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戦争の終わらせ方3

「どうかにゃ。にゃーを護衛に雇ってみないかにゃ?」


 かなり危険な考えの人が以外な提案をしてきた。机の上にあった巨大な魚はいつの間にか消失している。このそんなに大きくない体の何処に吸収されたのだろうか。


「こちらを殺しに来た人を護衛に雇えって事ですか?」


「まあ、それはにゃーの勘違いもあるんにゃけど、にゃーは君たちと敵対したくないのにゃ。それならば君たちが何処に加担してもにゃーの雇い主である限りにゃーの敵にはならないにゃ」


 また、謎の理論を展開しているが、私としてもこの人と敵対したくは無い。


「私達はただの旅人ですよ。何処かに加担するような事は無いです」


「それだけ強くてそれは通らないにゃ。しかも練国から来たにゃ? にゃーの知らない傭兵なんて怪しいのにゃ。武国で何かあるのにゃ?」


 勘違いしているようだが指摘は鋭い。喋り方で油断してしまいがちだが、かなり洞察力はある。注意した方がいいようだ。


「我々は傭兵では無い。優れた術者は戦闘もそれなりにやる。そんな事よりこの国には詳しいのか?」


 シルバは探りを入れるようだ。


「武国の深いところはよくわからんにゃ。ただ、この辺りの事情は詳しいにゃ。にゃーを雇えば色々と教えてやるにゃ」


「ふむ、いいだろう。いくらだ?」


「前金はいらんのにゃ。にゃーは強さを褒めてもらうの好きだから、仕事したら貰うのにゃ」


 シルバが即決した事に驚いた。こんな怪しい人を雇うのはリスクだろうに。


(この者との敵対は避けたい。不慣れな地で奇襲されるよりは目の届く場所に置いた方がいいだろう)


 シルバから念話が来る。先程、この人が襲った来た事を思い出した。アダマスと防具の効果で認識を加速しても、その中で普通に動いていた。そんな存在は今まで居なかったのだ。

 この人は恐ろしく速い。もしかしたらシルバ並に音速の動作をするかもしれない。

 有効的な関係が構築出来るなら、それがありかもとは思うが、やはりちょっと怖い。


 私は一応、YESのハンドサインを出しておいた。


「では契約成立だ。情報を話してもらおう」


「それはいいんにゃけど、君らはこの国に入っていくにゃ? それなら船を先に決めた方がいいにゃ」


 ――


 この人の話では、船は席が直ぐに埋まってしまうので、早く確保した方がいいそうだ。しかも、小型船は危険なので、出来るだけ大型船の方がいいそうだ。この辺りの顔馴染みという感じでも無いが、ガイドは的確で船の予約はあっさりと出来た。


 目当ての船の出航まで2日あるので、船待ち用の宿の部屋を取った。本当に寝るだけの部屋だが、周辺には市があり、お金さえあれば生活に困る事は無い。

 ひと段落したので、この人にこの辺りの情報を聞く事にした。

 昼間でも暗い宿というか連続した小屋の一つに3人で集まっていた。木戸につっかえ棒をして部屋に明かりを入れても薄暗い。


「そう言えば名を聞いていなかったな」


 目の前の獣人は赤い毛に覆われた猫のような耳をピクっと動かした。


「シズキにゃ」


「シルバだ」「ユズカです」


 互いの名乗りはあまりにもあっさりと完了した。


「では、にゃーの知っている事を話すにゃ。この辺りの事情からでいいにゃ?」


「ふむ」


「この辺りはまだ武国になってから何年も経ってないにゃ。まだまだ暴れ頃にゃ」


「治世が安定していないという事か?」


「そうだけど、それだけじゃないにゃ。武国は新たに国を取ると、その国の武力だけを解体してしまうにゃ。武国の庇護に入ったから武力はいらんという理屈にゃんだが、元の武人は職を失うにゃ」


「そんな人達を放置したら、反乱がおきるんじゃないんですか?」


「武国はそれが目的にゃ。国を荒らす勢力を炙り出して潰すにゃ。武国は取った国が簡単に一つにならない事を知ってるにゃ。だから利用するにゃ。発起する者は、どんな志を持っていても必ず民の暮らしを荒らすにゃ。それを何度も叩いて潰して、武国の武力の安定を見せつけて、国を馴染ませるのにゃ」


 武国はかなり本格的に侵略国家をやっているようだ。


「暴れ頃とはどういう意味だ? 亡国の残存が反乱するだけのようには聞こえんぞ」


「この頃の武国はにゃーのような傭兵には稼ぎ時にゃ。反乱軍は戦力が足りないから傭兵を求めるにゃ。そこに国を荒らして得た資金が投入されるのにゃ」


「え、でも無敵の武国軍と戦う傭兵なんているんですか? お金が手に入っても命が無ければ意味がないのでは?」


「武国の正規軍は強いにゃ。ただ、取ったばかりの国に配備されるのは、投降兵や訓練兵士にゃ。武国の正規兵になるには必ず一定期間の兵役が必要にゃ。結局、亡国の軍が2つに別れて潰しあっているようなものにゃ。負けられない戦い以外には正規軍は来ないから、傭兵は上手い事やって稼ぐのにゃ」


 なんと恐ろしくも悲しい構造なのだろうか。しかし、私達が求めている資本主義国家樹立には一つアイデアを得た。

 明確な軍を持たない国であれば、武国は逆に手出しが難しいのでは無いだろうか。武国以外からの防衛をどうにかするのは別問題として、軍事の主体をいっそ全て傭兵にしてしまうのはありかもしれない。


「武国のやり方とこの辺りの状況は分かった。後は、そうだなシズキは傭兵として戦闘に参加しているのであれば、武国正規軍が何故そこまで強いのか分かっているのか?」


「うーん、そうだにゃ。兵士の質も高いのもそうにゃんだが、武国軍は作戦を失敗しないのにゃ。必要な攻撃を必要な時、必ず成功させるのにゃ。多分、物凄く先の読める士官がいるのにゃ」


 物凄い軍師が居るのだろうか。そうなると完全にフィクションの戦国絵巻物みたいになってくるな。


「シズキさんは直接正規軍と戦う事は無かったんですか?」


「にゃーの事はシズキでいいにゃ」


「じゃ、シズキは強いけど策で負けるなんて事は無かった?」


「にゃーぜか知らにゃいが、にゃーのところには正規軍が現れないのにゃ」


 これは完全に傭兵側に内通者がいるのではないだろうか。武国軍は完全に情報戦を制しているのだろう。


「それは間者が仕込まれているじゃないですかね」


「傭兵は命掛けて稼いでるから、仲間は売らにゃいのにゃ。噂では未来が視える術者が居るのではと言われているにゃ」


 未来を視る者、それは直ぐ側にいるシルバがそうだ。しかし、シルバが文明界の戦争に加担する事は出来ない。そうなるとシルバ以外の法国人が加担している可能性はある。

 世界を闇で覆う者の一端は法国にもある。私達の予知は覗かれるという未来のビシムからの警告が根拠だ。闇が覆う未来を隠し、阻止に動く私達を監視しているらしい。

 正体はまるで分からないが、文明界に大きく干渉しているのが法国であれば、もしかしたら黒幕に繋がるかもしれない。


「その噂は何処で聞いたの?」


「槍使いばかり居る傭兵団があって、そこで聞いたにゃ。そいつらは武国の正規軍とやり合ったらしいのにゃ。羨ましいにゃー」



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