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「いつも御贔屓にありがとうございます」
「こちらこそ、いつも最高の品、感謝しているわ」
「とんでもございません」
1日かけて頭の中を整理して、考えた事は”買い物”だった。
エマに命じて、商人を呼ぶ手配をしておいた。
「しかし、ロザリア様、収納ブレスレットとは、
また変わったものをお求めで」
商人が困惑するのは当然だ、収納ブレスレットは、
広い部屋に住めない人や、商人・冒険者達が持つ者、
公爵令嬢たる者が持つ物ではなかった。
ゲーム攻略の知識で知っていただけで、
ロザリアは存在すら知らなかった。
私は曖昧に笑って、商人の話を聞く。
普通、収納のブレスレットに入るのは50ぐらい。
しかし、商人が持ってきたものは、
S級冒険者でもなかなか手に入らない、
500以上入るブレスレットだった。
「お時間を頂ければ、ブレスレットに宝石を付けて、
ロザリア様に相応しいお品にできますが」
収納ブレスレットは、冒険者がメインで使うだけあって、
どこか朴訥としたデザインで、ほんの少し彫りがある程度、
今までのロザリアなら、絶対に身につけなかっただろう。
私は女性向けの細めで、さらに細工が一番少ないシンプルな物を選んだ。
「後は宝石、持ってきた分、全部頂くわ」
テーブルに並べられた宝石は、ダイヤ・ルビー・サファイアと
色とりどりで、台座も金やプラチナなどが使われ、
植物や鳥などデザインも凝っている。
「全部ですか?」
これには商人も流石に驚いているようだった。
今まで宝石を買うにしても年に2回程、一揃え買うぐらいだった、
それを20個以上ある物を一気に買おうと言うのだ。
商人には国内で最高の物を持ってきてと言ってある。
日本円にしたら、ひょっとすると一つでも数千万するのも
あるかもしれない。20個以上となると億超えるよね・・・
家に販売に来る商人は、値段を言う事はないので、
宝石など実際いくらするのかロザリアも知らない。
もっと言うと、街で買い物もした事がないので、
知っている物の値段は一つもなかった。
なので、これらの宝石が、実際の所いくらかは分からない、
前世でも、こんな高級な宝石を買った事なないので、
ほとんど値段は当てずっぽうだ。
あまりにも、高額だと思われる買い物に、
少し背徳感に襲われながらも、今後の生活の為と割り切る。
商人には、
「もうすぐ皇太子妃ですもの」
まったくなれるとは思っていないが、
笑顔ですらすらと嘘を付く。
商人は納得したように、
「では」
と契約書を手に、心から嬉しそうに去っていった。
商人が帰ってから、宝石類をリングに収納する。
「高いだろうな」
本音を言うとお金を持っていたい、
しかし、今までお金を持った事がなく、貯金もない、
換金できる可能性が高いと目を付けたのは宝石類だった。
まあ、領収証は月末に父親に請求がいくので、驚いてもらおう。
エマが部屋から出たタイミングを見計らい、
今日買った物以外の宝石も収納ブレスレットに入れていく、
「小物も役立つかな」
衣類は流行もあるし、オーダーメイドなので、
買い取りてが少ないと考えて最小限にする、
どちらにしても、追放されてからの生活では、
ドレスを着る機会などないだろう。
本当は平民の服も欲しい所だが、商人が持ってくるはずがないし、
街に買い物にも行けない(街に出た事がない)、
これは、追放されてから、なんとかするしかないか。
他は地図や鞭なども収納する。
全て収納し終わった事を確認して、
リングを手で伸ばして足の膝の少し上につける、
「おー流石、冒険者アイテムね」
このリングには、サイズの自動調整機能がついていて、
今では太ももにぴったりとくっついている。
ブレスレットにしていたのでは、両親からデザインから
外すよう言われるだろう。
しかし、ここなら目立たないし、着替えを手伝うのもエマだけ、
他の人間が知る事はない。
エマは私に無関心なのが、ここでは助かった。
「本当は食べ物も欲しいのだけど」
買った収納リングは最高機能の物で、状態を維持したまま保管できる、
食べ物も、熱い物は熱いまま、冷たい物は冷たいままだ、
しかし、食堂に出される食事を収納するのは無理があり、
諦めるしかなかった。
「準備はこれぐらいかしら」