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欲の始まり夢の終わり2

 参人の住む都市を作るというのが次の予知の内容だ。まずは、資本主義国家の樹立が成ったというのは喜ばしくあるが、後幾つあるのか不明というのが懸念点だ。というのも残り時間に限りがあるというのが一番の問題なのだ。残り時間ギリギリで時間のかかる予知が出ると詰む。なので、一つの予知は出来る限り早く解決する必要がある。


 次の予知はまず参人全てに出会う必要があるのだが、モリビトとヤマビトはなんとかなりそうだ。問題なのは謎の種族ウミビトだ。今ある情報だと出会う事から困難な気がする。


「ウミビトに会うならば一つ場所を知っている。今も居るかは分からぬが、何かの手掛かりにはなるだろう」


 シルバはウミビトの事には気乗りしないようだ。しかし、今はシルバの伝手くらいしかないので、そこから事を始めるしかない。


「じゃあ、南に行って船に乗るって事でいい?」


「そうだな。そうする他にないだろう」


「なんと! 法国には一度も戻らないのか?」


 ビシムは映像でも分かる程に落ち込んだ姿を見せた。

 まあ、今は欲国の建国関連で私自身が忙しいし、早く次のアクションに移りたくもあるので、法国へ戻る暇は無いのだ。それに前流れと勢いでビシムとエッチな事をしてしまった手前、なんとなく直接の会うのが気まずい気がしている。


「シルバの手掛かりでウミビトに会えなかったら一旦帰るから」


「ビシムも急がないといけない事は理解している。今は仕方が無いだろう。無忘球の事も調べはすすんいない。だが、事が進み参人の住まう町とやらが実現したならば、ビシムもそちらに行く事にする。それまでは自らを慰める事としよう」


 この欲求を一切隠さないのがビシム節だなとつくづく思う。


「ま、お互いやる事があるからね。それとこの後は本当にいいの?」


「構わない。ビシムも興味がある」


 ◇◇◆


 世界樹教会の祈りの箱には初めて入った。何の意味み感じられない箱だ。

 目当ての人物との会話が可能ならば転移され、駄目ならば外から合図があると聞いている。それなりに待っているが、まだどちらも無い。

 座って箱にもたれて目を閉じて半分寝て待つ。機を待つ事はよく戦場でやったので、体の休め方と時間の潰し方は慣れているのだ。


 そうして待つといきなり浮遊感に襲われた。地面がいきなり無くなったが落ちる感じもない不思議な感覚だ。

 浮遊感が終わると青白い部屋に居た。半球状の部屋の中央に大きな樹が生えていた。青い光はその樹が放っている。

 樹以外は何も無い、入り口も空気の穴も無い完全に閉じた部屋だった。


「にゃーの話相手は樹なのかにゃ?」


「樹では無いが、樹に像を写して話をさせてもらう。声のする方へ寄るがよい」


 樹には水晶の球、しかもかなり巨大な物が埋め込まれていた。声はそこからする。そう言えばこんな装置で話をする奴が最近も居た事を思いだした。

 何かしてくる気配は無いので、水晶球に寄ると浅黒い肌と金の髪の女の像が写っていた。


「あんたがユズカに力を渡している奴かにゃ?」


「力というのが何かによるが、ユズカの防具を作ったのはビシムだ」


 以外にもあっさりと名乗った。だが、聞かない名前だし、もしかしたらそれ程意味のある名では無いのかもしれない。


「あれが防具なのかにゃ。まあ、いいのにゃ、にゃーも名乗っておくにゃ。にゃーはシズキにゃ」


「ふむ、シズキか。それでビシムに聞きたい事はそれだけなのか?」


「まだあるのにゃ。何故あれ程過剰な力を渡しているにゃ? あれは使い方によっては国が簡単に滅ぶのにゃ。そんな力を何も知らぬ者に渡す意図が知りたいのにゃ」


「ビシムはユズカが身を守れるように防具を渡したのだ。ユズカが自身の意思で守れるようにそういう防具にした。今の防具の形はユズカの望んだ物だ。それにユズカは何も知らぬのでは無く、我々の知らぬを知る者だ。国を滅ぼす力を持っても、どう間違ったとしても国も人も何も滅ぼさないのがユズカだろう」


 言っている事に何の根拠も無いのに、説得力ねある説明だ。


「言っている事は無茶苦茶なのに、解らんでも無い話なのにゃ。あー、もう面倒な問答は止めにするにゃ。ビシムはユズカをどうするつもりにゃ?」


「ビシムはユズカを愛している。愛し愛されて二人の間に子を成す事を望んでいる。ただそれだけだ」


「女同士で子は出来ねーのにゃ」


「ビシムにとって性別は大した問題では無い。その時になればビシムが男をやればよいのだ」


「そんな相手ならなんで外に放って、ビシムは遠くから見ているだけなのにゃ。やはりおかしいのにゃ。大事な相手なら捕まえておくものにゃ」


「自由を奪い、囲っておく事のどこに愛があるというのか。シズキは愛の事が何も分かっていないようだな」


 なんだか腹が立って来た。このビシムという奴に負けたく無いという気持ちが強くなる。


「ただ与えるだけが愛では無いのにゃ! 欲して求める事も必要なのにゃ!」


「ビシムが何も求めていない訳が無いだろう。既に必要な事はユズカに伝えてある。それに関係の無い者にビシムの愛をとやかく言われたくは無い。それともシズキとユズカの間には何かあるのか?」


「にゃーはユズカに支配されたいのにゃ! にゃーも扱えないにゃー自身を使って欲しいのにゃ! ユズカが求めるならばにゃーの身も心も無茶苦茶になっても構わないのにゃ! それがにゃーの望みにゃ!」


 つい勢いでとんでもない事を言ってしまった。


「ふむ、先程は愛が分かっていないと言ったが、それは誤りのようだな。謝罪する。シズキもまたユズカに愛を求める者という事だな。だが、その愛を叶える事は困難だぞ。ユズカは他者にそこまでの事を求め無い。それでもその愛を追い求めるのか?」


 このビシムとかいう奴はかなりユズカの事を分かっている。


「にゃーの王としてユズカを頂く事はにゃーが勝手に決めたのにゃ。後はユズカがにゃーを使いたくなるようににゃーが努力するしかないのにゃ。でも努力するにもユズカの防具は邪魔なのにゃ。だから会って文句を言ってやろうと思ったのにゃ」


「そういう事か。ビシムはシズキの考えを理解したぞ。ならば、シズキがビシムを信じられるというならば一つ手を貸す事も出来るぞ」


 こんな事を言う奴はこれまで全員裏切ってきた。しかもこの場に居ないので真意を測りようがない。だが、こんな誘いは毎回乗って来た。


「その話、興味あるにゃ」


 ◆◇◇


 シズキがビシムと話をしたいと言い出したのは意外だった。しかも二人だけで話をしたいという。ビシムが受けたから成立したが、一体何の話をしているのだろうか。


「結構話長いね。何の話しているのかな?」


「ビシムの事だ。生命樹学の観点から終端種であるシズキの特性に興味があるのではないか?」


「ビシムがそうだとして、シズキが言い出した話だよ」


「シズキは国の情勢や戦や人の動きに詳しい。あれは意識して情報を集めていなくては出来ないこのだろう。恐らくは法国という存在に薄くはあたりをつけていて、その確認をしたいのでは無いか? ビシムが法国の存在を明かす事は無いが、我以外のモリビトと話す事で情報の確度を高めようとしているのであろう」


「なるほどね。二人とも気安い感じだけど、裏で難しい事考えてそうだもんね」

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