう。

 

 そう思い、家にある棚という棚を開け放ち、手当たり次第に取り出していく。

 まず物置から始まり、父さんの部屋、俺の部屋と続き、死んだじいちゃんの部屋に差し掛かる。

 そして部屋の扉を開けながらじいちゃんの事を思い出す。


 元々じいちゃんには不思議な昔話があった。

 父さんが小さい時、数日行方をくらませたかと思ったらある日ふらっと沢山の宝飾品を持って帰って来たという。

 一体今までどこに行ってたのか、宝飾品は何なのかを問い詰めても何も答えず、その後はあまり外出せずにいつも部屋で過ごしていた。

 持っていた宝飾品を殆ど父さんに譲り、それを元手に会社を立ち上げた父さんを見守りながら、つい先日天寿を全うしたばかりだ。

 

 そんなじいちゃんの部屋は、軽く整理はされているがほぼ死んだ時のままだった。

 そしてじいちゃんの部屋にはまだ何個か例の宝飾品が残っているはずだ。

 死んだばかりのじいちゃんの遺品を売るのは抵抗があるが、そんな事を言っていられる余裕はない。

 じいちゃんの部屋も他と同じように片っ端から漁っていくと、いかにもといった年季の入った木箱を見つけた。

 

 じいちゃんの秘密が詰まった宝箱。

 そう考えると少しドキドキする。

 俺は唾を飲み込み、木箱に手を掛ける。

 万が一にも壊さないようにゆっくりと蓋を開けると、中には3つの指輪と1枚の紙が入っていた。

 

 指輪は想定していたが、なんだこの紙?

 しかも何か書いてある。

「えーっとなになに、『黄金郷への道標』?」

 書き出しにそう書かれた紙には、魔法の詠唱の様な不思議な文章や、幾何学的な魔法陣など、ファンタジーから飛び出してきたと思うようなものが書かれていた。

 

 普通は無視する様な紙切れ、だけど俺は紙に書かれたある単語に心が惹かれていた。

 『()()()

そして頭に思い浮かぶじいちゃんの昔話。

 もしかして、ここに書いてある『黄金郷』にじいちゃんは行ったんじゃないか?

 紙に書かれた魔法陣などから考えて、『黄金郷』とはこことは違う魔法がある異世界とかなのか?

 普段ならあり得ない荒唐無稽な空想が、今はどんどん浮かんでくる。

 

 例の宝飾品は黄金郷で手に入れたんじゃないか?

 『黄金郷への道標』という事は、この紙に書いてある詠唱や魔法陣で『黄金郷』へ行けるのか?

 もしかしたら『黄金郷』へ行ったらまた宝飾品が手に入るんじゃないか?

 そうすれば借金もどうにかなるんじゃないか?


 全部自分に都合が良い希望的観測ばかり、だけど今は藁にも縋る思いだ。

 俺は紙に書かれた物を片っ端から準備していく。

 

 そして今。

「よし、とりあえずこんなもんか」

 目の前には紙から頑張って模写した魔法陣、右手には木箱に入っていた3つの指輪、全身にはタンスにあった如何にもそれっぽいローブを纏い、背中には手に入れた宝飾品を入れる用のリュックサックを背負っている。

 何処からどう見ても変人だし、俺も正直どうかしてると思う。

「まぁ、駄目で元々だ。挑戦しなきゃ始まらない」

 そう独りごちると、ぱんと両手で頬を叩く。

 そして最後に深呼吸をし、ゆっくりと紙の一番上に書かれていた詠唱を唱える。


「“黄金郷の道標”

“答えよ、我は異界の来訪者”

“未来を齎す予言者にして、平和を齎す調停者にして、知恵を齎す伝達者である”

“過去からの盟約に従い、彼の地への門を開け”」

「“目覚めよ。(コル・シィラ・)永遠なる黄金郷(エ・ゴールタニア)”」


 最後の言葉を発したとき、視界は白に染まり、俺の意識はそこでふっと途切れた。

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