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世界の終わりより1

 私が今いる法国という国は、私が知るどの国よりも進歩しているように感じる。

 私はこの国で二つの建造物の範囲から出た事は無いが、それでもこの国の凄さが分かる。


 国はモリビトという人々によって管理運営されているのだが、生物的に見てもヒトより優秀である事は明らかだ。

 モリビトは術理なる能力を用いて物理現象を自由に改変出来るのだ。これはヒトそして私にさえも出来るという事が分かったが、モリビトの術理は理解を超えている。


 モリビトは術理によって未来すら視るのだと言う。私も未来を見たが正直それが本当に未来なのかは半信半疑だ。

 しかし、モリビトは未来を視る事をどう運用するかまで構築しているのだ。

 視た未来は容易に変えられるのだと言う。未来を参考に今を変えるのだそうだ。だが、未来を視てそれを受け入れられる人ばかりでは無いそうだ。未来を視る事は可能性を奪う場合がある。そうした弊害まで把握して運用しているリアルに、私から未来視の不確実性を差し挟む余地は無いと感じた。


 私の視た未来は闇。法国は4年後に正体不明の闇に覆われるのだそうだ。

 私の4年後は結局分からないままだ。何故か、それは未来をこれ以上視てはいけないという警告がビシムよりあったからだ。

 闇を望む者が少なからず法国内にいる。私はどうしようも無いと思ったが、私の知り合いのモリビトであるシルバとビシムは抗うと決めた。私は二人に協力する事になった。


 私も未来がよく分からない闇になってしまうのは嫌だった。何より、私はこの世界と元の世界が行き来出来るようになりたいと思っていた。だから闇になるのは困る、そんな軽い気持ちで協力するのだ。


 そうして今私は自室にビシムと二人で居る。どういう訳か全裸で立たされてビシムは私の鳩尾辺りに顔を貼り付けて真剣に何かの作業をしている。

 何故こうなったのか、それは私が法国外に出る事に起因している。


 法国外には危険があるのだそうだ。ビシムは私の身を案じて防衛方法を検討してくれた。その結果が防具を作るという事になったのだ。


 私の胸の中央には赤い握り拳大の宝石のような物が張り付いいる。元はアダマスという便利AI搭載の音声ガイド端末だったのだが、防具の核として魔改造中だ。

 アダマスから細い管のような物が大量に伸びており私の肌の上に広がっている。管と管の隙間は皮膜のような物が埋めており、メロンのかわいいみたいな見た目の全身タイツが出来あがろうとしつつある。

 この防具はこんなに肌にぴったりくっついているのに全く何も触れている感覚が無いのが逆に気持ち悪い。


 ビシムは真剣に防具の調整をしているようだ。ビシムの張り付いている位置の肌に防具が広がるので、ビシムは私の体の周りをクルクル回る。


「ユズ、体内にも展開するので少し触る感じがするが、我慢してくれ」


 背後で下の方から声がすると同時に、これまで接触感の無かった防具が股の辺りに触れる感じがした。


「ちょ、ちょっと待って!」


「なんだ?」


「その、それは絶対にやらないと駄目?」


「外部では病や毒に寄生虫など体内より生命を害する要素が多い。体内も保護しておく必要がある」


「それはモリビトもやってるの?」


「まあ、モリビトはそこまではしないが、ユズが外部の脅威にどれだけ抵抗力があるのか分からないからな。やっておくべきだろう」


「じゃ、じゃあ別の方法で対処したいんだけど、駄目かな」


「ふむ、まあ水を摂取する際にこの防具経由にすれば同等の効果を得られるが面倒だぞ」


「いやいや、全然面倒じゃない。その方法の方がいいよ」


「そうか。ならばまあ体内の防備はその方法にするとしよう」


 ビシムの作業が下腹部から脚へと移行する。本当に全身を覆うつもりのようだが、この装備でトイレするにはどうしたらいいのだろうか。そんな事を考えながらただされるがままにしている。

 というのも、それには訳があるのだ。


 闇となる未来を変える為に事を起こしから一週間ほどで、

 私とビシムとシルバの距離はかなり近くなった。


 法国外でね活動は私が主体になるという事もあって、どう動くのか方針を決める必要があった。

 外の国、特にこれから向かう聖王国についてシルバから情報をもらったが、どうやら私が知るに近いし人の営みがある場所のようだ。

 権力構造があり、農耕、畜産、商業に工業と人が汗を流して国が運営されているのだ。

 この御伽の国の法国とは違う。前聞いたような差別や区別もある。

 だが、シルバとビシムの聖王国に関する認識はズレているのだ。恐らくは感覚が違うのだ。

 シルバでぎりぎり通用するくらいで、ビシムは全くやって行けそうに無いという感じだった。

 当然、私も現地の事は知らないが、私の方が力を発揮出来るのではと思う事があると感じた。


 それ故に、私はシルバとビシムと話を沢山した。自分達の認識と感覚を話合って私はそれぞれに互いの解像度がぐんと上がったのだ。


「ビシム終わった?」


「ふむこれでいいだろう。これならばシルバが攻めてきても守りきれるだろう」


 私の足先に這いつくばって言うセリフでは無いと思うが、ビシムの納得のいく調整にはなったようだ。


「それで、これは上から服を着ていいんだよね?」


 胸に赤い宝石のついた緑の全身タイツは中々に恥ずかしい。


「防具は状況に応じて形状が変化する。ユズが元々着ていた服や聖王国製の衣類は破損する可能性がある。着るならば前にビシムの譲った物を着るといい。防具と接続すれば形状はある程度自由になる」


 あの超ミニのワンピか。まあ、全身タイツで外歩くよりはましだろう。形も変更可能みたいだしありか。


「わかった。あれ着るよ」


 ビシムは嬉しそうだ。


「む、シルバが呼んでいるな」


「防具の動作確認をするんでしょ」


 シルバが法国で最強クラスに強いという事も分かった。単純に戦闘能力を比べる競技があるらしく、シルバはその競技のチャンピオンなのだそうだ。

 競技と聞いてスポーツなのかと思ったら、どうやら致命行為のみを禁止せた超空間バトルらしい。


 ビシムは防具の性能テストに法国最強を使うつもりのようだ。私も正直戦闘行為などした事がないので不安でしかないが、シルバは結婚信頼出来ると思っている。


 シルバは考え方が柔軟なのだ。凝り固まって考えではモリビトは長く生きられないそうだ。若くして自死するモリビトが居るのもそういう事らしい。

 見た目が老人のシルバは、見た目通り長生きしている。それは自身を変えてこれたからなのだそうだ。

 私の話を聞いて新たな発想をするのは大体がシルバだった。理性的で直感も鋭く変化を嫌わないシルバは、正直に凄いと思った。


「ビシムは最高の設計をした。シルバの攻めでも守りに徹すれば負けはしない」


 私達は慎重に準備してはいるが、実は時間に余裕がある訳では無いのだ。4年というタイムリミットもそうだが、まだ何の手がかりも無い状況だ。


 そして未来のビシムによる間接的な未来視からは抽象的な事しか分からない。


 私達はとりあえず聖王国で冒険者業を開業しなくてはならないらしい。それが何に繋がるのか全く分からないが、やるしかないのだ。

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