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戦争の終わらせ方13

 金貨3枚つまり、三百万円くらいで体を売らないかと持ち掛けられている。価格設定がおかしいのもそうだが、まず何故に私を買いたいのかが不明だ。

 前に買いたい的な事を言われたが冗談だと思っていたが、どうやら今回を見るに本気のようだ。


「いや、前も言ったように売らないよ。護衛をお願いする事があって、対価が足りないなら働いて返すから、体は売らない」


「金額を釣り上げるつもりなのかにゃ? なら、今は無いけどこの倍払うというならいいのにゃ?」


「いやいや、金額の問題ではないから。どれだけ積まれても売らないという事だよ」


 シズキは驚いた顔をした。


「何故にゃ? 何故売らないのにゃ? 簡単に大金が手に入るのにゃ?」


 そう言われても困ってしまうが、現状はお金が必要な訳ではないし、そもそも売るつもりがないのだから仕方がない。


「まあ、お金が欲しい事情もないし、売り物だと思ってないから売らないだけだよ」


 シズキは思案顔だ。


「さては、子が出来るのを気にしているのにゃ? にゃーのからは子種は出ないのにゃ。形だけにゃ。これまで子が出来た事はねーのにゃ」


 そう言いながら、シズキは3個目の膝と見間違う程の股間の盛り上がりに指を這わせる。


 仮にだが、私が体を売ったとして、シズキの股間から生えているモノが私の体の何処かに入るとすると、そんな許容量が私にある訳がない。

 無理だ。肉体的な破壊無くしてシズキを受け入れる事は出来ない。

 それに、こちらに来てビシムとエッチな事をして初めてでは無いにしても、物理的な挿入はまだなのだ。精神的には経験者でも物理的には初めてなので、それであのサイズを受け入れる事はあり得ないだろう。


「それなら、これまで通り私以外のところでして来ればよいのでは?」


「今日はユズカじゃないと駄目なのにゃ。優しくするから大丈夫にゃ。痛くないし直ぐに済むのにゃ」


 物凄く食い下がって来るな。しかし、こんなアプローチされた事ないから断り方も分からない。それに、シズキはかなり必死なようだ。今日出来ない可能性が出てきたせいで、若干涙目気味だ。

 これは断り続けていると無理矢理という事もあり得る。そうなると、私の防具にビシムが仕込んだ強制去勢システムが作動して、性欲管理被害者が増える事になる。バイスもその1号ではあるが、私達と離れてしまったので、今はどうしているのだろう。シルバがなんとかしているのだろうか。

 余計な事に気が逸れたが、とにかくこのままでは良くない結果になりそうだ。


「うーん、とりあえず一旦落ち着いた方がいいので、この術具で欲求を解消してみるのはどうかな」


 私は、例のビシム作、生殖増進用術具を机に置いた。このコースターサイズの板が使用者の欲求を正解に感知して性欲の増進と解消を行い、実生殖への自然な移行を促すのだ。

 練国で変態に使用したが、割と浄化に繋がったので、今のシズキにも効果があるのではと思う。


「そんな術具がある訳ねーのにゃ。やりたければ生身ですればいいのに、そんな事に金と技術が必要な術具を使う訳ねーのにゃ」


 ごもっともな意見だが、法国という年老いた国には必要なのも事実だろう。


「私が巨人を出したのは知っているでしょ? ならば未知の術具が出て来ても不思議ではないよね。この術具は本物、お金は要らないから、これを使ってからもう一度話をしましょう」


 シズキは私を恐れている節がある。力任せに襲って来ずに、お金で交渉して来たのも、そういった認識があるからだろう。

 ならば、ちょっと強めに譲歩案を出してみて、そこから打開するのがよいのではと感じる。


「にゃーに精神系の術は効かないのにゃ。その術具も効果無いのにゃ」


「これは精神に作用する訳じゃ無く、物理的にどうにかするから効果はあるよ」


 実際に使用した事は無いので、この術具が何をして来るのかは知らないが、ビシムの説明では肉体反応を引き出す事をすると言っていたので、恐らく効能は間違っていないと思う。


「これをやったらにゃーとするか考えてくれるのにゃ?」


「考えるくらいはします」


 この辺りが落としどころだろう。この術具でシズキの欲求がパワーアップしてしまったら、もう強制去勢コースしか無い。出来る事なら浄化されてほしい。


「本来はこんな罠には乗らないのにゃ。でもユズカからは殺意も嘘の匂いもしないのにゃ。にゃーはこの感覚を信じるのにゃ」


 本当に生き死にの世界にどっぷりの感覚なのだと思う。


「信じてくれるならいいけど。ほら、その黒い空間に入って」


 既に起動した例の術具は、外からは何も確認する事が出来ない黒い筒状の空間を展開していた。シズキは空間に触れて安全を確認した後に中へと入って行った。


 部屋は一気に静かになった。薪ストーブのような備え付けの金属の箱がパチパチと音をたてるのみだ。


 ―


 術具の黒い空間が消えてシズキが姿を現した。股間の盛り上がりは治っているようだ。


「凄いのにゃ。偽物のユズカが出て来たのにゃ」


「えっ!?この術具って映像付きなの?」


 驚きの余り心の声が出てしまった。


「黒いのに入っても景色は変わらなかったのにゃ。ユズカも居たのにゃ。偽物と直ぐに分かったは、全部にゃーの予想してた通りだったのにゃ」


 という事は、この術具はVR型の性具なのだ。しかも登場人物まであり、しかも使用者の欲求のままなのだろう。


「内容の説明はいいです。それで、少しは落ち着いた?」


「今日のところは満足なのにゃ。でも、本物のユズカの具合がどうなのか、もっと気になってきたのにゃ」


 なんという恐ろしい術具なのか。映像とは言え、勝手に人の姿を使用するのは納得いかない。法国に戻ったらビシムにクレームを入れておこう。


「私は絶対に売らないよ」


「それは分からないのにゃ。人は困窮する事にいつかなるのにゃ。その時ににゃーが高ーく買うのにゃ」


 なんか欲求が解消されたせいかシズキに余裕が出て来て、若干腹が立つ。


「今は、これ以上武国の情報が手に入らなそうだから、困ってはいるけどね」


 シズキはゆったりと歩き私の向かいに座った。


「情報が欲しいのにゃ? ならにゃーから買うにゃ?」


「必要ならお金は払うよ」


「にゃーも金には困ってないのにゃ。だからと言ってユズカが欲しいとも言わないのにゃ。ただ、これから出来る限りにゃーを側に置くのにゃ。遠くへ1人で行く事があっても、居場所を教えるのにゃ。それを約束すれば情報を教えるのにゃ」


 目的はよく分からないが、まあ、シズキが私達に興味を持っているのは分かる。これはそんなに悪い条件ではないだろう。


「まあ、それぐらいならいいよ。離れてもやり取り出来る方法は、ちょっとこちらで考えるよ」


 シズキ、にまーっと口元を緩めて笑った。


「それはいい決断なのにゃ。にゃーもオスロ達から情報を絞っておいて正解だったのにゃ。まあ、奴等もにゃーに注目されっぱなしは嫌だろうから、手切れのつもりでにゃーの好みそうな情報をよこしたのにゃ」


「本当に策士だね」


「そうでも無いのにゃ。本物は居るだけで周りを動かすのにゃ」


「そうなの? それで情報は?」


「武国の正規軍と戦って無事だった奴等が居るって前にも言ったにゃ? そいつらの居場所が分かったのにゃ」




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