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魔王様はお終い2

 魔国に行かなくてはならないようだ。ヤマビトの国からヤマビトの移民を募るのだから、当然な気もする。

 雲外鏡の予知によると、世界を覆う闇の発生源は魔国からの可能性が高い。という事は、闇の発生に関わっている存在に近付く事になる。

 私達の目的が闇の発生の阻止だと気付かれた場合、命を狙われる可能性はある。

 危険性を考えると、事は慎重に運ぶ必要がある。だが、私達がこれまでやって来た事を繋げても、闇の阻止が目的と気付く者はいないだろう。殆どが魔国に関係無い国家への文化的干渉しかしていないのだ。そう考えると、今はまだ大胆に動ける時なのではとも思える。


 魔国に行く行かないは、シルバが戻るのを待ってから判断するつもりだ。というのも、欲王に練国で接触した際には、シルバが欲王から得体の知れない後ろ盾の存在を示唆したのだ。

 シルバ、というかモリビトは、この文明界という人の国においては、裏の管理者的な立ち位置なのだ。世界樹教も完全にモリビトの世界観測所として機能している。

 そんなモリビトも知らない、文明界の裏組織があるのであれば、それは他参人によるものか、または参人並の存在が隠れている事になる。それか、モリビト内にある秘密組織の可能性もある。

 得体の知れない存在の影がある事は分かっているのだから、それを感知出来るシルバと動く事は重要だ。得体が知れない存在も、正体が分かってしまえば対処のしようがある。

 こちらの目的は悟られる事無く、謎の存在の正体を暴く、これが重要なのだ。


「おい。早く俺様を南の都市に連れて行きやがれ」


 バイスとドリスとの交渉を先行した為、バイスからは交換条件のこちら側の対応を求められていた。

 冒険者組合の拡大を希望しているバイスは、竜宮都市への組合設立を求めていた。これ自体は私にとっても悪い話ではない。冒険者組合自体が存続する事は、例の予知の要件でもある。

 冒険者組合の設立は物理的に場所と、精神網の管理者であるバイスの認知が重要となるらしい。一度場所を設定して認知すると、精神網の世界も拡大する。

 バイスはこの精神網拡大で情報を得て人を使い利益を手にする。ドリスはその活動自体に興味があるようで、二人の利害は一致しているのだ。


「あっちの準備がまだだから、まだ行けないよ。後、行くのはいいけど、天人くらい大きいウミビトが居るけどいいの?」


「お前が手懐けたんなら大したもんじゃねーだろ。そんな脅しで俺様を追い返せると思うなよ」


 相変わらずマウンティングの好きなお人だ。しかし、ウミビトは事実としてシズキより強い存在なのだ。シズキを恐れているバイスがウミビトに会って大丈夫なのだろうか。


「シルバと連絡取っているけど、まだ2、3日はかかるらしいよ。私じゃどうしようも無いから、待ってもらうしかありません」


 バイスは私が逃げないように見張っているようで、私が間借りしている欲王別邸兼トゥーリン宅にずっと居るのだ。

 シズキがいきなり現れたらどうするのだろうか。まあ、シズキは今欲国の外にいるらしいので、その心配は今のところないが。

 シズキとも連絡を取っており、なんとなくどの辺りに居るなどは送られて来ている。なんでも、傭兵団と武国が戦闘した際の情報を探り直しているのだそうだ。あの件は武国軍の以後の足取りなど、色々と不明瞭なところがあったので、気になっているのだそうだ。


「えー、お話終わりましたか? ユズカさんにはご相談したい事が沢山あるのです。もう、こちらの要件を話してもいいですよね」


 私の頭上背後から声がする。というか、私はバイスと話ている間もずっとトゥーリンにぬいぐるみのように後ろから抱き抱えられているのだ。

 2m近くの身長があるトゥーリンからすると、私はお子様サイズなのかもしれないが、こうした格好になっているには理由がある。

 トゥーリンはとにかく私と研究品の話がしたいようで、フリータイムを見つけては話をしに来る。そこにバイスの交渉が挟まって、会話時間が削られるものだから、こうして私の身柄を確保しているらしい。

 私としてはバイスの闇金並の取り立てにはうんざりしていたので、ちょうどいい緩衝材としてこの状況を受け入れているのだ。


「俺様の話は終わってねぇ」


「はー、ユズカさんは時間が来るまで対応出来ないと仰りました。ならば待つ以外の事は出来ないでしょう。今日はお引き取り下さい」


 トゥーリンが強気なのは、この仮住まいは欲王からトゥーリンに下賜された物なのだ。当然、ボディーガードを兼ねた使用人も居る。そうなると、建物に押し入っているバイスとしては立場が弱いのだ。


「てめぇ!いい気になってんじゃねぇ!」


「今日は帰った方がいいんじゃない。掛かる時間を偽ってないのは分かるでしょ」


 バイスは嘘を人の分泌する物質から見抜く事が出来るほどの嗅覚を持っている。


「お前! 絶対に逃がさないからな!」


 バイスはそう言うと、立ち上がり座っていた椅子を蹴り倒して去って行った。


「はー、邪魔者は居なくなりましたので、研究室の方で先程の続きをしましょう」


 トゥーリンはそう言うと、私を抱き抱えたまま立ち上がり、研究室へと移動を開始した。最初は恥ずかしいので断って歩いていたが、この件が何度も続いている内に面倒になったので、今はされるがままだ。

 トゥーリンは研究熱心であり、私の異世界人としての知識と感覚を見抜いているのか、アイデアの収集という点において妥協が無い。基本的にトゥーリンとの問答は午前中から昼に行われる。個人的には夜の方が暇なので夜にやってくれればいいのだが、夜はトゥーリンが研究室に篭って出て来ないのだ。


 ――――


 バイスとトゥーリンとのやり取りを2日ほど繰り返した後、ついにシルバから白樹設置完了の連絡が来た。


 転移の為、いつも通り世界樹教会の地下に赴くシルバが待っていた。転移のチェックをする為に門を潜ってこちらに来たようだ。


「濃い潮の匂いがしやがるな」


 一緒について来たバイスがシルバを見てそう言った。


「場所が場所だけにな。今回の転移でバイスもあちらへ行くでよいのか?」


「儂も行くぞ」


 バイスの影からドリスが現れる。相変わらず何処から見ていていつ来るのか分からない人だ。


「ヤマビトはウミビト会って問題は無いのか?」


「問題無いの。奴等と儂らの思想と趣向は似ているところもあると聞くが、儂も会うのは初めてじゃ」


 簡単な確認の後、この場の全員で竜宮都市に転移した。転移と言っても、空間の穴を扉のように潜るだけなので、移動している感は無い。ただし、転移門を潜ると、一瞬にして別の空気に変わるので、びっくりする。バイスの言う濃い潮の匂いというのも分かるくらいなのが竜宮都市の空気だ。


「なんたここは? 海の底じゃねーか?」


「底では無い。ここは海の内よ」


 バイスの問いにいきなり答えたのは、ウミビトのタイタスだった。相変わらず通常サイズの15m身長はデカいと感じる。今もしゃがみ込んで、見下ろしているが、かなりの圧迫感がある。


「うわあああああああぁぁぁ!!!」


 バイスが驚きの声、いや悲鳴を上げていた。

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