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魔王様はお終い3

 竜宮都市にはバイスの悲鳴が響き渡っていた。ウミビトは確かに大きくて威圧感ある感じだが、そんなに恐れなくてもいいのにと思う。


「こいつ!何処から現れやがった!」


「島を創る為に海に居ったが、驚かせたか?」


 そう言われると、垂直に切り立った水面に幾つか島のような物が浮かんでいた。竜宮都市では重力の方向が特徴的なので、この底にある位置から見ると妙な感じだが、島に近寄ると多分普通なのだろう。


「こいつ匂いがしない!俺様の対策をしてやがったのか!」


 匂い? そう言えばタイタスから特徴的な匂いはしない。海の匂いが強いからそんなものかと思っていたが、バイスからしたら異常自体なのだろう。


「ウミビトは獲物を得る為に、日常的に自身の存在が察知されないように海に自身の情報が流れぬようにしている。恐らくはそのせいだろう」


「バイス。私もウミビトから匂いがしないのは知らなかったし、別に何かしようとしている訳じゃないから安心して」


「お前らを信じろってのか?冗談だろ」


「黒衣の者よ。タイタスはこの場の誰にも危害を加える事は無い。それにタイタスはユズカに負けた身だ。故にここを再び町にする為に働いておる。町は暮らし生きる場だ。そこに死を撒き散らす道理は無いであろう?」


 タイタスの静かな声が響く。


「ほう。これがウミビトか。儂も初めて見るが、聞いた通りの有様よの」


「これはヤマビトか。まさか穴より出てくる者が居るとはな。いや、珍しい物を見た。この町が多種の集まる場所となるのも存外悪く無いのやもしれんな」


 ウミビトとヤマビトの会話がなされている。とりあえず会ったその場で即敵対という事は無さそうだ。


「今日来た二人はこの町に冒険者組合という組織の支部を作り為に来てもらいました。問題無いですか?」


「問題も何も、この町はユズカの好きにするがよい。どうせ放っておいても誰も住まぬのだ。誰かが住んだ方が町も喜ぶ」


 タイタスは町作りに協力的だ。私も体を張ったかいがあったというものだ。


「という事だから、冒険者組合は好きに作っていいよ」


「ああ、一つ注意としては、この管理島は空間の制御を司っておる。故に何か建てたり住んだりするのはこの島以外にしてくれ。簡単には操作出来なくなってはいるが、何かの拍子に町の制御が崩れれば、ここは海に沈んでしまう。ウミビトにとっては大した問題では無いが、人は生き死に関わるであろう」


 なるほど、そうなのであれば、この島は触らない方がいいだろう。


「じゃあ、バイスはここ以外で良さそうな島を見つけて、そこに冒険者組合を作って」


「それはいいが、どうやって他の島まで渡るんだよ」


「それについてはウミビトの船を使うがよい。人の言葉は理解するので、指示すれば自由に動くであろう」


 タイタスの指差す方向には、例の駅を繋ぐ魚みたいな船が浮かんでいた。しかし、言葉を理解する船とはどういうテクノロジーを使っているのか。まあ、シルバもアダマスという人工知能をあっさり私に渡したし、参人感覚では基礎技術なのかもしれない。


 ―


 バイス曰く、冒険者組合を作るというのは、実際の場所に組合を認識出来る何かを置くだけで成立するそうだ。そうする事でバイスの認識に新しい地の情報が入り、それが精神網にも反映されるそうだ。

 なので、実際に人を置いて営業する必要は無いのだが、バイスは強欲なので、この町にある島で一番良い物を探して、そこを組合とするそうだ。


「バイスを待つのか?」


「私達が帰ってタイタスとドリスしか居ない状況になったら、バイス泣いちゃうでしょ」


 シルバの声を聞くのが久しぶりに感じる。それ程時間が経っていないのに、そう感じるのは何故だろうか。


「次は魔国に向かうのか?」


「そう。ヤマビトの住人を探さないとだからね」


「魔国は快楽に堕ちた場所だ。あまり気分の良い場所ではないぞ。それに、もしかしたら我々の敵、と呼んで良い存在が居るかもしれない」


「だから、味方は多い状態で行ったほうがいいでしょ?」


「別に我だけが行くと言いたい訳では無い。だが、敵の事を考えていた。何故、秘密裏に世界を闇にしてしまうのか。そして我々が阻止する為にしている事は、何故に人な縁を繋ぐ物ばかりなのか」


 そう言われれば確かに、予知の内容から傾向は考えていなかった。

 人との縁を繋がなくては、原因に到達出来ないという事は、敵はかなり巧妙に隠れているという事なのだろうか。

 まだ、欲王のバックに居る存在が怪しいかもという推論しか無い。


「敵はかなり隠れるのが上手だけど、逆に見つかれば弱いのかも。発見さえすれば簡単に阻止出来る。それが答えなのかもしれないね」


「それは考えた。だが、我々は偶然ではあるが簡単に闇の存在を知れた。それが解せないのだ。実は巧妙に隠してあったが正解で、今となっては隠す必要が無くなったのでは、という事だ」


 全ては既に完了しており、覆らない事実として存在しているのだとしても、それが起きるまでは、どうなるか分からないというのが私の考えだ。


「実際に起きるまでどうなるか分からないよ。敵が既に油断しているなら、こちらとしてはいい知らせだよ。未来のビシムが語る内容も変わって来ている。未来は絶対に変えられる、これもまた事実だよ」


「そうか。確かにそうだな。我はユズカがウミビトを打倒するなど、微塵も考え無かった。可能性を考える者にこそ、望む未来が来るのだろうな」


 確信の無い推論ばかりの話だったが、それでもいい話が出来た気がする。


「闇の話が片付いたら、次はこの世界とあっちの世界を繋ぐ話だからね」


「それはまた無謀な話だな。だが、その時になれば協力しよう」


 ――


 バイスの島選びの完了し、テントのような冒険者組合竜宮都市支部の設営がされた。


「タイタスさん。次はヤマビトの住人を連れて来ますので、よろしくお願いします」


 タイタスを尻尾のように長い尾鰭を左右にゆっくり振っている。


「ふむ。ヤマビトについては理解した。ところで、この地に参人以外の人を呼ぶ事はしないのか? 」


「今のところ、特に考えていませんが。冒険者組合を許可しているので、住みたいという人がいれば連れて来てもらって問題無いですよ」


「そうか、では弓の島より、才のある者で希望者を聞くとしよう。タイタスは人の可能性に興味が出て来た」


「分かりました。では島の人はお任せします」


 最初は形だけの参人が住む町でもいいかと思ったが、今はより町っぽくなりそうな予感がする。


「俺様の冒険者組合からも人を出す。転移をばらす訳にはいかないのは俺様も理解してるら、何処かに海路を作りやがれ」


 確かに、今、この町は移動手段が限られている。海路が確保されれば、他の場所との交流も発生するかもしれない。これが確立されれば、町は自然に大きくなるだろう。


「海路の件はこっちで考えるよ。悪い話ではないからね」


 何か自分が始めた物が人に認知され大きくなるという事には、何とも言えない嬉しさがあるのだと、少し実感してしまった。

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