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戦争の終わらせ方9

「シズキは何をもって吸血鬼を認識しているのだ?」


 シルバの問いにシズキはウラをちらっと見る。


「そうにゃー、吸血鬼は普通に殺しても死なないのにゃ。力も強いし動きも早いのにゃ。ま、でも弱点もあるのにゃ。あいつらは血を吸わないと戻れなくなるのにゃ」


 私がフィクションで知る吸血鬼の特性に近いところもあるが、吸血の概念が違った。弱点も大きく違う。


「なるほど。吸血鬼の認識として間違いは無い。血鬼と吸血鬼の違いを知るには十分だ。血鬼は吸血以外でも戻る事が出来る。これで理解出来るか?」


 シズキは目を丸くしてウラを見た。ウラは少し怯えているようだ。


「それは血鬼の方が厄介にゃ。にゃーは吸血鬼と戦った事はあるけど、血鬼とはまだ無いのにゃ」


「単純にそうとも言い切れないだろう。吸血鬼は一度そうなれば戻るのに必死だ。生存を賭けた闘争の方が厄介なのではないか?」


「それもそうにゃ」


 シズキはそう言うとウラへの視線を切った。


「ウラ君とシズキはどう言う知り合い?」


「北の方の戦場にゃと吸血鬼と戦う事もあるのにゃ。にゃーはどっちの味方とかにゃいから、たまたま一緒に戦った傭兵団にこいつがいたのにゃ」


 ウラは居心地が悪そうだ。


「もう用事は済んだんだろ。俺は帰るからな」


「久しぶりに会ったんにゃから、もっと話をするのにゃ。今日は急いで連れて来たから他の連中にはあんまり会わにゃかったが、団長は元気にしてんのかにゃ」


 シズキの問いにウラの表情が沈む。


「団長とはもう10日連絡が取れてないよ」


「面倒な側に雇われたのかにゃ」


「違う! 団長は負け戦には行かない。でも今回は武国の正規軍が出たって噂が流れてる」


 シズキは耳をピクッと動かしてこちらをチラッと見た。


「10日で誰も逃げ切れていないのなら、相手はかなりの手練れにゃ。増援が無いと骨も残さず消されるのにゃ」


「分かってるよ! でも、留守番のチェズさんも情報が無くて動けないんだ。あの谷からは誰も帰ってこない」


 この話では後から偵察に行った者も帰らないのだろう。


「ここでにゃー達が会ったのも何かの縁にゃ。にゃーにいい考えがあるのにゃ」


 ―


 シズキはウラに何かを伝えて帰らせた。


「いい考えってまさか、傭兵団を助けに行くっ事じゃないよね?」


「そうなのにゃ。よく分かったにゃ。そんでにゃーから提案なんにゃけど、2人も来ないかにゃ?」


「危険な場所に行く利は何なのだ?」


「団長のオスロはこの辺りの戦争に詳しいのにゃ。武国の事は1番分かっているにゃ。それに武国正規軍が近くで見れるのにゃ。これは貴重な情報にゃ」


「正規軍と戦いたいだけじゃないの?」


「まあ、それがにゃーの1番の目的にゃ。それに2人が来ないならにゃーだけで行くのにゃ」


 武国の情報は欲しいが危険すぎるのではないだろうか。戦地に行くなど素人がやっていい事ではない。


「シズキが行く理由は分かったけど、私達が行く理由は何? 兵士でもない者が戦場に行くのは邪魔なだけなんじゃない?」


 シズキは驚いたような顔をしている。


「戦える者は戦場で役に立たない事は無いのにゃ。それににゃーだけなら傭兵団を連れ帰るのは無理にゃ。正規軍見て、にゃーに気付いた奴らを味見して終わりにゃ。オスロがまだ生きている保証はにゃいけど、助けるなら2人の力は必要にゃ」


 そう言われると強く拒絶は出来ない。シズキも私の甘さにつけ込んでそう言っているのであろう。


「時に余裕がある訳では無いのであろう? ならば我々も共に行くとしよう。危険はあるが、我と共にあれば問題ない」


 シルバは特に表情も変えずにそう言い放った。


「じーさん、やる気にゃ。ユズカもそれでいいのかにゃ?」


「私達が助けになるなら行くよ」


 流れで行くと言ってしまったが、内心はかなりびびっている。


「先を読むという武国正規軍がどの程度か見てやろう」


 あ、人助けというよりシルバはそっちが気になっていたのか。


「やる気なのはいい事にゃ。ついでに相談にゃけど、何か3人を早く移動させる手段は無いかにゃ?」


 ―


 行くと決まったら即らしい。早ければ早い程オスロさんという人の生還率は上がるそうだ。

 シズキからウラ経由で傭兵団の残存部隊は移動を開始しているそうだ。戦場のぎりぎりで待機して、逃れる事の出来た仲間も回収する事が目的だそうだ。


「本当にやるの?」


「仕方あるまい」


 早い移動方法、それは私の追加装甲の飛行能力で戦場に乗り込むという事だ。シルバの転移が使えればよいのだが、一度行った事のある場所に意識して印を残さないと駄目なので、今回のような名もなき戦場には使えない。


「何が始まるのにゃ?」


 私達3人は町の外れの岩場に居る。流石に大勢のいる前で追加装甲を出す訳にはいかないので、今回の措置となったが、事情を知らないシズキには謎行動だろう。

 アダマスから追加装甲の転移を要請し、いつものように謎空間から白い巨人が現れる。

 あまりの異変にシズキは素早く後ろに飛び警戒している。


「心配無い。我々の味方だ。だが、攻撃はするな。敵とみなせばただでは済まんぞ」


 私の許可なくそんな事は無いと思うが、この追加装甲はアダマスのボディでもあるので、防衛活動としてシズキを制圧する可能性はある。

 とりあえずややこしいので、いつも通り追加装甲に乗り込む。この股にある開口部から狭い管を通って中に入る搭乗方法が私の要望通りにならないのも謎だ。


「何にゃ! ユズカが食われたのにゃ!」


「食べられてません。中に乗り込んだだけです。さあ、行きましょう。あっちの方向で合ってますか?」


「にゃ? 確かにユズカの声がそのでかいのからするにゃ。君ら何者にゃ?」


「それについては深く語る事は出来ん。さあ、時間が無いのであろう? 移動はユズカに任せるのだ」


 シルバは背中の収納スペースに乗り込んだ。シズキも警戒しながらも乗り込む。


「ここに入って本当に大丈夫にゃ? 食われないにゃ?」


「食べません。行き先は太陽の方向でいいですね?」


「方向は合っているにゃ。この辺りは地面が大きく裂けて谷になっている場所が沢山あるにゃ。今回の戦場もそんな場所にゃ。恐らく谷底は森になっているから、行ってからオスロを探すしかないのにゃ」


 追加装甲の能力に広域スキャンがある。聖王国の雪山でも、バラバラに転移させられた人は直ぐに発見する事が出来た。傭兵団の見た目の特徴も聞いているので、敵と間違える事も無いだろう。


「では飛びます。落ちると危ないので背中の殻は閉じますね。奥に入って下さい」


 シズキがマジ?みたいな顔をしているので、ゆっくりとハッチを閉じる動きをした。シズキも観念したのか頭を引っ込めたので、そのまま飛行モードに移行する。

 巨体がフワリと浮かぶ感覚は妙だが、物凄く姿勢が安定していながら全く揺れないので、飛べるという感覚になってくる。


 ある程度高度を上げて地上に影響がないようにしてから高速移動を開始した。

 景色が流れていく感覚は毎回思うが爽快だ。


 シズキがハッチの中で不安にならないように、透過窓を生成したのだが逆効果だったようだ。


「にゃああああぁあぁあぁあああああ!!!」


 私はシズキの叫び声と共に、飛行機雲を引きながら戦場へと向かった。


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