4-3 (リュミエール視点)
しばらくして、セレーネが聞く、
「あの、そういえば、噂で聞いたのですが、
昔盗賊がいたとか・・・」
「そんな昔ではないよ、ほんの7年前ぐらい前かな」
セレーネが少し硬い表情をする、
盗賊が怖いのだろうか?
「もう、アジトは潰れているし心配ないよ」
「そのアジトはどこにあったのですか?」
真剣な顔で聞くセレーネに応える
「ガルガンティア山脈のふもとの村、そこの教会だよ」
そして、あっと言う。
「教会がアジトだった事は秘密ね」
口に人差し指を立てて、シーっとすると、
セレーネは頷いてくれた。
「それと困っている事があって・・・」
「困っている事?」
セレーネの為なら、何でもしたいと思いながら、
ついつい彼女を凝視する。
「これなんですが・・・」
セレーネは収納ブレスレットから、一冊の本を取り出す。
かなり高級そうだが、タイトルも書いてない。
「これ、『調合の書』だと思うのですが、
本物かどうか分からなくて・・・・」
『調合の書』?それが本物なら、国宝級の品になる。
「少し借りてもいい?」
セレーネが頷くのを見て、その本を自分の収納ブレスレットに
入れる。
「オープンステータス」
その言葉で、収納ブレスレットの上にパネルが現れ、
収納ブレスレットに入っている物の一覧が現れる。
そこで、先ほど収納した本の所を見る、
すると、その欄は『調合の書』と書かれていた。
「本物だ!」
思わず大きな声を上げてしまう。
隣にいたトムと、思わず顔を見合わせてしまう。
「どうやってこれを・・・」
「ドワーフのお店で買ったの、
本物だったのね良かった」
まだ焦った気持ちのまま語りかける。
「少しの間、借りていいだろうか?」
魔術のかかっている本は、魔術でしか複製できない、
だが、この『調合の書』が複製できれば、
ポーションがもっと気軽に手にはいり、
医療事情ががらりと変わるのは間違いない。
「はい、これでお礼になりますか?」
「十分すぎるぐらいだよ」
驚きすぎて、どきどきしている心臓を、
何とか抑える。
セレーネと一緒と言うだけでも、心臓は忙しいのに、
これでは寿命が縮みそうだ。
「先ほど、中身確認されてたのって・・・」
「ああ・・・オープンステータス?
収納ブレスレットなら、全部付いている機能だろう?」
収納ブレスレットの基本だ、
持っている人なら、誰でも知っていて当然と話しかける。
セレーネは収納ブレスレットを見つめて、
「オープンステータス」と言った。
ブッンと音がして、ステータス画面が現れる。
王族である自分が使っているのも、
普段使い用とはいえそこそこの性能だと思っていたが、
彼女のはそれ以上だった。
「な・・・なんだ!?この容量は!!!
しかも、品質保持付き?なんだこれは」
あまりもの高性能についつい言葉が荒くなる、
この国の一番いいの以上じゃないか?
帝国から来たと言っていたが、帝国としても、
1位2位を争う品じゃないか?
セレーネに、どれだけ凄いか説明する。
「あ・・あんまりその画面、
他の人には見せない方がいいかもしれないな・・・」
「はい」
セレーネはどうやら納得してくれたようだ。
それにしても、『調合の書』にしても、
収納ブレスレットにしても、あまりにも普通と違い過ぎる。
『調合の書』は運だけで手に入れられる物でもない・・・
やはり・・・私の女神か?
そんな内心を読んだように、トムがジトっと見て来る。
以心伝心もこうゆう時は不便だ。
どちらにしろ、彼女が単なる旅行者でない事は確実だ、
「この収納ブレスレットはどこで手にいれたの?」
「・・・女は秘密がある程、魅力的だと思われません?」
そのセレーネの表情にぞくりとする。
元々可愛いとは思っていたけれど、そんな悪女のような
表情は大人の女性を思わせ、ますます魅了される。
そして、その表情で思い当たる人物がいた。
帝国の皇太子の、前婚約者。
ロザリアと言う名前だったか、名前などいくらでも変えられる。
元、公爵令嬢と考えると、いろいろな事に辻褄があう。
むしろそれぐらいでないと、この異常性は納得できない。
確か、家と縁を切っていたようだが、
回復魔法の腕と言え、彼女自身に価値がある事は変わりない。
私の王妃はこの人しかいない。
恋心は確信へと代わり。
まずしたのは。
「また、来週会えるかな?」
次のデートを取り付ける事だった。




