6-1 プロポーズ
ガルガンティア山脈から王都に戻り、
また回復屋を再開しようと冒険者ギルドを訪れると、
予定より2日帰るのが遅くなっただけなのに、
無事で良かったと、皆に言われてしまった。
本当に心配かけていたのだなと思う。
リュカ様には、ガルガンティア山脈の領主から、
鳥魔法の手紙が届ていたようで、
いろいろびっくりされたが、帰りを喜んでくれた。
いつもの公園に行って、ベンチに座る、
座り次第、リュカ様が切り出した。
「王太子だと言う事を黙っていてごめん、
まさかこんな形で伝わるとは思ってもいなかったんだ」
「少しびっくりしましたが、気にしないでください」
まさか、もっと前から察してましたとは言えず、
笑顔で誤魔化す。
「そうか・・・」
それから少し上を見て、決意したように、私に告げる。
「君の事が好きだ、聖女になる資格もあるし、
王妃として何の問題もない。
全てから君を守る、私と結婚してくれないか」
数回市場などでかけただけ、正式に付き合ってもいない、
なのに、いきなりのプロポーズ。
日本人なら戸惑っただろうけど、
元々この世界では政略結婚の予定だったし、
彼が本気で私の事を好きでいてくれている事は、
最初から伝わっている。
そして、多分私も彼を好きになりかけている。
そして、いずれ本気で恋に落ちる。
「はい」
家との縁が切れたとは言え、ここまで問題ないと
言い切られれば、信じていいだろう。
回復魔法屋が修練になっていたのと、イシラトプスを倒した事で、
冒険者レベルBランクになった。
聖女の中でもBランクはいず、誰も文句を言う者もいない。
元より、リュカ様が私の事を好きな事を、
誰にも隠さなかったので、どうぞお幸せにと言う感じらしい。
胸がじんわり暖かくなる。
幸せだな・・・・
そして、こんな幸せをくれたリュカ様を誰より幸せにしたい・・・
新たな目標が生まれる。
しばらく、公園でリュカ様と話した後、
ティファさんにも挨拶しないとと思い立つ。
「ティファさんって誰?」
リュカ様が手を繋ぎながら聞いてくる。
「料理人です、帰った挨拶と、相談したい事があって・・・」
「そうか」
2人で公園の料理スペースに向かう。
「おやセレーネじゃないか、元気だったかね」
「はい!」
料理人皆が、元気でいる事を喜んでくれる。
「しばらく来れなくてすみません」
「いや、構わないよ。差し入れが無くて、
少し物足りなかったぐらいだよ」
回復魔法屋をしていると、お菓子の差し入れをよくもらう、
1人では食べきれないので、ここで配っているのを、
言っているのだろう。
その代わり、いろんな野菜をもらったり、
食べられる木の実を教えてもらったりしているので、
持ちつ持たれずだと思っている。
「素敵な彼氏もできたみたいじゃないか、泣かすんじゃないよ」
リュカ様にティファさんが包丁を向ける。
リュカ様は余裕で微笑んで、
「決して泣かせません」
と答えていて、胸がきゅんとなった。
「それはそうと、相談があるのですが」
「なんだい」
「はい、このスパイスですが、香草も入れられないかと・・・」
「香草は生だろう、腐っちまうよ」
「いえ、乾燥させてから入れるんです」
元々の日本の香草を乾燥させて入れるという知識、
そしてガルガンティア山脈に行く途中、
宿屋で指輪と交換したソースの知識、
ティファさんの料理人としての経験と知恵、
これがあれば、もっといいパイスができるのでは
ないかと思ったのだ。
ティファさんは少し迷いながら、
宿屋で得たメモと私を見比べる。
「やってみるかね」
「はい!」
ティファさんは風魔法で香草を乾燥させる、
そして、配分を考えスパイスに乾燥した香草を加えていく。
「できたよ」
「今あるのは・・・ウルフの肉ね」
食べなれた味だ、さっそく焼いて、新しくできたスパイスを
かけてみる。
「すごい!美味しい!!!」
あまりの感激に声を出して叫ぶと、
リュカ様とティファさんが、私も食べてみたいと言うので、
多い目に肉を焼いた。
「美味しい!」
「びっくりだよ、スパイスだけでこんなに変わるなんて」
ふふふふふと私は笑いが止まらない。
しばらくして、リュカ様が言った。
「このスパイス、調合の仕方を含め、私に任せてくれないか?」
「リュカ様に?」
そこにティファさんが口を挟む。
「いくら恋人だからって、手柄の横取りは駄目だろうよ」
「もちろんマージンは払う、そうだな売り上げの1割は
どうだどう?私はこのスパイスをもっと広めたいんだ」
「リュカ様を信じています、お任せします」
そう言うと、リュカ様はしっかりと頷いた。
「私もこのスパイス使っていいかね」
そう言うティファさんに、
「もちろんです、皆で美味しく食べて下さい」
そう言うと、
「欲がないねぇ」
と呆れられ、
「そこがいいんです」
とリュカ様が言っていた。
いや、”盗賊の財宝”で一生お金に困る事はないだろうし、
欲がないわけではないんだけどね。
ちなみに、持ち主が分からない物はそのまま貰って、
盗品で持ち主が分かる物は、ドワーフの店主に、
持ち主に返してもらっている。
持ち主が受け取る時、手数料をもらう仕組みだが、
思い出の品もあるかと思うので、お願いして良かったと思う。
その時、迷ったあげく正義のセー〇ームーンが取り返したと
伝えてしまい、その後国中にセー〇ームーンが思った以上に
広がり、後悔する事になるのである。




